第13話 ホテル

 ホテルや旅館はとても好きなのですが、いざ部屋に入って後悔する時もあります。

 部屋の時です。


 間取りは綺麗だけれど、どうにも暗いがある時があります。

 ホテルに何かがいる時は、あまり良くないものが多い気がします。

 悲しさや怨念のような、ネガティブな感情を持っている場合が多いです。


 そういう時の、素人な私の対処法は、早く寝る、です。

 夜中を満喫せず、素早く寝るのが一番です。

 旅の疲れもあって、寝ちゃえば朝ですからね。霊さんたちも手出しはできません。たぶん。

 金縛りになるかもしれませんが、金縛りで死ぬことは無いです。なんなら二度寝できますから、寝ぼけたせいかもと気のせいで済ませられます。


 それでも怖い時は、ベッドの周りにある鏡をおおってしまいます。

 備品のバスタオルやハンガーを駆使して、なるべく部屋を映さないようにします。

 霊に対してどれほど効果があるかは分かりませんが、怖さは減ります。


 それでも怖い目にあったことがあります。


 都心の有名ホテルに泊まった時のことです。

 泊まったのは、高層階の眺めの良い部屋でした。都心の様子がよく見える高さです。

 壁紙も、絨毯も、調度品も、ベッドもとても綺麗な部屋でしたが、なんだか嫌な空気が強い部屋です。

 ここで一晩泊まるのはなんか嫌だなあ、と思いましたが、そんな理由で部屋を変えることなんてできないと思っているので、そのままその部屋で過ごしました。


 怖かったので、寝る際はテレビをつけたままにしました。隣室の迷惑にならないくらいに音量を絞って、寝付きます。


 深夜。

 突然、男の人の怒号が外から聞こえました。

「誰のせいだと思ってんだ!」

 誰かとトラブルになっているかのような、怒り狂った大声です。

 こんな夜中に隣室か廊下で何かあっただろうか、と体を起こすと、怒声はピタリと止みました。

 先程までの騒ぎが嘘のように、静寂です。

 テレビの音かと思ったのですが、テレビはオリンピック招致の演説が流れているだけで、男の人の声すら聞こえません。

 なんだったのだろう。

 窓の外を見てみましたが、眠らない街ならではの綺麗な夜景が広がっているだけで、午前三時ごろの都心は、さすがに静かでした。


 そのあとは、寝るのは怖かったので、コンビニへ行ったり、電気をつけてテレビを見たり、乗り換えを調べたりして、朝まで過ごしました。

 チェックアウトまで特にトラブルもなく過ごせました。


 あの怒号は誰だったのか、知ろうとすると深みにはまりそうなので、寝ぼけたんだろうと深く考えず、今日まで至ります。


 終わり。

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