第4話 事故現場

 以前住んでいた家の近くで、死亡事故がありました。


 事故から1週間以上経った日、どうしてもその場所を通らなくてはいけなくなり、急いでいたので、事故の事を失念したまま通りかかりました。


 事故現場の電柱にそなえられた花や飲み物を、じっと見下ろす人がいました。

 その方は男性でラフな格好でしたが、服は全体的に白で、なにより半透明でした。


 ご本人だ。

 私は即座に思いました。

 きっとまだ受け入れられていらっしゃらないんだ、と。


 その場では、お供え物に手を合わせるだけになりましたが、翌日にお花を買って、事故現場に手向たむけました。

 生前は全く知らない見ず知らずの方に、お花を手向たむけるのはやり過ぎかなとも思いましたが、見てしまったので放っておけなかったのです。

 手を合わせると、男の人の声で「ありがとう」と聞こえました。


 その後、何度か現場を通りましたが、特に何かを感じたり見たことはありません。

 きっと安らかに成仏されたのだと思います。


 それから、事故現場に出くわした際は、手を合わせるようになりました。


 終わり

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