第41話 胡蝶蘭

結局、終戦してからフェルト帝国に、3週間ほど滞在していた。その間、王としての教育をレックスに教え込まれ、同盟の手続きに追われ、ずっと気が休まらなかった。

 

やっとの思いで帰るも、村に帰ってからもやることは山積みだった。問題の一つは住居。


来た時から思っていたが村人の家がどれもボロボロすぎる。なので村人に許可を取った上で家を破壊して、異空間で収納し綺麗な建築素材を生み出した。家を直接建てるもよかったが、建築の知識が乏しい俺の家では耐久性に問題があるらしく、実験がてら一件建ててみたが、外観はとても素晴らしいのだが、エレナのスキルを込めない攻撃の一回で崩れたのだ。


なので戦争の時に創った骸骨スケルトン動屍ゾンビなどを合計20体ほど連れてきた。召喚した奴らはいつの間にかいなくなっており、その存在もこの数週間で忘れてしまった。ちなみに、創造で造ったモンスターはここにいるのを除き全て異空間に収納という形で消滅させた。



「はいは〜い!そこにそれを・・・スケルトンB!それはそこだゾ〜」



現在は骸骨スケルトンに指示を出しながらネロが村人の家を建築し直している。


2週間ほどで村にあった建物は全てリニューアルされ、見栄えも良くなった。


ネジが一本外れているような性格のネロだが、意外にもその才能は豊かで、武器や防具の作成からこのように建築などができる。


そんな気になるネロさんの・・・


(ステータスは??)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ネロ・メーア Lv100 [水属性][土属性]

[人間種]

[錬金術師Lv10][戦士Lv3]


体力 648

魔力 9000

知力 650

攻撃 51

防御 200

魔法攻撃 51

魔法防御 200

素早さ 1100


スキル[錬金術Lv10][製作者Lv8]

[生成Lv10][探知Lv3]

[斬撃Lv5][微塵切りLv1]

[自動回復Lv10][逆境Lv8]

[操縦者Lv2][責任転嫁Lv10]

[聴覚強化Lv9][回復強化Lv10]

[水強化Lv6][土強化Lv8]

[巻物強化Lv10][素早さ強化Lv10]


魔法[土の巨人作成クリエイト・ゴーレムLv10][人形作成クリエイト・パペットLv10]

武器破壊ウェポンブレイクLv10][修復リペアLv10]

透明化インビジブルLv10][魔法盾マジカルシールドLv10]

魔法多重化スタークマジックLv10][魔法強化マジカルブーストLv10]


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そう。まさかのレベル100。魔法に関しては魔法レベルが全て最大。だがステータスはLv100にしては低く、守護神アテナ曰く人間種のステータス上限値が低いから。だそうだ。


本人に昔の経歴を聞いても答えてくれない。あまり無理矢理聞き出すのも気がひけるので、今はとりあえず頼れる仲間!とだけ考えておこう。


それは置いておいて・・・


ついでに中心にあるフェリクスの家を増築し、集会所として使えるようにし、フェリクスの家を別に建てた。


次に俺がやったのは、村の食糧問題の解決だ。フェルトからの支援があるとはいえ、それに依存しすぎると何かあった場合に簡単に村が崩壊してしまう。


これもまた俺たちが来る前は、宝玉により土壌の回復効果を得られ、解決できていた問題なのだとか。狩による食料確保も悪くはないのだが、毎日村民(41人)と俺たちの分を確保するのは難しい。家畜は維持費が.....ということで作物を作ろうかと思う。


畑に関しては俺の経験が生きる。触ればわかるが荒野の土は作物を育てることに適していないことは明白。だが創造に掛かればこんな問題は簡単に解決される。畑用に村の端っこに確保していた土地の土や砂利を、村人と協力してある程度の深さまで退かし、掘られた土などは異空間で収納。そして創造で骨なんかも混ぜて畑に適した土に変えるだけ。


畑を確保したら、後は村人の中から農業士を持つ者を中心に集めて、耕すところから収穫までをレクチャーした。


こんなことをする余裕があるのは、ハノーファの人々をかなり殺したことで、世界の終焉は三ヶ月ほど伸びていたため時間は少しできた。活動拠点の整備に時間を費やしてもあのバカ悪魔に文句は言われないだろう。



「アスタ。少しいいか?」



外での俺がやるべき仕事を一旦終え、自室で作業していていると、ノックとともにエレナの声が聞こえた。



「あぁ。入っていいぞ」



「失礼する」



エレナは迷いなく、俺のベッドへと向かい腰を下ろす。



「どうしたんだエレナ?」



「カルラに言われてアスタの作業を手伝いに来たんだ。この前の罰だと」



「そうだなぁ〜。罰ならたっぷりとこき使ってやろっかなぁ」



「ふふっ。ほどほどに頼むよ」



談笑をしながら作業をしていたが、1人黙々と作業している時よりなぜか効率的に作業が進んだ。



「ところで疑問なのだが、この村はどうするつもりなのだ?戻ってきてからまた村の整備やらを行っていたようだが」



「まだ人口も戦力も資源も弱小の村だけどさ、ゆくゆくは国にしたいと思ってる」



「ん?君は人間を救済しにきたわけではないだろう。何故そんなことをする?」



「別に俺は人間を皆殺しにするつもりはないよ。ただ、数を調整するだけだ。世界が滅ぶ危機が去ったら、難民なんかをうちで引き取って国を作り、そこである程度ルールを定めれば、いろいろな種族が共存できる場所になるかなって。言わば平和な世界を作りたいってこと。簡単にはいかないだろうけどね」



「さすがだなアスタは…私が同じ状況だったらと考えると…」



「ははっ。俺だってエレナ達がいなければとっくに諦めていたよ。だから本当に感謝しているんだ」



「それを言ったら私だって君と・・・君たちと出会わなければ勇者たちに捕まって殺されていただろう。助けてくれただけでなく居場所までくれて本当にありがとう」


「そ、それでなんだが…その…あの…」



「どうしたエレナ?」



いつぞやみたいにエレナがモジモジしながらこちらをチラチラと見ている。



「約束・・・」



「約束って?」



「…っ。いやすまない。少し出る」



止める暇もなくエレナは部屋を飛び出しどこかへと姿を消してしまった。やってしまった.....な。あの態度と約束という言葉を聞いて、なんとなく察した。照れ隠しで、覚えていないフリをしたのは失敗だったようだ。



「あぁ〜アスタがエレナを怒らせたぁ〜!」



「ダメだね〜」



エレナと入れ替わりでココとメロが、人を馬鹿にしたような顔をして入ってくる。


おそらく約束とはユウトとの決戦前の話だろう。ユウトとの決戦後は忙しくてお互いにそれどころではなかった。


確かにこのタイミングがベストなのだが.....決して忘れていた訳ではない。



「聞いてたのか?まぁ、そうだなぁ…ココ…メロ…助けてくれ」



「「まっかせなさーい!」」



「まず、アスタはなんでエレナが怒ったかわかってる?」



「あぁ。はっきりと…」



「なんで!なんで!」



「そこは言わなくてもいいだろ」



「アスタ。私たちは仲間だよ。どんな理由でも笑わないし、真剣に聞くから」



メロの優しい微笑みに負け、俺は洗いざらい全てを話した。話を聞いて、2人とも目を丸くしていた。



「おっふ。メロさんメロさん。結構マジな話だったんですがぁぁ」



「そうね…アスタさんのことだから、もっとふざけた内容かと思ってましたぁ.....」


ココから俺への評価が低いのは知っていたが、まさかメロからもそんな評価を受けているとは。ショックを受けつつも、とりあえず話を逸らすことにする。



「ま、まずは仲直りの作戦を立てよっ!」



「「おぉ〜」」





私は馬鹿だ。


アスタにとって、私への気持ちはそれほど強くなかったのだろう。ただ、私が勝手に舞い上がってただけだった。命を狙われ続け生きてきた私でも、恋をすることが許されたのだと。


それなのに…あの程度のことで悲しみがこみ上げて、アスタの前から逃げてしまった。


アスタは何も悪くない。

悪いのは私だ。


わかっていても、自然と目から涙が溢れてしまう。泣き顔を見られたくなかった私は、村を飛び出して、ケルン大森林まで来てしまった。


高い木に登り、空を眺めながら泣いていた。


ふと、昔のことを思い出した。故郷を滅ぼされ、友人や家族を殺された私は、復讐者としての道を選んだ。関係者を見つけ出しては殺して…そんな日々を送った。しかし殺しても殺しても何も満たされることは無かった。


そして次第に復讐することをしなくなり、罪悪感からか今度は困っている者を助ける日々を送った。復讐により、多くの人から恨まれ追われながらも、助けることを続けた。


人助けが災いして勇者にも追われることとなったが、私は悔いてなどいなかった。


その日もいつものように、追手から逃げていると、1人の少女?が飢に苦しんで、食料を求めていた。


私は持っていた食料をやり、その場をすぐに立ち去った。まさか、その少女に助けられるとは思ってもいなかった。それに少女ではなく少年だった。


しかも好きとか言われて…


そんな彼と行動を共にするうちに、私もいつも一生懸命な彼に惹かれていった。だが交わした約束も忘れられている。彼の妻なれるかもなど、夢物語だったのかもしれない。もちろん私1人を愛してほしいとは思わない。強者が1人にしか遺伝子を残さないなど馬鹿げた話だ。

しかし.....私のことを忘れて、他の魅力的な女性の仲間を好きになったと考えると心が痛む。ココもメロもアウレアもネロもカルラも私より可愛いし女らしい…


しかしなぜだか彼を諦めたくないと言う気持ちが強い。愛されたいと考えてしまう。



「アスタ…私は…どうしようもなく…君が好きみたいだ…」



柄にもなく、私は独り言を呟いた。

    



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る