第38話 はじめの一歩
彼らが出陣したのを見送ると俺はレックスから友好の証として貰い受けた常に体から砂がこぼれ落ちる
しかし.....悪魔種とは違い収納し、分解せず創造し直す方がとてつもなく難しいらしい。死ぬ確率の方が圧倒的に高いそうだ。つぶらな瞳で見られると心が痛くてとてもじゃないができない。
結果的に〈
生贄はこれで十分らしく、地面に置いた
サイズの割に食べるスピードは早く、数分程度で骨ごと食べ切った。すると
【これが
(すげぇ.....でもこんなちっちゃいの乗れないぞ?)
【近くに多くの生物を探知しています。恐らくフェルトの家畜場かと推測されます。そこにこの
(悪魔的発想だな)
【はい。悪魔であるアスタ様から生まれたスキルですから】
(確かに.....)
少し歩くと
しばらくすると悲鳴が聞こえなくなり、恐る恐る確認をすると、1つの影がノソノソとこちらに近づく。影は羊や鼠の鳴き声のような、馬の嘶きのような、なにものにも形容し難い不快な鳴き声をあげている。
「うわぁ.....」
そう思わず声に出してしまう声の正体。牛らしき頭。左には肥大化した鳩の頭。右には同じく肥大化したネズミらしき頭の3つの頭を持ち合わせ、体はおそらく羊らしきものに馬の脚がくっついている。尾は犬とも狼とも似ているふさふさで長いもの。中々に酷い見た目になってしまっている。大きさは通常の牛程度であり合格基準は超えているが、肝心の翼は確認できない。
「ハズレか」
ボソッと呟くと、
え?あれで飛べるの?と疑問しかないが、騎乗してみると簡単に宙に浮きやがる。地を走るかの様にそのまま飛び始めた。無駄に知能も高い様で指示した通り、戦場を大きく迂回してハノーファ公国の首都らしきところまで飛んでくれた。
フェルト帝国による突然の猛攻に慌てているのか王都は混乱して、兵士や冒険者らしき人物たちが右往左往しており、気味な生物になる俺に気づく者はいない。おかげで魔法を放つ標的をゆっくりと選ぶことができる。
俺の持つ魔法の中で1番の威力を誇るSランク魔法でもある
「さて、やりますか」
〈
魔法陣より放たれた黒炎は花火屋を一瞬で破壊し、引火した火薬が連鎖的に爆発を引き起こす。凄まじい規模の範囲に被害が及び、爆発により数多くの人間が命を奪われ、炎に包まれた人々は悲痛な叫びをあげる。まさしく地獄。
元々は俺1人で魔王になろうとしていたが、俺のためにザックたちは悪役を引き受けてくれた。恨まれるのは百も承知。より多くの生物を守るため、俺が躊躇するわけにいかない。今回の一撃は俺の中の覚悟を揺るぎないものにする重要なものだ。
「.....こんなもんだな」
混乱する街に降り立ち、次なる一撃を加える準備を始める。
〈
【特定の条件を満たしたためスキル[悪魔を統べる者]を獲得しました。加えて、新たに〈
ん?特定の条件.....あ、噂の称号系スキル!でも一連の流れで何か条件を満たすことしたか?悪魔の召喚ならすでに回数を重ねているし.....
「貴方様が私を呼び出したのですか?」
突然後ろから声がしたので振り返ると、黒く捻じ曲がった角が生えた、銀髪ウルフヘアに黄色の猫のような目をした爽やかなイケメンが跪いていた。服装は何故かスーツ。見た感じ敵対する様子はない上に、近くに他の悪魔もいない。こいつは俺が召喚した悪魔だろう。
「あぁそうだ。生贄は今殺した人間たちを好きなだけ貰うといい」
「これだけの生贄っ…ありがとうございます。よろしければお名前を」
「アスタだ」
「アスタ様。我が忠誠をお受け取りくださいっ!」
「そうか。なら早速仕事だ。周辺の人間を皆殺しにして見せろ。あっ、死体を使いたいから火属性の魔法使うな。あと終わったら死体をこの辺にまとめてくれ」
「御意っ」
イケメンな悪魔は一礼をすると、手始めにと、周囲に残る人間全ての首を瞬時に切り落とし、紳士的なお辞儀をする。そして更なる狩りのため俺の元から消えていった。
アスタ様.....なんて素晴らしい響きなのだろう。ワタシの為にあれ誰の生贄を用意してくださり、最初の指令までも!!
ワタシの有用性を見せつけるためにも素早く役目を遂行せねば。ただやはり弱く何の価値もなければ面白みもない人間を狩るのはつまらない。早くアスタ様の元に戻り、次の指令を受けたいものだ。
「やらせないっ!」
兵士の1人をまた殺そうとした時、女の騎士が死にかけの兵士を庇い、私が放った魔法を身を挺して防いだ。
「た、助かりました.....ありがとうございます」
「気にするな!」
私は死にかけの兵士に向けた笑みを見て、この女に興味が湧いた。兵士の周りには血の水溜りができており、鎧を貫通して肉体を抉った傷跡も生々しい。素人から見ても助からないのは明白だ。
しかしこの女の笑みは、死にゆく者に向ける慈愛の笑みでもなければ、単純な優しさからくるものでもない。それはただお礼を言われたことに対する喜びからくる純粋で無邪気な笑み。
この女.....面白い。
「よく私の魔法を身を挺して防ぎましたね。名前は?」
「ヴィクトリア。お前を殺す者だ!」
面白い女なのは確か。ワタシと比べれば弱いが実力もそこそこ。しかし明らかに彼女の振るう剣が彼女自身の力に耐えきれていない。女が放出する魔力量に耐えきれず漏れ出してしまい、放たれるスキルも不発か大した威力がない。防具も同様に粗悪。
「一級の戦士たるもの、武具も一級であるべしとはよく言ったものですね。武具が足を引っ張っている貴女に、ワタシを倒すことは不可能でしょう」
余裕があるので、殺さないように魔法で体力を削り、粗悪な防具を破壊し、惨めな格好にした。本来であれば皆殺しが適切かと思われますが、ワタシの趣味にぴったりなこの女。あの慈悲深いアスタ様であれば1人くらい.....
「もう貴女に対抗する手段はないでしょう。貴女は特別です。命を奪うつもりもないので尻尾を巻いて逃げなさい」
「私は最後まで屈しない.....」
さてどうしたものですかね。やはり命令違反が脳裏をよぎってしまいます。折角巡り会えたご主人様に見限られるのも.....いやワタシも悪魔です。この人間で遊びたくて仕方がない。とりあえず、自主的にワタシから逃げてくれると逃げられたとご報告も可能。なら思考を変えましょう。
虫の息だが生きている兵士の1人の首根っこを掴み女の前へ突き出した。
「これ以上向かってくるのならこの男を殺します。下着以外を全て脱ぎこの場から立ち去るだけで一つの命を救うことができますよ?どうしますか?見殺しにしますか?」
女の表情が一気に曇る。それから私を睨みながら服を脱ぎ捨てる。惨めな格好に磨きがかかり素晴らしい。この女.....あれだけ味方のためにと偽っておきながら、自らの命のためならワタシの命令に従うとは、ますます面白い。
女は「私は約束を守った。その男は必ず解放してもらおう」と吐き捨てながらもすんなりと私の前から消えていった。
「もちろんですとも。この世から解放してあげなければ」
女の気配を探知できなくなったことを確認し、男の頭を力で握りつぶし、約束通り解放した。
さぁ、続きといたしましょう。
(今のうちに…悪魔を統べる者って?)
【はい。[悪魔を統べる者]は、
いよいよ魔王らしいスキルや魔法も増えてきた。それに人を殺しても対して感じるものがなかった。[強靭な精神]のスキルレベルが高いせいなのか…
それとも身も心もすでに悪魔になったのか…深く考えると辛くなりそうなので、使命だからと割り切ることにする。
てかさっきの奴、上位の悪魔だったのか。そんなことを考えていると、何体かの死体を抱え血塗れになったイケメン悪魔が一旦戻ってきた。
「人が多くて大変ですが、この区域は終わりました」
「速っ!」
「いえいえ。まだ一区域しかできていないなんて.....遅すぎる」.....大変申し訳ありません」
「遅いなんて、そんなことないぞ。むしろ早い方だ」
「ありがたきお言葉。ワタシ、惨めな人間を観察するのが趣味なんです」
唐突なカミングアウトに、ソウナンダーとしか言いようがない。悪魔らしい趣味ではあると思うんだけど、なぜ今なんだこの悪魔は。
「なんとお優しい!ではとりあえずまだそれほど死体を集めてはいませんが5体ほど置いておきますね!!では、とりあえず死体を集めてまいります」
「いや、集めるのは他に任せるから行ってこい」
「そうですか!ではっ!」
また一礼をすると凄まじい速さで狩りに戻って行った。それを見届けてから、俺は死体を収納して、さっそく覚えたての魔法を使った。
〈
率直に言おう。思ってたんと違う。
現れたのは黒いゴブリンみたいなが20体ほど。もっとかっこいい感じの悪魔の軍隊かと思っていたのでとても残念だ。
「まぁ…いいや。人間の死体をここに集めろ!」
「カシコマリマシタ」
一匹のちっちゃな黒ゴブリンがそう言うと、一斉に散らばって作業を始めた。
そして運ばれてきた死体をどんどん収納をして、それらを使って
まだまだ作れるのだが、あまり弱いモンスターを作成しても素材の無駄になるので、ハリボテ軍隊もこのくらいで一旦終わり。
「ふぅっ…終わりましたよアスタ様!!」
髪をなびかせるのもなんか様になっている…段々ムカついてきた。
「ワレワレモシタイノカイシュウオワリマシタ」
「おつかれさん。えっと最初に召喚した.....スーツのやつ以外の悪魔は、|
「カシコマリマシタ」
「お前は俺と動け」
「はいっ!!」
2人きりになってから、このイケメン悪魔がご機嫌だ。
翼を出し俺の周りを飛んでいる。
コバエが纏わりついている気分だ。
【スキル[擬態]を獲得しました】
(ん?なんで獲得した?)
【はい。飛び回ってるはe・・・悪魔の翼は擬態で作られたものです】
「お前、翼無いのか?」
「さすがアスタ様!バレてしまいましたか・・・私は、魔界でも羽無しと蔑まれていました。なので少しでも見栄を張ろうと」
「そっか〜」
俺も悪魔のはずだが翼も角も無いぞ??
「申し訳ありません。アスタ様の望みならこの場で肉体を捨て魔界に戻りますが・・・」
こいつの言いたいことはつまり、俺が気に入らないなら、この場で自害するということだろう。
「くだらないぞ。他者と少し違うからといって、見下すなど愚か者がすることだ。それともお前は俺がそんな愚か者だと?」
「と、とんでもないっ!!」
「ならば話は終わりだ。お前が俺を気に入らないのならどこへでも行くといい。だが、俺はその程度のことでお前を切り捨てたりはしない。覚えておけ」
「…っ!400年・・・生きていてこのような温かい言葉を言われたのは初めてですっ!改めて、我が忠義を捧げます」
「おうよ!」
(忘れた。とりあえず鑑定っと!)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[水属性][闇属性]
[悪魔種]
[召喚士Lv1][魔導士Lv8] [盾士Lv10]
体力 1500
魔力 4000
知力 1980
攻撃 100
防御 4630
魔法攻撃 6000
魔法防御 410
素早さ 1100
スキル[嫉妬Lv2][石心Lv1]
[刃鱗Lv4][夜眼Lv8]
[擬態Lv10][責任転嫁Lv9]
[無慈悲Lv2][激昂Lv3]
[強靭な精神Lv6][竜鱗Lv6]
[魔法の心得Lv4][思考加速Lv8]
[即死無効Lv1][腐食無効Lv1]
[魔法耐性Lv7][毒耐性Lv8]
[火耐性Lv9][水耐性Lv5]
[風脆弱Lv7][雷超脆弱Lv6]
[攻撃低下Lv2][体力低下Lv3]
[毒牙Lv3][恐怖邪眼Lv10]
[毒爪Lv7][腐食爪Lv1]
魔法 [
[
[
[
[
[
[
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レベルはめっちゃ高いが極端なステータス…
(
【
いや〜正直
召喚魔法と創造.....どちらかの方が便利かというと難しいところ。創造で生み出す場合は、素材さえ良ければ召喚魔法で呼び出すモンスターよりも高レベルで、尚且つ叛逆や裏切りの心配が無いと言い切れる。逆に召喚魔法で呼び出す場合は、レベルが低い可能性がかなり場合があり、場合によっては叛逆をする可能性もある。だがスキルや魔法のレベルが最初から高かったりするので、博打だが良い個体を引き当てさえすれば、創造よりも即戦力となり得る。使い分けが重要だな。
今回の遠征はとても勉強にもなる。自身の強化には最適だと感じた。
「さてさて。戦場へ出向きますかぁ」
勇者の存在も気になるし、そろそろアウレアたちに合流しつつ、敵を挟み撃ちで潰すとしよう。
「お伴しますよ!アスタ様!」
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