第32話 交渉成立
魔王.....最低でも村長がいるであろう煉瓦造りの屋敷とは呼べるくらいは立派な家の前に着いた俺たちは、ソールとメロの魔法でバフをかけてもらい、念のためカナタとネロの護衛を、魔力をかなり使っているメロに任せた上で、後方へと下がってもらい村人たちの監視役を任せた。アウレアとソールとエレナと俺の4人で中に入ることにした。エレナは無防備なココの護衛だ。
魔王だった場合、元々殺す予定なので全員が配置についたのを確認してから、遠慮なく無駄に重厚な扉を開けた。中には、光沢のある毒々しい紫色の長く乱れた髪に爬虫類のような細長い瞳の目。時折り見せる長い舌はまるで蛇の様。上半身は人型だが、下半身はまるで蛇そのもののような異形の女と、玉座であろう家の内装に不釣り合いな椅子に座る、金色のショートボブをした可愛らしげな少年がいた。
その後ろ左右には、腰にボロい布を巻いた2m程度の筋骨隆々な男性の身体に牛の頭のモンスター。同様の体躯に未の頭のモンスターがそれぞれ背丈に見合った石の大剣を握り締めこちらを警戒している。恐怖心を煽る風貌をしておきながら、強さは見掛け倒し。
(2人を鑑定)
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カルラ Lv42 [水属性]
[劣竜種]
[盾士Lv5][医療士Lv2]
体力 3000
魔力 500
知力 430
攻撃 1000
防御 4000
魔法攻撃 100
魔法防御 4100
素早さ 500
スキル[威圧Lv4][毒耐性Lv10]
[麻痺耐性Lv10][物理耐性Lv9]
[魔法耐性Lv8][腐食無効Lv1]
[毒牙Lv10][麻痺牙Lv8][心眼Lv2]
魔法[
[
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フェリクスLv100 [光属性][闇属性]
[悪魔種][天使種]
[魔導士Lv10][死霊術士Lv2]
体力 1000
魔力 5600
知力 4500
攻撃 100
防御 2000
魔法攻撃 3900
魔法防御 2000
素早さ 900
スキル[魔王Lv1][統治者Lv1]
[色欲Lv5][堕天使Lv1]
[韋駄天Lv7][伏魔殿Lv10]
[劣化創造Lv1][叡智Lv2]
[一度きりの龍Lv1][禁魔解放Lv1]
[予知Lv2][探知Lv7]
[自動大回復Lv10][魔力自動回復Lv10]
[魔法の心得Lv1][腐食無効Lv1]
[麻痺無効Lv1][毒無効Lv1]
[即死耐性Lv1][苦痛耐性Lv9]
[闇耐性Lv7][風耐性Lv2]
[光強化Lv9][闇強化Lv2]
魔法
[
[
[
[
[
[
[
[
[
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スキルにばっちり魔王ってのがあるのを見る限り当たりだな。噂の称号スキルか?とりあえずあの敵意剥き出しのカルラとか名前の方は簡単に仕留められるな。問題は魔王フェリクスくんか。オドオドした雰囲気とは裏腹にステータスはそこそこ高め。スキルも魔法もかなり充実している。彼と戦闘になればこの人数でも無傷とはいかないだろう。
「たっ、頼む。ボクの命はどうなっても構わないが、せめてここの民だけは殺さないでくれませんかっ!」
しばらくの膠着状態の後、魔王と思しき少年は口を開いた。襲ってくるのでも無く、立ち去れ!と言うわけでも無く、命乞いするわけでも無く、自分の街の民だけでも救って欲しいと震えた声で言う。態々玉座から降り、深々と頭を下げながら。言葉や行動に偽りはないだろう。その姿を見て殺すつもりが失せてしまった。というより、本来ならこのような姿勢の者が勇者になるべきだと思う。
「アスタ様の手を煩わせずとも、僕たちがやります」
「いえ、あーしが」
「殺すのは止めだ。全員下がれ」
「「「・・・かしこまりました」」」
3人が後ろへと下がるのを確認し、俺は一歩前へ歩みを進める。ビクッと少年が身震いしたのを俺は見逃さなかった。敵意はないと示すため、手に握る刀をしまう。
「君が魔王か?」
「そ、そうです」
「おい!この人間風情がっ!フェリクス様に無礼だぞ!」
戦闘の意思がないことを示しても、女の方はこの態度か。穏便に済ますにはどうしたものか。
「
珍しくソールはアウレアよりも先に殺気を全開にし、俺の前へ飛び出す。それより種族名は
「ソール!落ち着け」
肩に手を置き静止するも、ソールの殺気は収まらない。
「アスタ様?無礼を承知で言わせていただきます。あーしはソールも間違っていないと思います。力の差を示す事こそが、低脳の
「忌憚のない意見を感謝するよアウレア。よしソール。このカルラとか言う
「かしこまりました」
「他の2人は絶対手出しするな」
「何故貴様が私の名前をっ!」
「答えるのは後だ」
かくして村に被害が及ばぬ様、村から少し離れた荒野に移動して、カルラとソールとの一騎討ちが行われることとなった。
しかし・・・
全く勝負になっていない。ソールが一方的に攻撃をしている状況だ。カルラは防御力はとても高いが、素早さが低くソールに攻撃を当てられないのだ。
「フェリクスと言ったな?まだやらせるか?」
「ボクはカルラを信じたいっ!」
「そうか」
だがフェリクスくんの想い虚しく、戦況は変わることなく試合は続いた。
「ソール。もういい」
「まだやれます!」
「違う。カルラが手も足も出ないことの証明にはなっただろう」
「わかりました」
「まだ負けてないぞ!!」
「お前が立っていられるのは、殺すなと命令したからだ。こっちがご丁寧に一騎討ちという形をとっているだけで、俺たち全員が攻めたら?ソール1人倒せなこの状況でフェリクスを守れるのか?それでも負けでないと?」
「・・・ほざけっ!〈毒吐────〉
〈────魔法排除(マジックリジェクション)〉
頭に血が昇っているのか、ソールではなく俺に向けて魔法を放とうとしてきやがった。アウレアは冷静に俺の前に立ちカルラの魔法を強制的にキャンセルしてくれた。
「アスタ様にこれ以上不快な態度を取るなら、あーしがこのチビ殺してもいいんだけど?」
「アウレアありがとう。でも言葉は慎めよ?」
「はいっ!」
「それで、別に殺すつもりは最初に失せているのだが…?話し合いもしないと?」
しかしカルラの殺気は収まるところを知らない。むしろ増し続けている。フェリクスくんのことが大切なのは痛いほどわかった。俺としては多少攻撃をくらっても構わないのだが、そんな事態になれば、これ以上ソールやアウレアを抑えるのは無理そう。まだ玉座の左右に立っていたモンスターの存在もある。血みどろの殺し合いに発展しかねない。3人の死体を並べた上でフェリクスくんとの交渉など絶望的.....
「フェリクス様っ!お逃げください!」
「カルラ!も、もういい。アスタさんでいいんだよね?話し合いに応じるよ」
フェリクスくんのたった一言で、カルラから放たれていた殺気はほとんど消えた。それから玉座の裏にあった扉から円卓の間に通され、そこで俺たちとフェリクスが座り話し合いが始る。
別に椅子は空いているのに、牛男と羊男とカルラは座る様子はない。王とはそういうものなのか?王様の経験なんてないからわからん。
「単刀直入に言う。俺は魔王になるために拠点がいる。なのでこの村を提供して欲しい。対価として、お前ら2人を含む民を守ると約束しよう」
「フェリクス様の土地を奪うと言うのか!」
「カルラ!正直ぼく達ではもうここの維持も限界だった。あ、アスタさんの話は願ってもないだろう.....だ、だけどアスタさんにお願いがある!」
「なんだ?」
「ぼくをアスタさんを下っ端にして欲しい」
「フェリクス様っ!」
「か、代わりにカルラはもっといい待遇をさせてあげてくださいっ!」
「ふふふっ。フェリクスだったか?君は勘違いをしているな。アスタはそこまで酷くはない。きっと2人とも良い待遇を受けさせてもらえるだろう」
「あしゅたはやさしよぉ〜ムニャムニャ.....」
ココはまだ起きてなかったのか。
「ココとエレナの言う通りです!アスタさんは優しいですよ!」
「エレナとメロもありがとう。その通りだ。魔王の座を譲ってくれるなら、君たち2人とも幹部として向かい入れたい。と言ってもまだお世辞にも軍と呼べるほど戦力はいないのだがな」
「嘘を言うなっ!貴様らは私たちを騙すつもりだろ!」
「カルラありがとう。け、けどボクは彼らを信用していいと思う。ボクのことも信用できない?」
「うっ。わ…かりました。貴様らを信用したわけじゃない。フェリクス様にもしものことがあったら、アスタ!貴様には死んでもらう」
「それで構わない」
「なら私はフェリクス様の指示に従います」
「ありがとうカルラ!ならぼくと共に、彼の下に付こう!」
「かしこまりました」
「決まりだな。これからよろしくな!フェリク
スとカルラ!」
「う、うん。アスタさん!」
フェリクスと硬い握手を交わした。それから俺は自分の目的と世界の現状を包み隠さず2人に伝え、真実を聞いた上でも協力すると言ってくれた。こうして新たにフェリクスとカルラが加わり、拠点も手に入れることに成功した。
ちなみにココが起きたのは話し合いが成立してから、さらに1時間後のこと。
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