第30話 アスタVSユウト④
【経験値が一定に達したため、レベルが上がりました】
【レベルが60に達したため、新たにスキル[憤怒][強欲]を獲得。また[父なる聖剣]のスキルレベルも上昇したことにより[母なる聖剣」を獲得しました。魔導士の職業レベルが2つ上昇。魔導士のレベルが5に達したため、スキル[魔法の心得]を獲得しました】
【体力が一定数を下回っているため[憤怒]の発動を確認しました】
やはり区切りのよいレベルになったことで一気に新たなスキルが解禁されたな。
「俺を守ろうなんて、馬鹿どもが.....」
さて、今回手に入れた憤怒と強欲。前者のスキルは体力が一定以上を下回ると攻撃と魔法攻撃のステータスが大幅に強化されるもの。後者は全ステータスの上昇に加えてスキルや魔法を覚えられる確率が上がるもの。何とも強欲的なスキルだ。
俺が一般兵と戦っている間に、ユウトはある程度回復した様子。身体についた傷のほとんどが無くなっている。しかしそれが虚勢であることはステータスを確認できる俺にはわかる。
傷は消せても、残り3割以下の体力が回復している様子はないからだ。
互いに無言を貫きつつも剣を構える。負けてこれ以上格好の悪いところは仲間に見せられない。威力は落ちるが残り魔力を計算しつつ、再び剣に魔力を溜め込み、間髪入れずユウトに向け[
青白い光で伸びだ刀身が、ユウトの三連続の斬撃を撃ち破り、そのまま剣を握る右腕の肘から下を斬り飛ばす。
【ユウトの体力が一定以上を下回ったため、スキルの[狂乱]の発動を確認。狂乱とは知力が著しく低下する代わりに、攻撃や速度といった値がカンストする強力なスキルです。お気をつけてくださいアスタ様】
右腕が斬られたのを物ともせず、剣を口で咥えつつ獣のような姿勢で構え、先程と比べ物にならないスピードで俺へと急接近し、次々と斬撃を繰り出してきた。攻撃の一撃一撃がスキル並みだ。絶望的かと思ったが、二本の剣で何とか攻撃を凌げている。
「.....ザック守ってくれてありがとう」
しかしユウトが狂乱とやらを発動してからと言うもの言葉が通じない.....
「アスタアスタアスタアスタアスタアスタアスタ!!」
「なんだよ怖いなッ!
ある種の暴走状態なのだろう。攻撃面は強化を肌で感じるが、逆に防御が手薄になっており、
〈
〈
────と思ったが、今度は魔法を惜しみなく連発してくる。相変わらず四足歩行を貫くユウトの額から紫の魔法陣が現れ、悪魔の姿を模ったような黒炎が、俺目掛けて飛んでくる。強力な魔法のようだが、命中率が悪いらしい。動き続けていれば当たらない。しかしアレに当たれば一発で終わりだろう。たった2発で遺跡は跡形もなく崩壊し、草木は燃え尽き、もはや場所の原型を留めていない。
3発目が放たれると同時に
【魔法〈
「ふふっ」
「なんだよ…なんだよなんだよなんだよなんだよなんだよ!!」
「こういうことだッ!」
俺はユウトに向け、手のひらで照準を合わせ魔法陣を展開する。
〈
「あー?」
明らかにユウトと比べ威力が劣っているものの、黒炎はユウトに直撃した。
「な、なんでてめぇが使える!!!」
魔法をくらったのが原因か、自我を取り戻したようだ。しかし
【魔力が限界値になりました。これ以上魔力の消費は、命の危険があります】
魔力が無くなりかけたとき特有の倦怠感に襲われ、思わず膝をついてしまった。だがユウトも耐えたとはいえ、膝をつき動けずにいる。
「魔力切れか??そういうことだ!お前なんかが、簡単に使えるもんじゃねーんだよ!お前じゃ俺を倒せない!倒せたところで、他の仲間達がお前を殺しにくるだろーな!大変だなアスタ?俺よりつぇーのも大勢いるぞ?どう足掻いても無理なんだよ!」
「うるせぇ!」
俺はもはや剣を握ることすらままならない手で、ユウトに近づき倒れ込むように殴りかかる。
「確かに.....このままじゃほかの奴らにも勝てないだろうな。だからお前を糧にする」
「はぁ?」
ユウトの上に馬乗りの状態で、俺はユウトの両腕を押さえつける。
「さて俺のスキル嫉妬は、一定確率で相手の発動したスキルや使用した魔法を獲得できる。嫉妬のおかげで、さっきお前の悪食も獲得できたんだ。悪食と嫉妬を併用して、お前を喰えば少しは強くなれるかもな」
「は.....はあっ?っざけんな!」
「感謝してるよ。自分が楽しむため、手を抜いてくれたこと。じゃあ.....いただきます」
肉を喰いちぎる不快な音と、ユウトの叫び声だけが響いている。
「や、やめろっ!!やめ…やめろぉー!!スキル発動ッ・・・くっ・・・」
口内いっぱいに臭い生肉と鉄の味が広がる。とてつもなく不快だが、やめつもりなんてない…
────ゴクッ────
「ご馳走さまでした…」
流石に完食とはいかないが、腕の肉、喉肉、両頬に腹の肉に
「あ、アスタさん?大丈夫ですか?」
「嫌なものを見せたな…メロ。みんなも」
引かれるよな.....そりゃあ。
戦闘も無事?終わり、ルナが肩を貸しながらソールが俺たちの元へと駆けつけてくれた。遅れてアウレアも合流する。
「さぁ帰るか」
「アスタ。やってることが、魔王っぽくなったのではないか?」
「あははッ!確かに!今の姿も怖いし!いつもの女っぽい見た目じゃなくなってるよ!良かったねアスタ!」
「ふふっ…うるせっ!エレナもココもきらいだ!」
「嫌われちゃった〜!泣きそう〜」
「あーしは、女っぽい見た目のアスタ様好きですよー?」
「アウレアまで女っぽい見た目言うな!」
「自分達は人のこと言えませんからね。ノーコメントで」
場を和ませようと、みんな気を使ってくれているようだ。少しは気が楽になる。本当に最高の仲間達だ。もちろんザックも含め.....
「ありがとなお前ら。よっし!戻るとしますか!」
戦いの場から背を向けた時、突然背後から男の声が聞こえた。
「待て」
振り返ると、確かにそこには1人の男が立っている。顔立ちを見る限り、どう見ても日本人だ。つまり転生者だろう。
周りに他の人物の気配は感じない。おそらくこいつ1人だろうが、これ以上戦闘をするのはまずい。
「敵討ちか?」
「アスタ様お下がりを!」
「待ってくだ────その顔…アスカワ?」
!?
「お前もどっかで.....?」
「俺だよ!か・な・た!サトウカナタ!」
サトウカナタ。まだ小学生の頃、ぼっちの俺にいた唯一無二の友達。でも────
「────本当にカナタか?いやカナタは死んだんだ!」
「ふふっ。そうだね。だからこっちに来たんだよ」
「あ、そっか.....再会を喜びたいところだが、何のようだ?俺たちと戦うか?」
「そんなことするか。僕は戦闘が得意なタイプじゃない。それに転生者の中じゃ最弱だ」
「そうなのか。じゃあなんだ?」
「アスカワ達の目的はなんなんだ?」
友達だったこともあり、信用してもらえるかわからなかったが、世界が滅びることやそれを止めるために自分たちがこれからする事を包み隠さず話してみた。もはや賭だが。
「だいたいは理解したよ。微力だろうけど協力させてくれないか?」
「悪いが信用できない」
「だよね。じゃあ僕が知っている情報を全て話すよ」
「確定じゃないが、仲間を売れるか試すよ。教えてくれ」
カナタは自分が知り得る情報全てを教えてくれた。それによると転生者は、なんとなく分かっていたことだが、こっちの世界では勇者と呼ばれていて、元は50人までいたが、過去の魔王討伐戦を終えた段階で現在30人まで減ったこと。噂程度の話だが、ベルリン王国という国で、転生者のデータをもとに、強力な兵隊が作られているという話。現在の勇者たちの暮らし。そのほかにも様々な事を教えてくれた。
「.....まぁ合格だ。まだ完璧に信用したわけじゃないから、見張り役を必ずつける。異論はないな?」
「あぁ。アスカワに信用してもらえるように、努力するよ」
新たにカナタが仲間(仮)になった。
今回は大きな犠牲を払い偶然勝てたに過ぎない。カナタのような他の転生者がいるということすら頭に無かった。皆それぞれ強さが足りていない。自分たちの弱さを痛感しつつ、新たなる決心と共に遺跡を後にした。
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