第29話 アスタVSユウト③
さらにアウレアたちと同時刻・・・
遺跡の中心にて、激しい猛攻を避けつつ、チマチマと攻撃をしていた。だが防御力が高いため全くダメージを与えられずにいるのが現状。もちろん、こいつに正面からぶつかって勝てるなんて驕り高ぶってないし、サシで戦い続けるつもりもない。しっかりと作戦は考えてあるが、作戦を成功させるためにも少しは体力を削っておきたいのだ。
【スキル[威圧]を獲得しました】
(威圧?)
【相手にプレッシャーをかけるの
つまり今獲得しても役に立たないということだな。ただでさえステータスはユウトとかいう野郎を下回っているのに、さらに下げられていたなんて.....
現状から巻き返すためにも、ユウトにスキルや魔法を使わせて、この戦闘中に嫉妬の力で自分を強化しながら戦闘を進めたい。
しかし先ほど鍔迫り合いをしているときに、疎かになっていた腹を思いっきり蹴飛ばされ、たった一回蹴られただけで、体力を2割ほど持っていかれた。剣術も勝てなければ、体術も有効的ではない。魔法も意味がない…
気を抜けばいつ死ぬか分からない極限の状況。
再び鍔迫り合いとなるも、ユウトの力に押し負け、刀ごと後方へと吹き飛ばされ、背中が地面に叩きつけられる。
「もう終わりか?立てよタイガ!」
「考え事をしてただけだ馬鹿。一つだけ訂正しておく。俺はアスタと名乗っている。タイガではない!」
言い終えると同時に、背中をぶつけた際に落とした刀を拾い上げ、再びユウトに急接近する。
「ハハッ!悪かったなぁ?アスタ君??」
「
「
「暗殺者みたいな事までするんだな!面白い!!」
血が滲み、視界が眩む。一瞬の隙をつかれて、髪を掴まれ、左首に噛みつかれる。ニチャァと嫌な音を立てながら首の皮が剥がれる。
「…っ!!」
苦痛耐性があるがとても痛む。体力は残り1割を下回る。次に攻撃をかすっただけでも死ぬ。だが不幸中の幸いにも失血や出血のデバフは避けられた。
【スキル[悪食]を獲得しました】
「あぁ〜残念。スキル獲得できなかったわ」
距離を取るため、ユウトの目の前で刀を横一閃。しかし疲労や痛みを押し殺して放った一撃。最初ほどの速度が出せず、ユウトに隙を作らせるほどには至らない。すでにユウトから放たれた斬撃は俺の首を捉えかけている。
「アスタさんっ!!〈
しかし首に刃が到達するよりも先に、紫の半透明の大きな手が俺の体目掛けて飛んでくる。そのまま胴体を掴まれ、勢いよく声の方向へと引き寄せられた。
「もう安心しろアスタ」
魔法を使用したのはメロ。自分の意思とは無関係で引き寄せられた俺をキャッチしたのはエレナだった。
「それよりココは?」
「ばっちし助けてもらったよっ!」
ココがエレナの腕の中で横たわる俺を覗き込むように顔を近づけてきた。一瞬だけ目の前の戦いを忘れ、安堵から緊張が解けホッと息を吐いた。
「2人ともココを助けてくれてありがとうな」
「あぁ。アスタ少し休め。私たちが彼の相手をしよう」
ユウトと俺の間を阻むようにエレナ、ココ、メロの3人が立ちはだかる。女の子3人に守られるなんて、やっぱり妄想のように格好つけられないものだな。
「3人とも頼んだっ!」
「やるぞっーーー!」
「任せてください!」
「くぅ〜。泣かせるなよ。でもお前ら程度じゃ俺には勝てねーだろうが。あの赤髪ぶっ殺した時に証明したろ?」
ユウトの問いに誰も答えることなく、メロが魔法でエレナとココのステータスを上昇させ、2人がユウトに目掛け走り出す。
証明とユウトは言ったが、あいつは何もわかっていない。ザックが殺されたことに対して俺たちは動揺して連携が取れていなかった。しかもエレナとココに関しては、戦う目的が前回は仲間を助けるため、今回はあいつを倒すためと明確に違う。意思の強さは、戦いの強さに直結する。前のように簡単にはいかないだろう。
ココがまず〈
尽かさずココが走り出しユウトへ急接近する中、メロが〈
俺を助けた時と同様の半透明の紫の手がココへ伸びる。それに身体を掴まれることなくココはヒョイっと身軽に手のひらに乗ると、バネの容量で後ろへと下がって行き、同時にエレナの〈
ココはメロに回復されつつ、再び短剣を握り締め、ユウトへ向けて走る。メロも再び魔法陣を展開する。
「Säule des Lichts.....werde ein Speer.....den Feind eliminieren.....〈
メロは魔法を発動する前に、何やらブツブツ言葉を並べている。
(
【あれは詠唱です。本来、詠唱せずとも魔法は行使可能です。詠唱することでどの魔法を使用するか相手にバレやすくなる上に、発動までに時間がかかります。さらに致命的なものが詠唱は喉の負荷が大きく、今のメロ程度の実力であれば、あと2回詠唱するだけで喉が潰れます。それらデメリットを代価として得られるのは、消費魔力を多少抑え、スキルレベルが1上乗せされた魔法となるというものです。彼女なりの貢献のあり方かと】
なるほどな。しかしユウトの体力を観測し続けているが、回復手段が5と仮定して、3人がかりで与えるダメージが4。与えた傷もダメージも回復していってしまう。今は優勢かもしれないが、このままではいずれ魔力を尽きて戦闘不能となるか、疲れたところをユウトに・・・となりかねない。
未だ傷の痛みが癒えない中、俺は剣を抜く。仲間に何かあってからでは遅い。
(
【かしこまりました】
【作成中..........完了】
「お前が殺したザックの剣技…受けてみろ」
2本の剣を前方でクロスさせながら、ユウトに向け走り出す。走りながら剣に魔力を出来るだけ溜め、こちらの射程内に入った瞬間、渾身の[
エレナとココに手こずり俺の接近に気が付かなかったユウトの体を
流石の転生者であるユウトであれ、あの一撃をくらい地面に倒れ込み痛みに悶えている。
「ユウト様をお守りしろッ!」
『はっ!』
しかし簡単にはユウトを討ち取らせてはくれないようだ。敵の増援の騎士連中が30名ほど武器を構え、こちらに突撃してくる。
「アスタを守────」
「────俺に考えがある。お前たち3人は良くやった。下がって俺の勝つところを見ていてくれ」
「わかったアスタ。君を信じる」
ココとメロは不安そうな顔で俺を見つめるが、エレナは一言そう言い残し、2人を連れてゆっくりと歩きながら、後方へと下がっていってくれた。
「てめぇら!来るんじゃねぇ!」
仲間想いなのかなんなのか、ユウトは騎士たちを一括するが、騎士たちは無視し俺へと攻撃を仕掛ける。この騎士達は多少は強いが、この程度の数なら問題にもならない。逆にレベルを上げるいいチャンスだ。
最初に俺に剣を振った騎士の1人の首を鎧ごと跳ね飛ばし、別の騎士の胸を剣で突き刺し、剣を騎士の胸から抜くことなくそのまま、真後ろの騎士までも串刺しにした。
仲間が3人瞬殺され、他の連中は狼狽えているが、ここでユウトを流すわけにもいかない。〈
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