第22話 世界の真実

これで仲間は7人となった。

正直まだ全然足りないのだが…


とりあえず僕が創り出した鬼人のソールとルナを、他の3人にも紹介をした。



「…という訳で、創造したのがこの2人!赤髪がソール!黄色髪がルナ!」


「2人とも!右からザック、エレナ、ココだ!」



「「3人ともよろしくお願いします」」



「「「こちらこそ」」」



2人の自己紹介もかねて、今まで隠してきた[嫉妬]や[創造]のスキルのことも一通り説明した。特にザックには羨ましがられたが、みんな僕の強化のため積極的にスキルや魔法を使って覚えさせると言ってくれた。


なんて心強いのだろうか。


今日は7人でクエストを受ける為、ギルド酒場に訪れたが、今日はなんだか騒がしい。賑わいを見せないギルドを眺める見物客で溢れかえっている。



「アスタ、ココ、ザック、メロはいるか!」



4人で顔を見合わせたが、ここはリーダーが行くべきだ。とメロからの助言を受け、群衆を押し退け、声のする方向へと向かった。



「はいここに」



姿を現したのは小太りでちょび髭を生やし、黒いスーツを着用している身なりの整った男が、全身を鎧に包む騎士を2人引き連れている。


傲慢な態度で男は僕を見つめている。

正直少しだけ腹が立つ態度だ。



「貴様らが、最近有名なレグルスというパーティーなのだな」



レグルスと登録してまだ間もないはずなのに、もう有名なのか。いやこのご時世に異例の速さで出世する僕たちはいやでも目立つのか。



「そうですけど、何用で?」



「王都に貴様らを招集する。直ちに馬車に乗りたまえ」



やはり態度にムカつくが、スーツについているバッジは守護者アテナ曰く貴族バッジというまもの。おそらく王直属の人間だろう。下手に刺激すると、厄介なことになりそうだ。



「わかりました。一つ。我らは今は4人ではなく7人です。全員一緒でよろしいですね?」



「別にレグルスを招集しろと言われているだけだ。何人でも構わない」



半ば強引に馬車に乗せられると、すぐに出発した。まるで人攫いか何かのようだ。



「王都からの招集など、よっぽどのことだろうか?」



「わからないけど、なんかめんどくさーい」



エレナの言う通り何かあったと考えるが普通だ。ココは相変わらず能天気だな。


みんなで最初は真剣に話し合ってたが、すぐに脱線し、結局王都まで談笑をしていた。



「長旅ご苦労。陛下がお待ちだ。こちらに」



「アスタ様への不敬な態度…殺してもよろしいですか?」



ここまで何とか耐えていたソールは限界を迎え、今にも貴族の男を殺してしまいそうな勢いで拳を握りしめている。



「ソール。気持ちはわかるが落ち着きたまえ。アスタに迷惑をかけたいのか」



「そうだ。エレナの言う通りだ兄貴よ」



なんかいつの間にルナがソールを兄貴と呼んでいることに驚きつつも、とりあえずエレナとルナのおかげで、ソールが殺気を鎮めてくれた。


門の中に通され城の中に入ると、黄金に輝く王冠を被り、遠目から見ても艶々と光り輝いてみえる服を着ており、赤いマントを尻の下にして大きな玉座に座るいかにも王様デスヨー!って感じの人が座っている。もちろん街の人々や周りいる他の貴族や召使いたちよりも身なりはいいのだが、どこかくたびれている様子だ。



「突然の招集に応じてくれたこと。感謝する。知っているとは思うがワタシの名は、バシレウス・レイ・ケーニヒ五世だ」



思わず吹き出しそうになる名前をしているなこの王様は.....危うく僕の大笑いで戦闘が始まるところだった。



「形式的なあいさつは結構だ。具体的な話を」



「貴様!陛下に向かって無礼だぞ!」



その言葉に誰よりも早く反応し、殺気立てたのはやはりソール。感覚だがなにかしら威圧系のスキルを発動している。周りの護衛の騎士たちも強烈な殺気に気がつき、剣や槍をこちらに向けてきた。


だが、事前に守護者アテナにここにいる全員のステータスを探らせたが、ここにいる全員が束になってきても対処はできる。


だから臆することなどない。

下手に出ても、舐められるだけだ。ソールを止めないで様子をみよう。



「良い!武器を収めよ!!」



まさしく鶴の一声だ。腐っても王様は王様だな。と少しだけ感心した。



「我が家臣が失礼を」


「さて君たちを呼んだのは、討伐の依頼だ。知っていると思うが、我が国ウルムは、隣国のマインツと戦争をしている真っ最中だ。軍隊はすでに疲弊しており、突如現れ王都に近づく魔物の対処が難しい。そこで君たち王都に近づく魔物を、一週間の間討伐し続けてほしい。大変なことだとは思うが頼む!一週間守り抜いた暁には、報酬に好きな物をやろう!」



「突如?魔物はかなり減少しているのに、何でここに出現するんですか?」



「ん?なにを.....まぁよい兎に角、湧いているモンスターは魔王の手のものだ」



いないと思っていたが、しっかりと魔王がいるらしい。興味が湧いてきた。


それに魔王の手下なら経験値も美味しいだろう。さらにご褒美をくれるなど断る理由がない。



「構いませんよ。では、出現する魔物の情報を頂けます?」



「用意させよう。我が国一番の宿屋に泊まると良い。一週間無料タダで使ってくれて構わない」



「お気遣いどーも。ではこれで」



王様は話のわかる人だが、周りがうざったいので、足早に出て行った。



「おいアスタ!!」



「なんだザック?」



ザックは少年のような瞳で僕を見つめる。



「俺たちも魔王城の一つや二つ欲しくないか!」



魔王城.....には憧れた事はないが、お城に住んでみたいとは思う。創造もあることだし魔王城を建設するのも良いかもしれない。



「確かに、拠点があるのは良いな・・・」



一軒家は男のロマン。話はどんどん盛り上がり、どんな城を建てるかの話し合いをしながら宿屋に向かうと、ベッドの上にもう資料が置かれていた。さすがに仕事が早い。


だがそれ以上に部屋の広さと豪華さに感動した。受付で一部屋だと聞いた時はおかしいと思ったが、7人でも広すぎるほどの部屋で大変満足。


フカフカのベッドに腰をかけ、資料を片手に机の上に用意された飲み物を飲んでみると懐かしの味だった。

 


「こ、これは!コーヒーだ!!!!!!」



「嗜好品である珈琲がおかわり自由とは…王都もさぞかし肥えているのだな」



顔を見る限りエレナもコーヒーが好きなんだろう。趣味が合う人と付き合ったら楽しいだろうな。とか考え、自身に青春の匂いを感じ照れ臭くなった。



「にっがーい!」



「ココはお子ちゃまだなぁ?」



ペッペと吐き出すココを見て爆笑しているザックだったが、彼も飲むのを躊躇っている様子。だが馬鹿にしてしまったザックも飲まないわけにはいかない。意を決したようで、一気に飲み干した。



「うわなんだこれ苦い!」



「ハハハハッ!ザックもお子ちゃまだなぁ〜??」



「アスタ様!これ美味しいですね!」  



「自分は苦手ですかね…」



「ソールくんと同意見ですぅ・・・」



コーヒーは前世ですごくお世話になっていた記憶がある。ゲームのイベントを周回するためコーヒーを飲みながらオールしたものだ。


そのおかげでカフェイン中毒になったのも今では懐かしい。


今のうち死ぬほど飲んでおこう。



「えっと?半竜ワイバーン大鬼オーガ下等悪魔レッサーデーモン、まれに上位悪魔グレーターデーモンっと。この中で、苦戦しそうなのいる?」



「やっぱ悪魔類じゃなーい?」



「それもあるが、半竜ワイバーンが厄介だと私は思うぞ。飛んでいるから面倒だ」



「ありがとうココ、エレナ!個人的には全て素材として欲しいから、倒したら上手く呼んでくれないか?」



「構わない」

「「御意」」

「おっけー!」

「おう!」

「はーい!」



そして翌日…



「ココ半竜ワイバーンを引きつけてくれ!エレナ右の大鬼オーガを!ソールとルナは、下位悪魔レッサーデーモンの群れは任せたぞ!メロ後ろから全員のサポート!ザック!僕と奥にいる上位悪魔グレーターデーモンをやるぞ!!」



もっと楽勝だと思っていたが、かなりの地獄だった。騎士団でも苦戦を強いられるのも納得する。苦戦する理由はなんと言っても、その数の多さだ。魔物が激減したなんて嘘のようだった。



上位悪魔グレーターデーモンである蛸犬悪魔スキュラという名称の悪魔は上半身は青白い肌に、海藻のようにしか見えない紫髪を垂らし、尖った牙をむぎ出しにした白目という悍ましい女性であり、衣類などは身につけておらず体の曲線がわかる。下半身がタコのような触手が8本生えており、触手の先端には上半身の女性同様の牙が剥き出しの口がそれぞれについている。


攻撃は単調で触手を振り回しているため、ザックと2人で剣で触手を弾きながら前へと進む。


仮にも悪魔である僕には効果は無いが、蛸犬悪魔スキュラは周囲に闇のオーラを常に放っており、近づくだけで気分が悪くなるらしい。ザックを気遣いながらヒットアンドアウェイで大量を削る。



「アスタぁぁ!助けて〜!」



声のする方向へ振り返ると、僕の真後ろを全速力で通り過ぎるココが半竜ワイバーンに追いかけ回されていた。いくら強いとはいえ空中戦に対応できるスキルや魔法は持ち合わせていないらしい。



半竜ワイバーンに何が有効だ?)



【あの半竜ワイバーンは火属性なので水球ウォーターボールが有効です】



「ザックお前を信じる。ココの援護に向かうからあの悪魔を引きつけといてくれ!」



「まかせろ!行ってこいアスタ!」



「おっしゃ!〈水球ウォーターボール〉」



水粒が魔法陣の中心で一つの塊となり、半竜ワイバーンの腹に直撃するも、スキルレベルの問題か、あまり効いている様子がない。



「なら!硬糸だ!」



硬糸を指から半竜ワイバーン目掛けて発射した。飛ばした糸は運良くに半竜ワイバーンの翼に引っかかり絡まって、片翼を制御

できなくなり落下してきた。


すかさず、落ちた半竜ワイバーンの元へ走った。



水斬撃アクアスラッシュ!」



落ちて受けたダメージも相まって、僕の首に目掛けて放った斬撃により、低く弱い声を上げ半竜ワイバーンは絶命した。



「ココ!大丈夫か?」



「ありがとぉ〜アスタぁ〜!」



「すまない!大鬼オーガが多くてとても1人で抑えられない!」



次から次に大変だ。エレナの周りには15体を超える大鬼オーガの死体が転がるも、まだ数十体を超える大鬼オーガがいる。1人で抑え込むのには無理があったようだ。



「わかった待ってろ!ルナ!エレナの助けに入れ!」



「了解!」



ルナは魔法陣から土の矢を無数に飛ばし、下位悪魔レッサーデーモンを蹴散らし、すぐにエレナの元へ駆け寄る。



「ココは、ソールと合流して蛸犬悪魔スキュラを!」



「わかった!」



頭をフル回転させながら、なんとか戦線を保っている状況だ。


このままではまずい。



【熟練度が一定に達したため[思考加速]のレベルが上がりました】



俺が離れたせいでザックが蛸犬悪魔スキュラを相手に苦戦しているようだ。



「メロ!一旦ザックだけをサポートしてやれ!」



「はい!」



僕も戦いながら、辺りを見渡して指示をしていた。



【熟練度が一定に達したため[視覚強化]を獲得しました】



メロのサポートありでも上位悪魔グレーターデーモン相手に苦戦していた。強さはそこそこでもスキル[自動回復]のレベルマックスがとても厄介だ。



「エレナ!大鬼オーガは僕が1人で相手をする!ルナと共にザックたちの援護に入って速やかに、蛸犬悪魔スキュラを討伐してくれ!」



「はっ!」

「わかった!」



「はぁぁぁ!〈狼雷ウルフサンダー〉」


疾風弧斬ウィンド・カッター!!〉



エレナとルナが同時に放った魔法がぶつかり合わさった白雷はくらいを纏った風の斬撃が蛸犬悪魔スキュラの触手の一本を斬り飛ばす。


引き受けたのは良いけれど、大鬼オーガ大鬼オーガで結構大変だ。動きは遅いが一撃が重く、かすっただけで結構体力を削ってくる。


負けていられない。孤立している大鬼オーガの一体に父なる聖剣グラムを放ち両断した。



【経験値が一定に達したため、レベルが上がりました】



倒しても倒してもキリが無い。だが4人はなんとか蛸犬悪魔スキュラを討伐したらしい。



「すまない!ザックとエレナはこっち頼めるか!」



「任せとけ!!」

「わかった」



「ソールとメロは、ルナとココの援護に!」



蛸犬悪魔スキュラの死体まで走りその身体に触れ収納を開始する。



【収納完了まで10秒…5秒…完了しました】


【警告!半竜ワイバーンがこちらにきます】



「危ない!〈魔法盾マジカル・シールド〉」



気を取られている間に、僕目掛けて半竜ワイバーン火吐息ファイヤーブレスを撃ってきた。それをギリギリのところでメロが防いでくれた。



「ありがとう!メロ!」


「全員!こちらに集結!」



一度全員と合流した。



「深傷を負った者はいるか?」



「まだいけるぜ!」

「アスタ様ありがとうございます。自分のまだまだ行けます!」

「こちらも行けます!」

「私もやれるよっ!!」

「まだまだ!」

「私も平気だ」



「よし!全員で中央突破だ!いくぞ!!」



「「「「「「おう!!」」」」」」





「疲れたぁ〜」



「ほんとだな。明日はもっと上手く指示を出せるように今から考えておくよ」



一流の宿屋にタダで飲み物も食べ物も自由にもらえる理由がなんとなくわかった。

まず、戦線にいる騎士はほとんど使い物にならない。



なので実質僕たち7人で敵の軍勢をなんとかしないといけない。

それに報告書にない小鬼ゴブリン闇狼シャドーウルフなんて言うのもいた。


ハードすぎるのだ。





「報告します。あの者たちは、初日にして上位悪魔グレーターデーモンを1匹。下位悪魔レッサーデーモンを15匹。大鬼オーガを39匹。半竜ワイバーンを15匹。その他79匹討伐していました」



「素晴らしいな。これで冒険者ランクが銅のパーティーなどありえない。銀…いや金ランクほどの実力はあるだろう」



「おっしゃる通りでございます」



「このまま根元を解決してくれることを祈ろう…」



「はい」

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