第12話 新たなる試練.....?
【経験値が一定に達したためレベルが10上がりました】
ザックが剣を振り下ろす前にアナウンスが流れた。
そしてザックが剣を振り下ろすと、
おそらく立った状態で体力が切れていたのだろう。だが彼の勇気に、真実を伝え水を差すのも気が引ける。
「ザックやったな!お前が倒したんだ!」
僕は生まれて初めて、優しい嘘をついた。
「ザック!かっこいいよ!!」
「すごいですっ!」
俺に続いて2人もザックを褒め称えた。そしてメロの肩を借り、3人でザックのところへ駆け寄っていった。
【スキルレベルの上昇。及び新たなスキルを獲得しました。詳しくは後ほど】
(ありがとう!)
アテナも空気を読んで情報を伝えるのを後回しにしてくれた。
ほんっと優秀。
【一言。
「なぁ、あの死体を放置するのも問題あるかもだし、僕のスキルで死体を処理しても?」
「そうだなぁ〜!せっかく俺が倒したのに、復活なんかしたらたまったもんじゃない!」
「あら〜?とどめを刺しただけでしょ??4人で倒したんじゃないの??」
ココが鋭い目つきでザックに言い放った。
「そ、そうかもな!」
「私たちの全員で掴んだ勝利です!」
「その通りだぞ!ザック!ココとメロもめっちゃ活躍しただろ!」
「「そうだー!そうだー!」」
片腕を失いながらも明るい雰囲気のココを見て少し安心した。
そして
【収納完了までおよそ60秒………………完了しました】
しっかりと消滅を確認したザックが叫んだ。
「よぉし!帰って祝杯だー!!」
4人は笑いながらブレーメン火山地帯を後にした。
その日はココを冒険者が無償で利用できる病院で治療をしてもらい、とりあえず義手をつけてもらった。僕も骨折をしていたが、魔法で簡単に治してもらえた。
この世界は魔法による発展がめざましい。
純粋に尊敬してしまう。
それからギルド酒場で祝杯をあげた。
ゴブリンの時より3倍近くの金が入り前回のように、使い切ることはなかった。
そして4人で話し合った結果、明日から一ヶ月の間パーティーとしての活動を止めて、それぞれ自由に過ごすこととなった。
「ようアスタぁ〜!」
しかし、ザックたち以外にいる知り合いはおやじくらいなので、活動休止した翌日に僕はザックを呼び出した。
「悪いな。せっかくの休みに」
「俺も暇だったし!」
.....。
とはいえ、集まったからコレをしよう!とか考えておらず、結果的に掲示板に貼り出されていた少し特殊なクエストへ向かった。
クエスト内容は村全体の護衛。
高レベルのモンスターが出る訳ではない上に、報酬も低くランク面倒くさいこのクエストは全く人気がない。だがモンスターが定期的に襲ってくるため、村は藁にもすがる思いで冒険者が来るのを待っているのだ。
僕たちが向かうと、村内ではお祭り騒ぎ。有名人にもなった気分で、村人全員から祝福されながら宿泊場所の小さな民家へと歩いていた。
「いや〜それにしても歓迎がやばいな!」
「本当だよ。どうする?これで僕たちが使えませんでしたーとか判断されたら.....」
「あーあー!アスタはマイナス思考すぎるんだよ!いいじゃねーか!失敗したってやり直せばいいだけの話だろ!」
「そんな簡単に行かないでしょ」
「あのな?生きていればチャンスなんていくらでもあるっつうの!ちょっとやそっとの失敗程度気にしてる方が時間の無駄だぜ!」
ザックの思考がプラスに偏りすぎてて眩しい。
しかし現実はそう甘くない。少しのミスが世界の破滅に繋がるのだから。
「そんなことより!クエストに向かうぞ!」
忙しないザックに導かれるまま、泊まりの荷物を床に散乱させ、身軽の状態で宿を飛び出した。
護衛といっても僕たちが行うのはモンスター退治だけでなく、重荷の運搬の手伝いや畑の手伝いなど多岐にわたる仕事がある。
ザックと雑談を交えつつ、それら仕事を順調にこなしたのだった。ザックと比べ体格的に見劣りする僕は、最初こそ頼りない目で見られていたが、半年間の経験が生き、モンスター退治の迅速さは勝てずとも、それ以外はザックよりも的確に素早く仕事をこなし、特に大きな事件や事故もなく3日にも及ぶ労働は終了した。
しかし次の日からの予定は無い。知り合いもろくにいないし、街を1人で練り歩いて探検をしたりしたが、数日程度でスラム街を除いた街も見終わってしまい、ソロで強いモンスターも倒せる自信がなかったので、目的もなく1人でエッセン山岳にあるヘルネ洞窟向かった。
洞窟の中は光る水晶が多くありとても明るく、簡単に進むことができた。モンスターっぽいのがちょいちょい襲ってくるけど大したことは無い。
【もうそろそろ説明をしてもよろしいですね?】
痺れを切らしたように、数日ぶりにアテナの音声が頭の中で鳴り響く。
(あ、忘れてた。戦闘中にも入手したりしてたからそれも含めて詳しく説明お願いします〜)
【はい。まず戦闘中にスキル[硬糸」を入手しました。これは鉄と同等の強化をもつ細い糸を噴射する能力です】
【そしてスキル[加速][苦痛耐性][異空間]のレベルが上昇しました】
【
【そしてレベルが40となったことで新たにスキル[怠惰]を獲得しました。怠惰の説明をしますか?】
(お願い!)
【スキル[怠惰]とは、アルティメットスキルで、無条件でスキルおよび魔法に経験値を、微量付与し続けます。それにより使用をしなくてもスキルや魔法のレベルを上げることが可能になりました】
さすがアルティメットスキル。
便利だし、とても強い。
嫉妬だけでは気がつかなかったが、嫉妬や怠惰といえば七つの大罪の一つだ。
他にも憤怒、強欲、暴食、色欲、傲慢も存在するのであろうか?
あるなら是非とも獲得したい。
しかし…この洞窟は、きれいな場所ではあるがつまらない。
モンスターは弱いし。時折落ちている鉄鉱石などの鉱物やモンスターの死体を異空間に収納すること以外にすることがない。
一時間ほど歩き回ってが、これと言って面白い事もなく洞窟を出ることにした。
【30メートル先を左です】
出口なんて覚えていなかったが、アテナがカーナビのように出口まで案内してくれた。
(なぁアテナ?欠損した腕なんかを復活させることって可能なの?)
【不可能ではないかと】
(というと?)
【そこを右です。はい。
なんとしてもココの腕を治すために、アテナの言っていた二種類の薬草を探すことにした。しかし薬草なんて専門外もいいところだ。
(どこにあるのそれ?)
【二種類とも目の前にあります】
(え?)
見渡すもそこら中に草が生えていて識別できない…
(これか!)
【違います】
(ならこの赤いやつ!)
【違います】
(これ…?)
【はい。ちなみに
ふむふむ。
一度確認できればこっちのものだ。
あたりを歩き回り、たくさん収穫した。
ひと段落したところで買ってきたパンを背中に装備してある短剣で二つに割り、パンに蜂蜜を塗り、塩漬けされた肉を挟み…サンドイッチの完成だ。
本当はレタスなんかを入れたかったが、この世界にある野菜は、見た目と味が全く違うのだ。例えば見た目はトウモロコシなのだが、食べてみると味が唐辛子だったり…キャベツだと思って食べると、味がゴーヤだったり…
農業をしてい時のおかげでジャガイモもどきやにんじんもどきなんかはわかるのだが…
帰ってから色々買って試そう。
サンドイッチは塩っ辛い肉を蜂蜜が優しく包みとても美味しかった。今度4人でピクニックにでも行きたいものだ。
食事を終えると、ここで特にすることもなかったのでウルム国の隣にあるハノーファーという別の国に行くことにした。
別に行く意味もなかったが、単にヘルネ山岳から一番近いからだ。そこから馬車に乗れば楽に帰れる。
「その人捕まえて!!!」
街の入り口で荷物検査を終えて、街に踏み入れるとすぐにトラブルに遭遇した。
助けて注目を浴びるのも避けたいところではあるが、目の前に走ってきたので、流石に捕まえないのも嫌な奴として注目されそうだ。それなら善人としてのイメージがいいだろう。
刀を抜き、特に構えることなく向かってくる性悪そうな顔の男を刀の峰で足をはらい、先端で頭を叩いた。
盗人から黒い袋を取り返すと獣人の女性に手渡した。
「ありがとうございます…!ありがとうございます…!」
「あ、いえ偶然目の前に走って来たからで…大したことではありませんよ」
なんだか恥ずかしいセリフを言ったきがする。まぁ本当に大したことはないのだが.....この獣人の女性は膝下に崩れ落ち泣きながらお礼を言っている。どうして良いか分からず、オロオロしてしまった。
女性がしばらくして泣き止むと、僕の右手を両手で包み込み上目遣いで口を開いた。
「お礼にうちのお店でお茶をご馳走しますっ!」
「あ、いえ…」
「遠慮しないで下さい!」
道端で腕を無理やり引っ張られ、断りきれずに結局お店に行くことになった。
人間に耳が生えた程度以外の獣人なんてありえない。と前世で思っていたが、人型の獣の姿でも実際に見ると、とても可愛くて全然ありだと思ってしまう。
全身を覆う灰色の毛と三角の耳、そして長い尻尾を見る限り猫の獣人なのだろうか?
「私はニーナと言います。お名前聞いてもよろしいですか?」
「僕はアスタって言います」
「素敵なお名前ですね!アスタ様は、身なりを見る限り冒険者なのですか?」
「呼び捨てでいいですよ?そうですよ。今時珍しいですよね」
「呼び捨てにするなど、とんでもございません!いえ、ご立派だと思います。ちなみにランクは何ですか?」
「
「すごいですね!!」
「ありがとうございます」
そうその通り。
やったね!
そんな感じで会話をしながら歩いていると、
「着きました!こちらです!」
やけに色っぽい看板の色合い。中にいる従業員の露出度の高さ。[愛のまたたび]とか言うふざけた店の名前。
「風俗じゃねーか!!!!」
もっとおしゃれなカフェにでも連れて行ってもらえるものだと思っていた。ニーナさんは、いつかの悪魔の如く微笑む。
「一名様!入りまーす!」
身体中に悪寒が走るが既に背後にも数名の従業員が回り込んでしまい逃げ場道がない.....
僕はまた窮地に立たされた。
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