第8話 上位種
4人で歩く洞窟の中では、緊迫した戦闘が行われていたのだが、それが一変。男女の笑い声が響く。
「「あっはっはっはっは!」」
さっきからずっとこの調子だ。
メロは馬鹿にしないでくれているが、ザックとココは大爆笑している。
あの
レベル1だと、あそこまで弱いのか。
それとも僕にセンスがないのか。
馬鹿にされないためにも帰ったら1人で練習しておこう。調子が狂いながらも、一時間すると最深部についた。
最深部は何本もの古く薄汚れた柱が建っており、まるで神殿跡のような神秘的なところだった。やっと終わったと安堵していたが、探知で何か大きなものを捉えた。
明らかに、普通の
「みんな武器を構えて!」
ココが叫んだ。
俺とほぼ同時に探知した様子を見る限り、ココも探知を持っているのであろうか。
慌ててザックとメロも武器を構えた。
ドスドスと足音を立て柱の後ろから現れたのは、顔こそ
ヌシは膨らんだ腹をさらに膨らませ、洞窟が崩れると思えるほど大きな雄叫びを上げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[義鬼種]
体力 1924
魔力 823
知力 299
攻撃 1043
防御 395
魔法攻撃 99
魔法防御 163
素早さ 291
スキル[怪力Lv1][威圧Lv2]
[自動回復Lv5][逃げ足Lv3]
魔法無し
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ホブゴブリン?)
【
(ほうほう…)
【熟練度が一定に達したため[鑑定]のレベルが上がりました】
このタイミングでか…嬉しいけど今は喜べない。
てか、こいつ強っ!!
「ヴガァァァァァ!!」
そんなことを考えているうちに、
地面へ叩きつける拳を間一髪で
〈
ココの手から閃光が放たれ、激しい光を直視したホブゴブリンは目を押さえて叫んだ。
「アスタ!お前は左足を斬れ!」
つい戦闘に見入ってしまったが、僕も立ち止まっている暇はないようだ。
「わかった!」
咄嗟のザックの指示で、足元に滑り込み左足を斬ったと同時に、ザックも右足を斬っていた。
経験の差というやつか。ザックは右足を切断したのに対して、僕は硬い筋肉に弾かれ浅く傷を負わせる程度で精一杯だ。
しかし
〈
急速にメロの杖の先端に展開された赤い魔法陣から、轟音と共に大きな爆発が放たれる。魔法による追い討ちだ。
(ホブゴブリンの体力は)
【
まだまだ残っている。しかも体力を確認している最中にも徐々に回復していた。おそらくスキル[自動回復]が原因だ。自動回復はおそらくその名の通りだろう。
(スキル自動回復とは?)
【[自動回復]とは、デバフをくらっていない際に毎秒体力を回復するスキル。スキルレベル1の場合は10。スキルレベル最大で100です】
かなり便利なスキルだ。レベル5ならおそらく50ずつ回復するのだろう。
スキルの性質さえわかれば対策もできる。
「メロ!あれになんでもいからデバフ与えられないか?」
「あ、ありますけど.....私の持っている魔法だとそんなに効果ないかもですよ」
「なんでもいいからやってくれ!頼む!」
「ひゃい!」
〈
【魔法[
絶対ではないが、魔法は見て習得できるものらしい。だが試したりするのは後!
ホブゴブリンの動きがほんの少しだけでも鈍くなったところを見ると、しっかりと麻痺をくらっているらしい。メロが後ろから魔法で支援しながら、3人で畳みかけた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
どれだけの時間がたっただろうか。
メロは3人の体力をするため
何度も
僕がしっかり立ち回れていれば攻撃を回避できる場面がかなりあった。連携の取れなさと、自分の弱さに嘆きそうになる。
だがそれでも誰も死なずに追い詰め、ホブゴブリンの体力は残り二割だ。
だがそれに対してこちらも、
【タイガ Lv24体力181/460】
【ココ Lv69 体力313/893】
【ザック Lv37 体力249/631】
3人とも残り約四割ほどしかない。
互いに体力のない中できる作戦は、3人で一気に畳み掛け、反撃の隙を与えずに相手の体力をこちらの体力が無くなる前に無くすことだった。
1ダメージでも相手の体力を削るため、恥を忍んで魔法を撃った。
〈
するとメロよりは弱いが、先ほどとは比べられない威力に変わっていた。好機とばかりにザックは雄叫びをあげ、それに続くように俺とココも声を上げ3人で一心不乱に攻め続けた。残り少しのところで、麻痺のデバフが途切れてしまった。
[
万事休すかと思いきや、鑑定で確認をしても体力が回復するどころかどんどん減少していった。
調べてみると出血をしすぎで、失血というデバフがかかっている。失血は回復手段の無効化と体力が徐々に減少する効果があるらしい。
おそらくこのまま待っていても、残り30秒ほどで死ぬだろう。
だが、これだけ苦労してそんな終わり方も、気に食わないので、とどめを刺すことにした。
一歩一歩近づいて目の前に立ち、血の滲む手で刀を握り締め、そして振り上げた。
「グガァァァァァァァ!!」
最後の抵抗だろう。こちらに向けて拳を振りかざそうとしていた。
「「「いっけーー!!!」」」
3人の声援を受けながら、殴られるよりも早く刀を振り下ろした。その瞬間
【経験値が一定に達したためレベルが上がりました】
【経験値が一定に達したためレベルが上がりました】
【経験値が一定に達したためレベルが上がりました】
【経験値が一定に達したためレベルが上がりました】
【経験値が一定に達したためレベルが上がりました】
【経験値が一定に達したためレベルが上がりました】
うぉ。めっちゃ上がった。
小鬼の進化系を倒すだけでこれだけレベルが上がるとは素晴らしい。
【レベルが30に達したため上限が開放しました】
【スキル[合成]を獲得しました】
【スキル[世界の導き]を獲得しました】
【スキル[並列思考]を獲得しました】
【スキル[名称無し]を獲得しますか?】
なんかアナウンスがすごく多く、強くなった気分だ。
てか、初めて鑑定に質問をされた。
[名称無し]とはなんだろうか?
まぁ、持ってて損はないだろう。
(お願いします?)
【確認できました。スキル[合成]により、スキル[鑑定][世界の導き][並列思考]を消失。新たにスキル[名称無し]を獲得しました】
(えっ、鑑定を失うの無理なんだけど)
同意したことを後悔した。
【安心してください。鑑定の効果は残っています】
今まで無機質な機械のようなアナウンスだったのに、人間味のある突然女性の声に変わった。
(なんだ。安心したわ・・・)
【続けてよろしいですか?】
(あっ、遮ってすいません。どうぞ)
【スキル[創造]のレベルが上昇しました】
【スキル[創造]のレベルが一定に達したため、新たにスキル「異空間」を取得しました】
【スキル[不明]の解析に成功。スキル[嫉妬]を獲得しました】
【スキル[探知]のレベルが上昇しました】
聞きたい事がたくさんある。 しかし聞く前に後ろからドタドタと駆けてきたココに抱きつかれた。
「やったな!」
ザックとメロも駆け寄ってきて、2人とも俺にとびきりの笑顔を見せてくれた。
自分のスキルやステータスの確認なんてあとでもできるので、とりあえず今は勝利した喜びを分かち合うことにする。
帰り道にゴブリンの鼻を、手分けして切り取りながら進んだ。
そして・・・
『乾杯!!!!』
現在みんなでギルドの酒場で祝杯をあげている真っ最中。
テーブルには、たくさんの豪華な料理が並び、4人で奪い合うように貪った。今回のクエストの報酬が思った以上に高く、ひと時の贅沢を楽しめている。
「なぁ〜聞いてくれよ!」
「はいはい」
一時間もすると、女性陣2人は酔い潰れ、ザックも酔っ払って愚痴を聞かされ続けていた。
毒耐性を持っているため、僕は特に酔う事はなかった。
面倒くさいし無視しよ…
そう言えば、今までスキルの効果を調べたこともなかった。
今のうちに把握しておくか…
僕はそう考え、鑑定に語りかけた。
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