第3話 転生そして.....出会い
「しかし、凄いところだな〜」
あの馬鹿悪魔に無理矢理転生させられたが、取り敢えずこの異世界の2日ほど観光を満喫していた。RPGのような世界を想像していたが、思った以上に開発が進んでいるようで、教科書で見たような大正時代の街並みを彷彿とさせるところだ。
思った以上に現実っぽい世界観でがっかりしていたが、バザーのように展開しているお店の商品を覗くと、体に悪そうな水色の液体が入ったガラスの小瓶や、ゼンマイと呼ばれる山菜に似た草や、顔を近づけるだけで鼻腔がピリピリとする明らかに体に害を及ぼしそうな紫色の鳥の羽などが売られている。
最初こそ違和感はなかったが、よく考えると言語が日本語ということには驚きだ。おかげで助かっているのだが。
それはさておき、道行く人も全身を鉄のフルプレートに剣を携えた者。ローブに杖といった魔法使いみたいな者などゲームの世界の人たちみたいだ。車も無く通るのは全て馬車。これらはRPGのようで、少しだけ安心したし嬉しかった。
文句があるとすれば、ケモ耳の美女とか悪魔っ子が見たいけど、人間しかないねぇ。
だが今はそんなことはどうでもいいのだ。
何故なら現在、死を覚悟せざる追えないような窮地に立たされている。
ー腹が減ったー
腹が減ったがお金なんて持っているわけもなく飢えていた。もうこの世界に来て3日も経っているのに何一つ口にしていないのだ。水に関しても汚い川の水を啜っている。
ステーキ.....ラーメン.....寿司.....ポテチ.....ピザ.....唐揚げ.....餃子.....コーヒー.....コーラ.....紅茶.....牛乳.....何でもいいから口にしたい。
魔王になる以前に食料問題で死にそうなので仕方なく、食べ物を恵んでくれそうな優しい人を探して彷徨っていたが.....
「あ、あのすいません」
「なんだよ」
「お金なくて.....食料を恵んでくれませんか?」
「あ?なんだテメェ?お前みたいなカスにやる飯はねぇよ!」
「ひっ.....ごめんなさい」
こんな雰囲気のやりとり何回しているのであろうか。全員怖い。高圧的に来られるとつい萎縮してしまう。この世界には、思いやりとかそういう気持ちがないのだろうか。
餓死するのも時間の問題だ。めげずにやるしかない…
僕は再びあたりを見渡し、通りかかった人の中で何となく目に入った黒いフードを深く被る背の高い人に声をかけてみる。
「あの、食べ物分けてくれませんか」
「銅貨1枚も持っていないのか?」
銅貨ってなんだろうか?
でもない事はわかる。
「はい…すいません…」
「盗賊にでも襲われたか?」
声を聞く感じ女性だろう。低めではあるが優しそうなお姉さんの声だ。意外と好き。
返答に悩んだが、この世界のお金の概念も知らないは怪しすぎるので、僕は首を縦に2回振った。
「この街の治安が悪いのは有名だろうに。世間知らずなんだな君は」
そう言いながらも腰の袋を何やらガサガサさせ何かを取り出す。
「これでいいか?」
「あ、ありがとうございます!!」
フードを深く被った女性は親切にパンと水の入った皮袋をくれた。初めてこっちの世界で人の優しさに触れて泣きそうだった…てか泣いた。
「見たところ頼れる人もいないんだろ?お金を稼ぐためにも冒険者ギルドに行くと良い。戦闘が苦手でも農村の手伝いやら荷物運びなど多岐にわたる仕事があるから、弱そうな君でも何とかなるだろう。悪いな.....本当なら冒険者ギルドまで連れて行ってやりたいが急いでるんだ。強く生きるんだぞ」
その子は微笑み、俺の頭をポンポンと叩くと走り去ってしまった。
名前も聞けずお礼も言えずで少し後悔していたが、過ぎたことは仕方ない。またいつか会った時にしっかりとお礼をしようと思った。
貰ったパンはお世辞にも美味しいとは言えない粗末なものだ。硬いしパサパサしてる。雑草臭さがある癖に味は無い。前世の俺なら間違いなく捨てる。人間は極限状態になると何でもできるというのは本当のようだ。絶対に食いたくないようなパンを口に運ぶ手が止まらない。それどころかまるで高級肉でも食べているかのような、そんな幸福感を生む。水も汚れた川の水を啜っていた時を考えると超おいしい。
本質と外れているがこんな食事をするためにも.....
ーまず仕事を見つけなければいけないー
心に誓った。
「せっかく魔物のいる異世界なんだから、モンスター退治なんかしてみたいよなぁ!かっこよく剣振るったり魔法使ったりして!」
独り言を呟きながら歩いていた。ギルドに着くと、そこは思った通り酒場のようなところだった。だが、思った以上に活気が無かった。
数名いる冒険者らしき人たちはこんな日が明るいうちから樽ジョッキを片手に酒を飲み、疲れたOLっぽい受付の女性も眠そうに大きなあくびをかいている。
とりあえず眠そうな受付のお姉さんに冒険者になれるか聞いてみることにした。
「すいません。冒険者になりたいのですが」
受付のお姉さんはその言葉を聞くと、一瞬驚きそして右頬をかきながら苦笑いをしている。
「このご時世に冒険者ですか?あまりおすすめしないのですが・・・」
なんとなく察してはいたが、おそらく最初に聞いていた通り、魔物の数が減少したせいなのだろう。
「登録だけでもできませんか?」
「まぁ、どうしてもと言うなら構いません」
少し呆れたような顔をしながら受付のお姉さんは、紙を渡してきた。
その紙に名前と年齢など個人情報を書くことで冒険者として登録できるらしい。
名前はタイガ。年齢は16歳。
職業欄っと。
剣士、槍士、弓士、格闘士、魔導士・・・
丸つければ良いのかな??
ん〜やっぱり魔法使いたいよねぇ。
魔導士に丸っと!
よし!
必要項目を書き終わると、僕は受付のお姉さんに紙を渡した。
「はい。確認ができました。では、こちらをどうぞ」
と謎の巻物を渡された。
何も説明がなかったのでそれを凝視しながらなんだこれ?と思っていると
【
突然声が聞こえた。
無機質なまるで機械のような感じだった。
「すくろーる?」
ポカーンとしながら声に出すと、受付のお姉さんが反応して
「はい。そうですが?」
と業務的な笑顔で返してきた。
それと同時に、
【スクロールとは、様々な情報が収められている特殊な紙でそれを使用することにより中に書かれている魔法やスキル習得したりすることが可能です】
とまた無機質な声がどこからともなく聞こえた。
「何か言いました?」
「いえ・・・?」
受付のお姉さんの反応を見る限り聞こえているのは自分だけらしい。いや、少なくとも受付のお姉さんは聴こえてはいないというのが正しいのか?
先ほどから疑問に答えてくれるならと思い。
(この声の正体は?)
頭の中で質問をしてみた。
すると
【スキル[鑑定]によるものです】
返事が来た。
ーそう言えばあの悪魔もスキルがどうとか言ってたなー
説明不足でさらにあの悪魔に対して苛立ちを覚えた。
ん?説明不足どころか、魔物が少ないことと世界が滅びそうってこと以外、この世界のこと何も知らなくね?
まぁいっか。
(鑑定。他のスキルは?)
【[創造 Lv1][苦痛耐性 Lv1]】
そうぞう?くつうたいせい?なんだそれ。
とりあえず鑑定が便利なのは分かった。
こんな便利なスキルだ。活用する以外にない思ったが鑑定も微妙な部分も多かった。
例えばこれだ。
(ステータス?的なものあるなら教えて)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アスカワタイガ ??
体力 ???
魔力 ???
知力 ???
攻撃 ???
防御 ???
魔法攻撃 ???
魔法防御 ???
素早さ ???
スキル[鑑定Lv1][創造Lv1]
[苦痛耐性lv1]
魔法無し
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目の前にゲームのキャラ画面のようなものが浮かび上がってきた。
うん。ほとんどわからない。
分かったのはステータスは8項目あること。あとスキルが3つあること。それだけ。
さらには、他人のステータスを見ようとするとスキルさえ不明になってしまう。
仕方ない。
悩んでもわからないことが多いので、前向きに進んでいくことにしよう。
新たに心に誓い、僕はスクロールを開けた。
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