第2話 魔法を統べる者・後編
「……それは、どういうことですか」
やっと獲物が食いついたと言わんばかりにニヤッとした態度で「取り敢えず状況を整理しよう」と言って灯が立ち上がる。
ティーカップが置かれたままのテーブルの近くにあったソファーに2人は腰掛ける。
「君は本日付けでトウキョウ魔法統制局対策治療課に配属となった。
ここまでは理解できるね」
「いえ、その時点から意味が分からないです。
日本魔法法第◯条『総統制官権限により、魔法能力の適性及び極めて優れた能力を持っていると認められた者は魔法統制局への強制配属が可能である。尚、以上にトウキョウ魔法育成学園の生徒は含まれない』これは総統制官様が定めた法律ですよね」
「あぁ。確かにそのような文言を決めた憶えがあるな」
「憶えじゃありません。見てください。ちゃんとここに定められています」
手元にある端末に表示させ、さらに魔法で文字を浮かび上がらせて目の前で見せる。
「すまんすまん。からかいすぎた。
200年も生きていると、物事があやふやでな」
灯は浮かんでいた文字を横に退けるように手を動かして、いとも簡単に消してしまう。
「それに私はトウキョウ魔法育成学園高等部生徒会に所属しています。急にこのような事態になれば他のメンバーに迷惑が……」
「そのことなら安心しろ。退学になった」
「え???」
予想外の言葉に思考が停止しかけるが、律は直ぐに正気を取り戻した。
灯は学園の理事長もしているし、そもそも総統制官の力を持ってすれば、この程度のことなど容易く出来てしまうのだ。
「何せ、我は理事長でもあるからな。君の情報も把握済みだ。
そういえば……調べている最中、気になる点があったんだが、君はどうやら高等部からの編入生のようだな。
何故、このタイミングなんだ」
灯は興味だけでは無い、明らかな疑いの眼差しで律を見つめる。
「それは、夢を叶える為です。私はトウキョウ魔法研究所の研究員として働きたい。
その1番の近道がトウキョウ魔法育成学園への入学だったので」
「成程。……近道、か」
「はい」
ここに嘘は無い。実際、今でも魔法研究員になる為に勉強をしているのだから。
「──律。残念ながら、現状。その夢は叶わない」
来た時に似た台詞を聞いたが、威圧感に足されたねっとりとした口調がやけに耳に残る。
「既に貴方が存在するからという理由なら聞き飽きてますが、何ですか」
トップに対する話し方では無いと分かりつつも、引いたら終わりだと思って負けじと律が問いかける。
しかし彼女は動揺する仕草を見せず、ただ持ち上げかけていたティーカップをソーサーに置いた。
そして、両者とも目を合わせながら、落ち着き払った態度で灯は驚きの事実を告げたのだ。
「我々は、既に会っているんだ。こことは違う未来で」
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