第12話 旅の報告

 バイク集会の後、私は一人の男を人気の無い所へ呼び出す。


「おい、山田。旅行は楽しかったか?」


 山田「は、はい。と、とても楽しく……」

 明らかに挙動が怪しくなる。そしてその原因は解っている。


「旅先で小娘にヤられたそうじゃないか?」


 山田「何故それを?しかしアレは……」


「で?」


 山田「小娘の得意分野で勝負しました」

 誰かと争う場合、基本的にうちの隊では相手の得意分野で闘う事にしている。大抵タイマン勝負になる事が多い。


「その結果、その小娘にボコボコにされてそのまま帰ってきた……しかも大金まで奪われた、と?」


 山田「い、いえそれは違……」

 山田は私に怯え切って言葉もはっきり聞こえない。


「言い訳は聞きたく無い。悔しく無いのか?」

 あえて強い口調で、山田をはっきり喋らせる。


 山田「す、凄く強い小娘で手も足も出なくて……」

 山田は泣きそうな顔をしている。


「お前はそれでも男か、情けない!そもそも何故小娘に喧嘩を売った?うちの隊の名前まで出した挙句負けてそのまま?お前にはプライドもないのか」

 流石に怒りが込み上げてくる。普段なら平手打ちしている所だが、外なので踏みとどまり、クールダウンも試みる。


「大まかな報告は受けていた。一応問題は解決しているみたいだが、本人に直接話も聞きたかった」


 山田「心配してくれて、ありがとうございます。しかしあの強さは俺達とは次元が……」


「負けは仕方ないとして、同じ隊の仲間であるお前の金まで奪われたとあってはこちらも黙っていられない。私も出る」


 山田「え?あ、姉御が動かなくても……」


「お前では無理なのはこの会話で解った。相手はどんな小娘だ?

 お前はさほど強いわけではないが、それでも手も足も出ないとは、相手も只者ではなかったんだろう?」


 山田「そ、それが……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る