第306話 アキン・ドーの真実。
「私は、敵を知るために視聴していたテレビという物の、とあるコンテンツに心を囚われてしまったのだよ」
自嘲のようなアシュトーさんの独白は続く。
「それは、『ぷろれす』というコンテンツだった。」
「あんたちょろいな!」
あ、しまった。思わずツッコんでしまった。
アシュトーさんはクウちゃんなんか目じゃないくらいの高次元の存在で、まさに『神』ともいえる存在なのに。
「その日、ブラウン管の中では『りきどうざん』という『ぷろれすらあ』が対戦相手に『からてちょっぷ』という必殺技を繰り出していた」
おお、ツッコんだことに対するお咎めはなしか。良かった。
それにしても、よく語るなあこの人。
「絶対優勢だと思われたその時、敵の「はんそくふぁいと」でりきどうざんは一転してピンチに陥ってしまったのだ。」
なぜオレは過去のプロレス中継の解説を聞かされているのだろうか?
「そこで興奮した私は、思わず目の前にあったコンソールを思いっきり叩いてしまったのだ!」
そのコンソールは、闇の勢力が時空間に干渉してくるポータル装置に干渉する対抗手段として実戦投入を控えた装置であり、それをアシュトーさんが思いっきり叩いてしまったものだから、誤作動を起こしてしまったんだそうな。
「そして、気が付くと私は『異世界』の地に降り立っていた。どこかから紛れ込んでしまった『おーとさんりん』と共に。」
「‥‥‥と、いうことはつまり」
「そうだ。アキン・ドーとは、私のことだ。」
◇ ◇ ◇ ◇
なんということだ。
あの、正体不明の人物の正体は、なんとクウちゃんの上司であるアシュトー司令官さんであったとは。
司令官さんは、プロレスを見て興奮して指令室のコンソールを叩い誤作動させてしまい、オレと同じくあの異世界の惑星、デパテラエンスに転移させられた。
実はその時点ですでに闇の勢力は異世界の惑星デパテラエンスに橋頭保を作り、地球侵攻のために地球とのパスをつないでおり、結果的に司令官さんの転移はその拠点を早期に発見できたというファインプレイに繋がった。
もちろん、たまたまの偶然なのだが、その功績で後に司令官に昇進したのだとか。
さらに話をきくと、そのときアシュトー司令官さんは大阪の街の電気屋に置かれていたテレビを、それを見る街の人たちごと指令室のモニターで俯瞰していたとのことで、その一緒に転移したオート三輪はそのモニターの中に映り込んでいた車体が巻き込まれてしまったものであること。
で、そのオート三輪のレベルを上げて、燃料たるリソースをためると地球と異世界を自在に行き来できたこと。
なお、もともと地球に顕現するために受肉は済ませてあったので依り代は必要なかったことや、その時巻き込まれたオート三輪の持ち主にはちゃんと弁償した事など細かい話まで聞かされた。
ちなみに、『なぜ大阪文化を広めたのか』という疑問に対しては、『タコヤキがマイブームだった時期だった』という返答であった‥‥‥。
まあ、言われてみれば納得できるところは多々ある。
日本の特定の時代から転移した人物にしては、その年代が幅広いと思われていたことも、司令官さんが地球と異世界を頻繁に行き来していたのだと知ればなるほどと腑に落ちる。
現地のトラニャリスさんら複数の女性と関係を持った件についても、すでに受肉していたというのと、愛のある性交がもたらす幸福のクンダリーニ覚醒の波動を広めて闇の勢力のチカラを削ぐために行っていたことらしい。
というのはクウちゃんらに伝えている建前であり、あとで個別に話を聞いたところによると、某ご隠居さんが旅をする番組が放送されて女忍者の入浴シーンとか、某青猫ロボのマンガできゃーのびたさんのえっちというシーンで火が付いたという事をこっそり教えてくれた。
クウちゃんもクウちゃんなら上司も上司だなと思ったのは内緒だ。
ということで、力道山ハプニングからの流れでいったん異世界の闇の勢力の拠点はアシュトー司令官の働きによって壊滅し、惑星デパテラエンスは解放された。
はずだったのだが、地球においては依然闇の勢力が猛威を振るっていた。
世界各国での富の偏在やマイノリティーへの迫害、局所での戦争や地域紛争、宗教テロ。
世界的に行われている子供や女性の誘拐、虐待、人権侵害、命への冒涜。
富を集めるための、『電気』を必要とする生活文化の浸透、洗脳装置の『テレビ』の普及、さらには自発性、協調性、創造性を削いで現実の搾取から目をそらし、若者を腑抜けにするための各種メディアの発展。
地球で着々と勢力を広げていく闇の勢力。
ただし、光の勢力も反撃を試みる。
アシュトー司令官率いる『光の勢力』は、銀河連合地球方面解放軍(
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