第213話 肉祭り。


「あ、なんとかイケそうっすよ~」


 宝箱に取り付いていた美夏さんが声を上げた。


 え? その宝箱は、我らが美剣みけでも手を焼くほどの難解な罠だったはずだが……?



 考えてみれば、美剣は『忍者』だ。『忍者』は確かに罠の解除はできるがそれ専門というわけではない。実際、某線画ダンジョンのゲームなんかではよく罠解除を失敗していた。


 と、いうことは? 罠開け専門の『盗賊』(本人は斥候と言っているが)ならば、難易度の高い罠でも解除可能という事なのだろうか。




「開いたっすよ~! ふう、かなり手ごわい罠っすね~! あやうく引っかかるところだったっすよ!」


 おいおい、怖いことを言うんじゃない。


 それでもすごいな。まだレベルが2とはいえ、やっぱり専門職というものの持つアビリティーってすごいものだ。



「……で、これって何すかねえ。真っ黒でなんかフカフカしてるんすけど?」


「あ、それってトリュフですかね」



 トリュフ? 世界三大珍味とかいう? 




「トリュフって、あのお高い奴だろう? こんなにデカいのか?」


 たしかトリュフってテニスボールよりも少し小さいくらいじゃなかったっけ? バスケットボールくらいあるのだが?!




「にゃー、食べ物なのかにゃ?」


 ああ、食べ物は食べ物なのだが。



 宝箱の脇ではトリュフを持った美夏さんと、それを見るマナミサンで憶測の会話が弾んでいる。まさか同い年女子の初の会話のきっかけが謎トリュフとは。


 というか、確かにトリュフは食べ物なのだが、ここにある宝箱から出た以上は食べてはいけないはずだ。といっても毒とかそういう意味ではない。


 食べる以外の使い道があるという事だ。




「ちょっとそれを貸してもらっていいかな? で、思うところがあるので隣の部屋に移動しましょうか。」


 オレはみんなを促し、隣の玄室、大きなオークがボスとして出た通称ボス部屋に移動した。




「オレの予想が正しければ……。美剣、真奈美、戦闘準備だ。」


「「はい(にゃ)」」




 オレは大きなトリュフを掲げた!



「やっぱりだ!」





 すると、案の定というか、取り巻きのオークどもを引き連れた大オーク、2階層のボスがリポップしてきた!


「美剣、雑魚を頼む。たくさんオーク肉ゲットしよう。真奈美、炎のエンチャントで焼き豚だ!」


「「はい(にゃ)!!」」



 オレが『挑発』でタゲを取って囮となり、その隙に魔物の集団は瞬殺された。


 そのあとには、美剣が倒したオーク達のレアドロップのオーク肉がたくさん。



「宝箱を開けてもらったお礼と、お近づきの印にこのお肉を持ち帰って下さい」


「「「ほえー」」」



 おっと、御園さんの第一声がしまらないセリフになってしまったな。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







 オレ達は陽介君たちのダンジョンチュートリアルを終え、自宅に戻ってきた。


 陽介君たちもお礼を言って帰っていき、探索に入るときには前日に連絡を入れるという事で、とりあえずは当面それでいこうと同意した。



「むこうが慣れてきたら曜日で潜る日を分けるとかした方がいいかもしれませんね?」


「どうしてにゃ?」



「だって、愛し合ってる真っ最中に他の人が入ってきたら嫌でしょう?」


「たしかに嫌だニャ」


「……ま、まあその辺はおいおい決めよう。でもそうだな。しばらくは入口の玄室でのレベルアップになりそうだし。」



 あのあと陽介君たちに最適な狩場として、大声をだせば必ず1匹だけで灰色狼がリポップする最初の玄室がいいんじゃないかということになったのである。



「にゃー、それにしても、あの宝箱を開けられてしまったのはなんか悔しいのニャ。」


「まあまあ、結果的に開けてもらったんだから。気持ちはわかるが、感謝しないとな」



「それはわかってるのにゃ。むー、もっとレベルを上げれば罠の解除もうまくなるかニャ?」


「そうかもしれないな」



「じゃあ、お昼ごはんたべたらダンジョンに行って、あの大豚野郎をシバキ倒すのニャ!」


「はいはい、お昼はなんにします?」



「ちゃーしゅーめんがいいのニャ」




 先ほどの大量のオーク肉の中に、なんとチャーシューも数個ドロップしてたので、それは陽介君たちと折半という事で持ち帰ったのである。



「じゃあ、緋外地鶏ダレのラーメンにしますね」


「わーいなのにゃ」



 スーパーで買った地元の日本三大地鶏スープのラーメンにドロップしたチャーシューは良くマッチして、思いがけなく充実した昼ご飯を食べることが出来た。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「おなかが苦しいのニャ」


「3杯も食べるからですよ?」


「ラーメンをすする猫というのもなかなか見ることはないだろうな」



 昼食を摂り終わったのち、午前の話の通りオレ達は2階層のボス部屋へ。


 ひたすらトリュフを掲げて大オークと取り巻きたちを倒していく。



「そういえば、オレもスキルを得たのをすっかり忘れていたな」


「どんなスキルなんですか?」



「盾に関する奴だな。なんというか、実際の盾の表面積よりも大きな範囲を守れるという感じだな。今はちょうど軽トラの正面と同じくらいの広さまで広げることが出来るが、レベルが上がればもっと広範囲にできそうだ。」


「スキル名とかあるのかにゃ?」



「ああ、物理的じゃなくて、理力で広がる盾だからな。『理力盾フォースシールド』といったところかな。


「「かっこいい(です)(のにゃ)!!」」


 




 

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