第214話 理力盾の検証。


「『理力盾フォースシールド』!」


 スキルの発動と共に、オレの持つ機動隊払い下げのジュラルミン製の盾から淡い光のエフェクトが広がる。

 

 その範囲は直径3mほどだろうか。


 物理的な盾の面積をはるかに超えた防御の光がオレの目の前に広がった。



「ちょっと効果を確認してみたいな。真奈美、軽く刀で切りかかってみてくれ」


「はい! 先輩が美夏九嶋いもうとちゃんと浮気した設定で切りかかりますね!」



「おおーい、怖いんだが!?」




 マナミサンの冗談はともかくとして、通常の刀の攻撃を『理力盾』は見事防御することに成功した。


「じゃあ、今度は魔法を頼む」


「了解です! 嫉妬の炎を巻き散らしますね!」



「もうそういうのはいいから!」



 単体攻撃の『ファイア』もみごと防ぐことに成功し、この理力部分の盾は物理、魔法双方に防御効果を発揮することが検証された。




「よし、次は、盾の裏側からの攻撃が弾かれるかどうかだな。美剣みけ、ボスをリポップさせるから、オレの盾の後ろからボスに何か『投擲』してみてくれ」


「わかったにゃ」  



 もし、後ろからの味方の攻撃が理力盾をすり抜けたりできるのなら、安全に味方をかばったまま遠距離攻撃で相手を完封できる。


 マナミサンがトリュフを掲げ、大オーク達がリポップしてくる。



「いくのにゃ!」


 オレの理力盾の後ろに立った美剣が、大オークに向けてフォークを投擲する!


 


  ガシャーン!




「へ?」


 『理力盾』は、砕け散った!





 オレは慌てて、再度『理力盾』を展開し、大オークの攻撃を防ぐ。


 どうやら、この盾の理力部分は後方からの攻撃にとてももろいようだ。



 その後、全員で無事に敵を殲滅する。



「そうか、盾の後ろから狙撃アタックの目論見はかなわなかったか」


「にゃー、これなら、こっちの攻撃を通すけいとらの『結界』のほうが戦いやすいニャね」


「……美剣ちゃん! それは言っては……!」



「はいはい……。どーせオレは防御も軽トラに負けるし回復も軽トラが持ってるし……。劣化コピーしかない微妙な使えないやつですよーだ」


「ほらー。すねちゃったじゃないですか!」


「ご主人! ごめんにゃ! ご主人は最高ニャよ! ほら、そこはかとないところとかにゃ!」



「そうですよ! 先輩! 先輩はそこはかとなく素敵じゃないですか!」


「どっかで聞いた誉め言葉をありがとう……」




 と、まあオレが落ち込んでばかりいても場の雰囲気が悪くなるだけなので早々に復活し、未来志向の思考回路に戻る。


「この『理力盾』だと、両手持ちの機動隊盾だと微妙だな。片手持ちのバックラーに変更すれば、片手が自由に使えて武器も持てるな」


「じゃあ、明日せんたーにお買い物にいくにゃよ!」


「そうしましょう! 先輩!」




 こうして、オレの機嫌を伺う一人と一匹のやさしさに包まれ? 明日の予定が決定したのであった。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「わーい、お出かけニャ」


 オレ達は朝の早い時間から、晴田市の探索者支援センターに向けて出発した。


 今日の車は軽トラを使用。なので美剣みけも人の姿だ。



「ようやく……焼きたてのマンガ肉を食べられるのニャ……! フフフ……わたしが食らいつくしてくれるにゃー!」


「よかったな」



「はいなのニャ!」


 ようやく人型のままで探索者センターの食堂でアツアツ焼きたてのマンガ肉を食べれるとあって、美剣のテンションが爆上がりだ。


 すでに軽トラの荷台の中で飛び跳ねまわっている。



「美剣ちゃん? 荷台で暴れると危ないですよ?」


「にゃー、少しでもお腹を減らしておくのニャ! 空腹は最高のスパイスなのニャ―!」


「そうか。それなら、ほれ! これで思う存分走り回れるだろ?」



「一気に広くなったニャ!」


 そう、オレはハンドルのコントローラーを操作して荷台の広さを100倍に変更したのだ。










「ところで、九嶋さん達、3人で大丈夫ですかね?」


「ああ、最初の玄室から出ないって言ってたし、無理するような性格でもなさそうだから大丈夫だろう」


 今日、オレ達が出かける前に陽介君から、ダンジョンに入りたいという連絡が来ていたのだ。


 オレ達は出かけるけど、無理をせずに自由に使ってくれと返事をしたところ、最初の玄室でのレベル上げしかしないので心配しなくて大丈夫とのことだった。


 で、そこに軽トラを放置しておくのもなんだかなという事で今日は軽トラでのお出かけと相成ったわけだ。




「これからは、軽トラを地上に出しておくべきかな。」


「そうですね。もしもの話、軽トラさんの荷台で九嶋さん達がコトを始めちゃったらなんだか嫌ですしね」


 たしかに、いくら気心知れた仲とはいえ、いや、気心が知れているからこそ、自分のプライベート領域で他人のプライベートな事情が繰り広げられるのは、なんか気まずいというか嫌なものだ。



「まあ、そういう事はないだろうけど、お互いに疑念の余地は残さない方がいいだろうからな。これから軽トラは地上に置こう。」


「パイプ車庫でも買いますか?」



「うーん、こんなことを言ったらフラグになるかもだけど、そのパイプ車庫にもダンジョンが発生するとかありそうで怖いんだよな~」


「それは……、盛大なフラグですね……。税金だけでかまどかえしちゃいますね」



「かまどをかえす→かまどをひっくり返す→家計が破綻してしまうの意という事だな。晴田県地方の方言だ。」


「先輩? なにを言ってるんですか?」



「気にするな。独り言だ。」




 こうして益体もない会話を繰り返しているうちに、無事に探索者支援センターの駐車場に到着したのであった。










  

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