第205話 隊長ズからの相談②


「よし、次は自衛隊隊長の番だな!」


 今度は自衛隊の隊長からのオハナシか。



「俺からは、鹿爪市の環状ストーンダンジョンの件だ」



 鹿爪市は、丸舘市から車で約1時間の場所にあり、熊岱市とはほぼ反対方向。


 その市には、石がまるで宇宙ロケットのように建てられて丸く並べられている遺跡があり、その建造物が建てられた理由等はいまだ考古学者らが研究中である。今のところ日時計説と何らかの祭祀に使われたという説が有力だとか。


 その遺跡のど真ん中に発生した国有の環状ストーンダンジョン。


 そこは、その立地からして最高深度も15階層以上と目され、出現する魔物も宇宙人的なフォルムの強い個体が多く、自衛隊が攻略に手古摺っているという噂のあるダンジョンである。



「噂は聞いているかと思うが、残念ながらその噂は真実だ。5階層のボスを倒せないまま2年が経過した。話というのは、そこの攻略に協力してもらいたいんだ。報酬は、参加だけで20万、討伐成功したら100万円。参加費の20万円は民間協力員という形の傭兵だな。100万の討伐報酬は懸賞金という形で考えている。どっちも現行法から言ってグレーゾーンなんだが、あんちゃんたちは秘密も守ってくれると信頼しているからな。もちろん、マスコミなんかには非公開の作戦だ。」



 なるほど。秘密の案件か。こちらも秘密を大ごとにしてもらわなかった恩もあるし、日程次第では協力もやぶさかではないな。


 それに、今の軽トラは荷台が広がって兵員輸送もできるし、負傷者の治療もできる。


 まさにうってつけとも思えるので、こちらも日程次第ではというところではあるが参加を了承した。


 マナミサンも頷いているし、美剣みけも同意してくれるだろう。





 隊長ズは、オレとの話を終えると、「「また連絡する!!」」と言って帰って行った。県の調査担当官はとっくに帰っており、残ったのは駐在さん一行だ。



 で、駐在さんからは


「今度、車庫のダンジョンに一緒に潜らせてもらえませんか?」とのことだった。


 というか、立ち入るだけならばさっき駐在さんは調査で立ち入っているわけなのだが?



「理由は後で話しますが、とある事情により、試しにこの軽トラパトカーで、ルンを連れてダンジョンに入ってみたいんです。自動車がダンジョン内で動かなくなることは百も承知なのですが、なんとか試してみたいんです」


 との事であった。



 まあ、詳しい事情は分からないながらも、こっちとしても助手席に座っている謎の

少女への興味も無いわけでもない。


 それに、地元警察署のダンジョン課の頼みだ。受けないわけにはいかないだろうという事で、結局、すべてのお願いを受け入れた形となってその日のあれやこれやはお開きとなったのであった。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








 我が家のダンジョンが『成長』し、その調査が終わった。

 

 調査に同行してきた隊長ズや、ダンジョン課の駐在さんからそれぞれ依頼というか、お願いのようなものをされ、結局全部引き受けることとなった。



「で、どうします? 受けた依頼の中で、私たちの都合だけで動けそうなのは熊岱市の件くらいですけど?」


 うん、確かにそうだ。鹿爪市の方は自衛隊の部隊の作戦実行時に合わせなきゃいけないからもちろんとして、駐在さんの方だって予定のすり合わせくらいは必要だろう。



「そうだな……。まずは成長した我が家のダンジョンの様子を見るか。」


「そうですね。3階層への階段、降りて見たいです。」


「にゃー、わたしはあの宝箱をやっつけたいのにゃー」


 そうだ、美剣みけに言われて思い出したが、おそらく、あの宝箱には1階のテレポーターで飛ばされた宝箱同様に、2階のボスを無限ポップさせるアイテムが入っている可能性が高い。



 1階の大狼でもそれなりの経験値は得られるが、2階の大オークならばもっと効率的にレベリングが出来るだろう。


 といっても、あの宝箱の罠は結構厳しい。


 美剣の罠外しスキルを上げるためにはレベルアップすることが一番の近道だとは思うのだが、効率的なレベリングに必要なアイテムがその宝箱に入っているというもどかしさ。



「よし、3階の様子をちょこっと見て、あとは1階の大狼でレベリングしようか。それで金策もできるしな」


 そうなのだ。ダンジョンが成長したのは望ましいのだが、そのせいで1年間のダンジョン所有税が40万円から210万円にまで跳ね上がってしまった。


 手持ちの魔石等を売却すればどうにか払えるとは思うのだが、手持ち金が底をつくのは避けたい。


 換金率の高い大狼の魔石を大量ゲットして、経験値&お金をゲットするのが現実的なところだろう。



「よし、じゃあダンジョンに行こうか……おっと、スマホに着信だ。誰かな?」


 スマホの着信画面には、「九嶋陽介」の名前が表示されている。



「はい、もしもし」


『もしもし! 武田さん? 先日は本当にありがとうございました!』



「あ、いやいや。妹さんの容態は大丈夫かい?」


『はい! 美夏も無事退院しました! それで、お礼に伺いたいんですけど、武田さんは今日お家にいらっしゃいますか?』



 んー、実はこれからダンジョンに行こうとはしていたんだが、来客となれば仕方がない。


「ええ、大丈夫ですよ。ですけど、そんなわざわざお越しいただかなくても……」


『いえ、ぜひ直接お会いしてお礼を述べさせてください! それでは、今からそちらに向かいますので。あ、詳しい住所をお伺いしてもよろしいですか?』



 陽介君たちなら個人情報の悪用などはしないだろう。


 オレは自宅の住所を教え、ダンジョン行きを中止して陽介君たちの到着を待つのであった。 

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