第204話 隊長ズからの相談①


「「じゃ、俺たちは調査に同行してくるからな!! そのあとでオハナシしようぜ!!」」


「あ、自分も行ってきます。おわったら、自分にもすこし時間をくださいね」


 隊長ズと駐在さんが、県の調査員と共に我が家のダンジョンの中に入っていく。



「あ、わたしはルンちゃんと一緒にここに残りますから!」


 この人は……たしか、駐在所の女警さんで緒方巡査長さんだったか。


 それに、あの助手席にいる娘はルンというのか。


 顔立ちもそうだが、名前まで日本人離れしているな。やっぱり外国人なのかな?




 マナミサンがコーヒーを淹れて緒方さんとルンさんにカップを手渡している。


 ルンと名乗る娘は、なにやら助手席から離れられないようなので、大掛かりなもてなしはできないため、全国チェーンのお菓子屋さんから買ってきた焼き菓子をお盆に入れて車内に差し出す。


「「ありがとうございます!」」



 緒方さんとルンさんがハモッてお礼を言う。どこぞの隊長ズみたいだな。


「はああ~、どうせ中に行っても2時間何もすることないですし、ここでおやつを頂いている方が建設的な時間ですよね~」


「え? 中ではなにもすることないんですか?」



 緒方さんが何やら気になることを口走ったので、おもわず聞き返してしまう。


「あ! えっと、いや、警戒は、しますけど、ね。ゲフンゲフン」



 おっと、なにやら部外秘の事を口走ってしまったご様子。


 まあいい。そこで突っ込んでやらないのが優しさというものだろう。


「警戒って具体的にどんなことをするんですか?」



 おっと、そんな慈悲を持たないマナミサンが死角からの追撃に入ったぞ!


「えっと、ほら、あれですよ。あれ、そうなんですよ。おほほほほ」

 


 うーん、緒方さん、全然ごまかせていなせんよ……





 さすがのマナミサンも引き際を心得たのか、それ以上の追撃はやめてあげたようだ。


 目の前で守秘義務違反をそそのかして降格や転属になられても後味が悪いしな。




 そうして無難な世間話などをしていると、約1時間半ほど経過した所で調査隊の面々が戻ってきた。



「今回、武田さんの地下迷宮は『成長』されたようです。正式な文書は後日送付しますが、今回の成長によって、およそ混在型で深度10層、【脅威度】は2段階上がってDランク、【資産期待値】も2段階上がってDランクといったところですかね。あとは、【成長可能性】は1段階下がってEランクです。」



 ん? 一部聞きなれない言葉が?



「『混在型』ってなんのことですか?」


「ええ。これまでは『迷宮型』で2階層でしたが、3階層以降は『フィールド型』が『混在』しているようなんですよ。だから『混在型』です。



 なるほど。それはわかった。



 もう一つ、気になることが。


「で、売却査定額はどれくらいになりそうですか?」


「そうですね。階層の成長度合いも大きく、資産期待値もDと高めになりましたので、420万円といったところでしょうか?」


 420万円!  


 と、いう事は……


 税金(年間)が210万円かーー!







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「「じゃあ、あんちゃん! すこし話をさせてくれ!!」」


 我が家の成長したダンジョンの査定が終わった後、案の定隊長ズからオハナシがあるそうだ。



「「ところでその後、変わりはないか? ダンジョンは成長したみたいだが? あんちゃんは……」」


 この人達は、軽トラと美剣の件ではオレたちが悪いようにならないように口添えしてくれたようで信用できる。


 なので、変に隠し事をしてまた後で気まずくなるのもなんか嫌だったので、先日の【更なる異質化】にかかわることについてすべてを打ち明けることにした。





 隊長ズは少し驚いていたが、


「「HAHAHA! ますます頼りがいがあるぜ!」」


 と、前向きな反応を示してくれた。まあ、仕事であるため上層部への報告はさせてもらうとは言っているが。



 で、隊長ズからの話の内容だが、機動隊の隊長からは、先日の熊岱市の例のダンジョンの件だった。


 売りに出されていた例のダンジョンだったが、やはりというか、買い手が見つからず、その上あの社長さんの建築会社が倒産して夜逃げしてしまったらしく、直接管理する人がいない放置状態となってしまったらしいのだ。


 なので、できれば買い取って管理をしてもらいたいが、それが出来なくとも、警察からの依頼として、治安維持の観点から定期的に探索して魔物を間引いて欲しいというのだ。



 詳しい現状としては、今は「所有者管理能力なし」という扱いで、正式に所有権の放棄がなされるまでは仮で県の管轄地となっており、探索も県警本部長からの依頼状というものを発行するそうで、入場料は無料。探索で得られた魔石等はすべてこっちの取り分としてもいいのだとか。




 正直破格な美味しい話である。


 本来、国有及びそれに準ずるダンジョンに入場するには、まずは最初にダンジョン評価額の3割を収めて入場権利を得たのち、毎年評価額の3割を収める形の年間パス方式となっており、探索で得られた成果物の売却益はすべて探索者のものとなる(素材売却時の税金8割は除く)。


 もちろん、一般探索者の立ち入りを禁じているダンジョンも多いため、すべての国有ダンジョンに入れるわけではない。


 なお、民間所有ダンジョンの場合にはそのダンジョン所有者の任意にゆだねられるため、その入場料等の形態は各ダンジョンごとに異なる。




 で、その国有に準ずるダンジョンに無料で入場できるうえ、成果物はコチラの物。


 「定期的」にという縛りはつくが、その期間が負担にならない範囲であれば受けない手はないと思われた。



「わかりました。前向きに検討させていただきますので、後程詳細を教えてください」


「おお、よかったぜ! よろしく頼むな!」



 おお、単独で隊長の声を聞くのはなんか新鮮だな。





「よし、次は自衛隊隊長の番だな!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る