第201話 異質化再び。
「『
マナミサンの持つ刀から、一瞬にして焔が立ち上る!
「どうやら、剣に魔法のチカラを付与することが出来るようになったみたいです!」
これはすごい!
まるでアニメの中の魔法剣士じゃないか!
「あと、こんなこともできます!」
マナミサンは、刀身の焔をいったん収めると、今度は氷の雫を刀身に纏わせる!
「火魔法だけじゃなくて、氷属性も使えるようになりました!」
なんと!
火属性のエンチャントだけでも物凄いのに、相反する氷の属性までをも使いこなすなんて!
なんだろう……。回復魔法を覚えて喜んでいたオレが小さく見えてきた……。
「……で、美剣はどんなことが出来るようになったんだ?」
「んー、よくわからないんにゃけど、自由にネコにも人にもなれるようになったみたいニャ」
そう言うと、美剣は瞬く間にネコの姿に戻り、そしてまた人の姿に戻る。
ちなみに、ネコの姿になった時に衣服はすべて脱げているので、今は全裸だ。
「つまり、一瞬で裸になることが出来るニャ」
「いや、確かにそうだけども。」
美剣のおふざけのせいと、これまでもネコになったり人型になったりしていたからよく理解できなかったが、よく考えてみれば、これは自由に変身できるという能力なのではないか?
人語をしゃべり、自由に人の姿に変身する猫。
確かそんな存在がどっかの神話かなにかにいたような……
「キャットシーなのにゃ」
「ケット・シーな。」
「! 大変です! 美剣ちゃん! それ以上変身してはいけません!」
「どうしたんだ?」
「たしか、ケット・シーは8回までしか人の姿になれないはずです! 9回変身すると、もうネコの姿のままでしかいれなくなってしまうらしいのです!」
「にゃー、だいじょうぶみたいにゃよ?」
「……そうなのですか? じゃあ、ケット・シーとは違うのかしら?」
「だからキャットシーにゃ」
「それも違うと思うぞ」
どうやら美剣はスコットランド方面の伝承に出てくるケット・シーのように自由に人の姿に変身できるが、伝承とは違って回数に縛りはないらしい。
「たしか、ケット・シーって本当は魔女なんじゃないかって説もあったな。」
「にゃー! 美剣は魔性の魔女なのニャー!」
「魔法は覚えたか?」
「火は怖いし氷は寒いし無理なのニャ」
「くっ、やはり魔女ではなくネコか……」
「他には何かありますか?」
「そういえば、にゃんか、
「『
そうか、たしか伝承ではケット・シーは「死者の魂を盗む」と信じられていたようだからな。
「盗む」と「操る」ではいささかニュアンスは違えど、アンデッドに有用なのは確かなようだ。
それにしても。
「『
ダンジョン内での突然の地震の後、【異質化】と思われる現象がオレ達の身体に起きたその日は、各々自分の能力を確認した後は時間も遅くなってきていたこともあり、そのまま家に戻り休息とした。
そして次の日、最初の玄室内。
「オレ達の身体が【異質化】したってことは、あの地震の時の、ダンジョンの何かしらの動きに巻き込まれたからだと思うんだ」
「はい。それが妥当ですね。」
あの後調べてみたが、日本中のどの地点でもあれほどの大きな揺れの地震が起きていたという
つまり、あの揺れはこのダンジョンだけで起こったものだったのだろう。
「にゃー、
「そうだ。だけど、よく考えてみると、ちょっと違うのかもしれないって気がしてきた。」
「どういうことニャ?」
「思い出してくれ。美剣が最初に人型になったのは、そもそも美剣自身が【異質化】したのか、それとも、軽トラの【異質化】に巻き込まれて人型になったのかという疑問が出てくる。」
「なるほどです。と、いうことは……」
「ああ、オレ達も、オレ達が異質化したんじゃなくて、軽トラの再異質化に巻き込まれたんじゃないかということだ。」
「たしかに、地震の時は軽トラのすぐそばにいましたから、そう考えることも自然ですね」
「にゃー? ということは、今回もけいとらがなんかパワーアップしたという事かニャ」
「ああ。もしそうなら、オレ達は『軽トラの【異質化】』に巻き込まれた、ってことの方が理解はしやすいと思うんだ。」
「人間を含む生物が【異質化】したって例はいまだ世界中の何処にもありませんからね。『軽トラ』というアイテムが、異質化によって周囲の生物に【異質化】のような不思議な変化を与える能力を持ったというほうが確かにしっくりきます。」
「そうなんだよ」
「だったら、けいとらがパワーあっぷしていにゃか確かめるのにゃ!」
オレは軽トラの運転席に乗りこみ、キーを回してエンジンをかける。
フロントガラスには、
「「あ”ーーーーーーーっ」」
荷台に乗り込んだマナミサンと美剣の叫び声が聞こえる!
「どうした!」
荷台の側面開きの覆いを跳ね上げ、そこに現れた光景は……!
「広いな!」
「そうなのにゃ!」
「この広さなら、十分ここに住めますよ?」
元の広さの数十倍はあろうかという、広くなった荷台スペースが広がっていたのであった。
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