第196話 探索者ポイント。


 民間でのダンジョンの売買。これには、民間同士の売買だけでなく、国所有のダンジョンを民間が買い取るといった事例も存在する。


 その場合は入札制となり、最も高価な額を付けた企業が落札するのだ。


 なんだ、強欲社長も国もやってることは同じじゃないかと思ったことは内緒だ。




 民間がダンジョンを買い取れる条件として、まずは企業や団体の場合。


 まずは従業員数301人以上で『法人格』を有していることと、『ダンジョン所有権取得税』と言われる、1千万円の税を納める事でダンジョン所有の権利が得られる。


 そして、購入しようとするダンジョンの『ダンジョン保全及び攻略計画書』なるものを事前に提出することで、個別のダンジョンの購入交渉が可能になるというものだ。


 もちろん購入後は国の監督指導を受け、毎年の計画書と探索報告書の提出が義務付けられる。




 ちなみに、べらぼうな額の初回取得税だが、この金額が高いのには訳があり、そのダンジョンを危険なく所有、管理し、適切な攻略及び採取を問題なく行える能力があるという客観的事実を担保するためにはそれくらいの税金を納められる財力が必要だという事らしい。なお、初回の税を払った後は、所有しているダンジョンの評価額に応じた毎年の税金を支払う、つまりはオレの家のダンジョンと同じような扱いでいいらしい。初回の投資のが大変という事だ。




 ついで、企業や団体ではない、一般市民がダンジョンを買い取れる条件とは。


 個人で買い取れるダンジョンは、安全管理の観点から【脅威度】がCランク以下のものに限られる。他には『探索者資格』を有していること。企業のような初回税は必要なく、購入と同時に年間税額、つまりダンジョン評価額の5割を納めればよい。


 なお、【資産期待値】や【成長可能性】の要素については、評価額や販売価格に結び付くが、購入する要件には含まれない。



 そしてここからが重要なのだが、探索者支援センターが独自で定める『探索者ポイント』なるものが『一定値以上』で、かつ、『探索者支援センターが認める者』ということだ。


 この『探索者ポイント』なる物。ラノベなどによくあるような「冒険者ランキング」のようなものとは違い、あくまでも探索者センターが探索者の資質、能力、貢献度等を把握するための一定の指針でしかない。


 そのため、その存在は秘匿こそされてはいないが広く周知することもないという事らしい。



 では、個人がダンジョンを購入しようとする場合、自身のポイントの多寡はどうやって知りうるのかというと、探索者センターに「照会依頼書」なるものと手数料千円を支払えば教えてくれるとのこと。



 で、照会してもらったところ、オレもマナミサンも53ポイントだった。

 ポイントの内訳とか、ダンジョン購入が可能になるポイント数とかは公表されてはいないが、所長さん曰く、『捜索に参加して人命救助したので、ポイント数も、センターの承認も問題ない』らしい。



 ポイント数の内訳が気になるところだ。





 ポイントの付与条件とかは明らかにされていないのでその内訳はわからないのだが、気になったオレは家に帰ってからネットで調べてみた。



 調べたのは某掲示板サイト。探索者関連はスレッドの数も多いし、中身の書き込みもとっ散らかっていてなかなか有用な情報に行きつかなかったのだが、PCの操作をマナミサンに変わるとあっという間に情報にたどり着いた。やっぱこういったものは若い方が得意なのだろうか。



 その情報によると、まず一般的なのは『到達階数の和』らしい。これは、『支援センターが把握している到達階数』という意味合いであるらしく、つまりは探索状況を報告していなかったりした場合はカウントされず、また、自己申告だけをうのみにしての把握ではなく、たとえばセンターの買取窓口で売却した魔石や素材の種類で報告の裏付けもとっているらしい。


 そしてこの到達階数の和は、ダンジョンごとにカウントされるようで、例えば1階層しか潜れない実力でも3つのダンジョンに潜っていれば1層×3ダンジョンで3ポイントとなる。



 では、オレたちの場合は、まずは自宅のダンジョン。こちらは魔石や素材を買取には出してはいるが、『探索進捗報告書』なるものを提出したことはない。なので、カウントされていないと思われる。


 次に、陽介君たちの捜索をした熊岱市のダンジョンは、3階層で陽介君たちを発見したという報告がいっているようなので3+2+1で6ポイントとなる。


 で、他の要素だが、魔物のレアドロップ(協会で把握している一般的なもの)を買取に出したときに、種類ごとに2ポイント追加されるとのことで、これは一定程度の実力を持っていないとレアドロップを出せるほどの数を狩れないからということからきた基準らしい。


 で、オレ達の場合は灰色狼の毛皮、スライムのアレ、コボルドのこん棒、オークの肉、齧歯ウサギの牙、大カエルの金鞠の6種類で12ポイント。合計18。


 さらに、遭難者の捜索に任意で参加した場合、無条件で5ポイント追加となりこれで合計23ポイント。


 そして、捜索の結果のみならず何かしらの人命救助に寄与した場合、一人の救助で10ポイント。陽介君たちは3人だったから、これで合計53ポイントとなり、見事計算結果が一致したわけである。


 ほかには、例えば不正だとかトラブルとか、道徳上看過できない行動等では減算されるし、逆に探索を真面目に行っていたりとか、模範となる行動などが評価されての増加もあるらしいが、そこらへんは支援センターの裁量幅が大きく決まった数値を出すのは難しいのだとか。


 で、個人でダンジョンを買うために必要なポイント数だが、これには階層数やら脅威度やらが関わってくるらしい。


 



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