第171話 時空魔法 2→3


「シンジ殿、ルンの無事が分かって安心した。感謝いたします。」


 セヴルが真面目な顔で感謝を述べてくる。他の面々も、ことのほか真面目な顔でオレに頭を下げてきた。



「それで、ずうずうしいお願いではあると思うのですが……」


 うん、セヴルたちの気持ちはわかる。皆まで言わなくても、今後も向こうの世界の妹と会話させてほしいという事だろう。


 もちろん、それを断るほどオレは人でなしではない。



「ああ、もちろんいいですよ。ただ、オレにもやることがるのでいつでもいいというわけにはいきませんけど」


「それはもちろんです! シンジ殿の都合の良い時で構いません!」




 そんな会話をしていると、セヴルの後ろでランスとリンスが何やらひそひそ話をしている。


「ねえ、やっぱり、ランス姉にもあの神託届いたの?(ひそひそ)」


「やっぱり! リンスにも? じゃあ、やっぱそうするしかないよねー(ひそひそ)」


「どうしたんだ? おまえら?」


 空気を読めないソヴルがそんな二人に話しかける。




 話しかけられた二人は、お互い目くばせをして、何かを決意したように二人同時にオレの方を見る。


 なぜか二人とも顔が赤い。いや、ランスの方はなにやら不気味さが内包されている表情だが。


「セヴル兄、これからは、シンジさんと一緒に行動しましょう!」


「あ、ああ。それはいいが。シンジ殿が迷惑でなければだが……」


「だって! 昨日、ウチにもランス姉にも別の『神託』が届いたの! シンジさんのハーレムに入れって! ってことは、ウチらはシンジさんと一緒に行動しなくちゃ、ならないかなって!」


「ぐへへ……ハーレム……。オスと他のメスが致してる間にわたしは残ったほかのメスと……ぐへへへへ」


 やばい、ランスがヤバい! お前はそっちもイケるのか!



「……なあ、その神託とやら、もしかして能天気な女性の声じゃなかったか? 時空の女神とかいう……」


「「そうです!!」」


 やっぱりな!



 あの色基地外自称女神め。登場する女性きゃら全員に神託を下すつもりか?


「……ランスとリンスが、シンジ殿のめかけに……? いや、それは喜ばしいともうのだが、シンジ殿は迷惑ではないのか?」


 っておい! 上の兄! そこは「うちの妹たちは渡さん!」とか言ってお兄ちゃんムーヴするところでしょうが!



「いいんじゃねえの~? こいつらに男が出来れば、おいらもナンパしやすくなるってもんだしね~」


 下の兄! お前もか!



「という事で、不束な妹たちだがよろしくお願いします。シンジ殿。」


「あら? またお仲間が増えたわね! わたくしたちも大歓迎よ! 一緒にシンジ様を攻め落としましょうね!」


 セレス様! 勝手に受け入れるんじゃない!






 何か知らんが、『青銅家族ブロンズ・ファミリア』の妹二人、ランシールとリンシールがオレのハーレムに加わるという事になった。

 

 いや、オレのハーレムって言ったけど、オレが作ったわけじゃないよ? すべてはあの自称女神とか言う痛い人のせいだからね?



「では、これからはシンジ殿と一緒に行動させていただきたいと思うのですが、ご迷惑ではないでしょうか?」


「いや、迷惑とかでは全然ないのだが……。ただ、ダンジョンとか行ったりするし、場合によっては王都の連中と一戦交えなきゃいけなくなるんだが、その辺は大丈夫なのか?」


「それに~、『けいとら』と~、徒歩なら移動のスピードが違うしね~。もし一緒に乗れるんなら~、ボクたちもついていくんだけど~」



「むむむ、そうですな。確かに、自分たちでは『けいとら』の速度についていけませんな」





 そうなのだ。


 通常、軽トラの乗車定員は二人。運転手のオレを除けば助手席の一人のみだ。



 オプションの『キャンピングカー』を使ってあの悪趣味な部屋を出せばどうにか全員乗れないこともないが、ハーレムに入るとかいう女性ならいざ知らず、『青銅家族ブロンズ・ファミリア』の兄二人、セヴラルドとソヴラルドがあの桃色空間で他の兄妹以外の女性たちと一緒に過ごすのはお互い苦痛だろう。




 

 お、そういえば。


 SPスキルポイントが結構たまっていたことを思いだした。


 たしか、今現在は51ポイントだったはず。時空魔法を2→3に上げても21ポイント残るから、非常時のバッファとしては十分だろう。




 よし、『時空魔法』を2→3にレベルアップ!


 これで、なにかしらの『空間』に今までよりも干渉できるようになったはずだ。


 そう思いながら、オプションの『キャンピングカー』を発動させる。






 すると、


「これって、もはやキャンピングカーって呼ぶのはどうなんだ……」



 悪趣味な回るベッドの無駄に広い部屋が出現していた時から思っていたのだが、何をもって『キャンプ』なのだろうか。


 もはや『居住空間』という一点のみの共通点を残すのみである。



 というのも、そこに現れたのは、とても広くて部屋数も多い、おしゃれで現代的なデザイナーズマンションのような構造であったからだ。


 恐るべし時空魔法……。とも思ったが。なにやら見たことがある室内の様子に首をかしげて記憶をたどる。



 あ。




「これって、いかがわしいビデオでよく撮影場所になっていた部屋じゃねえか!」


 あの、怪しい男たちのなかにうら若き女性がまじり、あれやこれやを行う場所のような空間であった……。

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