第140話 オーク肉。


 ダンジョンの探索を再開した。



「ご主人」


「なんだ」



「ご主人も新技覚えたって言ってなかったかにゃ?」


「ああ。けど、お前らのとは違ってかなり地味だぞ」



「見たいのにゃ」


「次の部屋玄室で使ってみてください。私も見たいです!」





 次の玄室の扉を軽トラで押し開ける。


 ここから先は初めて足を踏み入れる場所だ。気を引き締めていかなければ。





 ―なにものかにであった!―




「豚野郎だニャ」


「オーク……だな」


美剣みけちゃん! 貞操帯を!」



「いやいや、そんな展開にはならんから」




――ダンジョン内では、アレをしても妊娠することもなく、快楽が通常のそれより何倍にもなる。

 

 それを悪用した犯罪まがいの行為も横行しているのだが、他にも、その特質を自分の趣味に活かす輩も現れているという。

 


 例えば、中層以降に出現するといわれるサキュバスなどはその最たる例だ。


 サキュバスプレイを求めて延々と探索を繰り返す男性パーティーも少なくない数が存在するという。

 

 ちなみに、エナジードレインはしっかりとされてレベルが下がるし、やりすぎると命の危険まであるというスリリングな快楽でもある。


 それがいいと言い張る一部好事家たちは、もはや通所のソレではイけないようである。


 

 で、その女性バージョン、インキュバスホストツアーというのも存在しているようで、こちらは喪女たちがこぞって参加しているという。

 

 しかし、喪女たちでは悲しいかな戦闘が苦手なものが多く、その大多数はインキュバスのいる中層まで歩を進めることが出来ない。

 

 ならば、そういった喪女やビッチたちはどうするのか。

 

 低層にでる、オークやゴブリンにそれを求めるのだ。


 インキュバスのそれより大きくて太かったり、入れ替わりたち変わり複数に同時に攻められたりと、特定の嗜好を持った人にとっては好評らしい。





「私はごめんですよ? 先輩じゃなきゃ嫌です」


「美剣だって同じだニャー」


「そっちの話題から離れろ!」




 なぜこうなった。


 もともとは、オレの新技の披露の話だったはずだ。


「じゃあ、行くぞ。新しい技、『盾打撃シールドバッシュ』だ!」






 え? 以前も盾で攻撃していなかったかだって?

 

 そう、以前も盾の下端を打ち付けて敵に打撃を加えたりしていた。


 だが、それが進化したというか、同じ攻撃方法でもスキルとしての威力の大幅な上乗せが出せるイメージがわいていたのだ!



 ドシュッ



 オークの1匹は、盾の表面に弾かれ光の粒子となり、もう1匹は盾の下端で打ち据えられて同じく光の粒子となる。



「おー、一撃ですニャ」


 武器でもない、防具である盾での攻撃でここまでの攻撃力が出せるのは、さすがスキルの恩恵なのだと思う。



 しかし、オレは微妙に納得できていない。


 その理由は――





 美剣は忍者、マナミサンは侍。

 

 となったら、オレは『君主ロード』なんだろうなって思ってたよチクショウ! 


 回復魔法が生えてきて剣のスキルも取得するとつい先日まで信じていましたとも。ええ。

 

 これってつまり、オレは通常職の『戦士』ってことなのかー!


 チックショー!!




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






 オレは悲しみに暮れながらもオーク達を盾で倒していった。


 さすがに、10体を超えるオークを盾の技だけで倒すのには時間がかかるので、途中からはマナミサンと美剣みけも参戦。


 で、目の前にはオークのレアドロップ品が転がっている。



「今日の夕食ですね。そのまま焼いた方がいいでしょうか」


「にゃー、分厚く切ってほしいニャー」



 オーク肉である。


 このオーク肉は全国的に有名なオークのレアドロップ品であり、その味の良さから人気は高い。


 探索者支援センターのレストランのほか、卸売りされて一般の食堂でもメニューにその名が刻まれている。


 また、主に探索者センターの売店で売られているオーク肉の角煮の缶詰は酒のつまみによし、おかずによし、お弁当によしと幅広い人気を博し、家族のようにかわいがっているペットに与える人も多い。


  

 ドロップ時に床に転がっているのは不衛生では? という指摘も時々あるが、その心配はご無用。なんと、ちょっと高級なお肉屋さんのように、木の皮のような紙に包まれてドロップするのだ。経木? 硫酸紙? とかいうらしいが詳しくは知らない。




 精肉店で売っているような包装紙に包まれたオーク肉を拾い、軽トラの荷台に『収納』する。


「そういえば、この『収納』って、中での時間経過とかあるのかな?」


「しまったまま忘れて腐っちゃったらいやですね」


「腐ったのは勘弁なのにゃー」



「あとで検証する必要があるな」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 次の玄室でも多数のオークが出現し、肉を目当てに美剣に多く倒してもらう。


「オークのアンデッドも……存在するのかしら」


「ドロップ品が腐った肉なんて嫌にゃ」



「まさにドロップがドリップ肉の汁まみれでぐちゃぐちゃですね」


「アンデッドの事は考えないようにしよう。このダンジョンはオレたちの思考を読んでくるかもしれないぞ」

 


 マナミサンのダジャレ? はスルーしてしまった。


 はたしてオークのアンデッドは……出なかった。今回は。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「このフロア、どれだけの広さがあるんだろうな」


「マッピングの方眼紙、付け足さなきゃ足りないですよね」


 当初の予想としては、某線画のダンジョン系ゲームに寄っていると思ったので20×20マスの広さではないかとも思っていたのだが、このペースだと40×40マスでもどうかというところだ。まあ、きっちりマスが正方形で埋まるという事があるかもわからないのだが。

  

 当初の査定では、このダンジョンは2階層らしいので下に向かう階段がどこかにあるはずなのだがまだ見つかっていない。あくまでも査定は査定なの検証ではないで、結局は1階層しかなかったという事もあるかもしれない。




「次の部屋玄室にいくのにゃー」




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