第139話 拡張スロット?
「えーと、つまりは、
「いや、そう単純じゃない。あくまでも軽トラのそばにあって発光している状態じゃないと猫に戻るぞ。」
「にゃー、美剣も
会話の内容は美剣のお買い物というほのぼのしたものだが、
これと軽トラがセットになれば、ダンジョン内でレベルを上げた探索者が地上でもその能力を発揮することが出来る。
この箱を積んだ軽トラの近くであれば地上で魔法も使えるし、銃弾も跳ね返すようなスーパー兵士が爆誕するのだ。
また、ダンジョンの攻略においても同様である。地上で使用している戦略兵器――あくまでもダンジョン内に持ち込める大きさには限られるが、それを使ってのダンジョン攻略が可能になる。
想定できるのは戦車や装甲車だろうか。軽トラと戦車が並走している姿は想像するとシュールではある。光学スコープなんかも使えるだろう。
なにやらとんでもないダンジョンのドロップ品。
これまで、どの国からも存在が報告されていない、全く新しい魔道具。
オレたちは、それを便宜上、
environment transformation
と名付けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「で、このトランスだが、軽トラの収納に封印しておこうと思う」
「それがいいと思います。なくしたら大変です。」
「美剣の……お買い物の夢はかなわないのにゃ」
美剣はかわいそうだが仕方がない。
軽トラで地上に出たとしても、駐車場まではいいが、美剣が軽トラから離れてお店の中に入れば猫に戻ってしまう。ドライブスルーならありかな?
そのような会話をしながら、美剣の検証で動かしていた軽トラを所定の
ふと、ダッシュボードが気になった。
「どうしたんですか?」
「いや、この空間、なんだか気になって」
そこは、カーラジオの収まるスペースの下側。例えば、カーナビとかCDコンポとかを装着したなら埋まるであろう隙間。
なんとなく、
男の子は、はまるような隙間や穴には同じような大きさのモノをはめてみたいと思う習性があるらしい(暴論)。
衝動的に、トランスをその隙間にはめてみる。すると――
「まぶしいにゃ!」
軽トラ全体が一瞬激しい光を放った。
見ると、ダッシュボードの隙間にはめた
「これは……融合しているのか?」
軽トラ全体が一瞬激しい光を放ち、ダッシュボードの隙間にはめた
「これは……融合……しているのか?」
取り込まれた
「となると、この穴は拡張スロットという事になるのか?」
ダンジョン内で美剣がドロップさせたと思われる
それが、軽トラの拡張スロット? に形状が一致し、ファミコ〇にROMカセットを差すかのようにセットすると取り込まれて融合する。
これでは、まるでこの軽トラのためだけにあるアイテムではないか。
「うーん、この軽トラのみに適合するドロップ品。当然ながら他のダンジョンでは出ないんだろうな……。我が家のダンジョンだけなんかおかしいのかな?」
「いや、他でも似たようなことはありうると思いますよ? 例えばその土地に合った地方特産の特殊ドロップ品とか、それってダンジョンの個性ですよね? あと、海外では軍事転用できる
おお、マナミサンが長文セリフを。脳筋かと思っていたが以外と頭脳派? なんてことを思っていたら脇腹をつねられた。痛い痛い。
「その理屈で行くと、ダンジョンの外でも人の姿でいたいって美剣が思ったから、 こんな能力のドロップ品が出たと考えれば筋は通らないこともないな。」
「でも、お店でのお買い物はできないから中途半端にゃね」
「それは、たぶんネコさんの姿でも愛されたいという気持ちが潜在意識にあったとかではないでしょうかね。あとは、人間の姿だと〇ュールが食べられないとか」
「はうっ! 確かにチュー〇はネコの姿でないと美味しく感じないのにゃ!」
「おまえ、いつの間に人の姿でチュ〇ル食ってたんだよ」
「それは乙女の秘密なのニャ」
まあチュー〇はいいとして。
ということはだ。
これからも、オレたちの意思に沿った有用なドロップ品が出てくる可能性は高いわけか。例えば、軽トラの拡張スロットに入れられるような物とかが。
ちなみに、融合後の軽トラは、トランスの能力をしっかりと発揮していた。
「ところで、じゃあダンジョン内でもスマホが使えるって能力はどこからきたんだろうな?」
「あ、それは美剣もスマホ欲しいって思ってたからだと思うニャ」
「なんで?」
「だって、あの日、ご主人はスマホに入ったまにゃみからの連絡を見て出かけて行ったニャ。美剣も人の姿でスマホ使えたら、ご主人はわたしともっと一緒にいてくれるんじゃないかって思ってたにゃ」
「まあ、美剣ちゃんって健気ですね! 先輩! 美剣ちゃんを愛してあげてください! さあ! 今すぐ! ここで! 美剣ちゃんの拡張スロットに先輩の熱いカートリッジを!」
このあと、めちゃくちゃ……してません。
照れくさかったので家に戻りました……。
あと、マナミサンにはチョップを一撃入れておいた。
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