キレイハキタナイ ―3話

SHIᗺUY∀署に向かった俺は、

ことのあらましを、上長らに報告した。


摘発につながる手がかりをつかんだことを評価されるものと思っていたが、上長らは

なぜかけわしい表情で「処分は追って通達する」と言うばかりだった。

(処分……? どういうことだ……?)


確かに、持ち場を勝手に離れたことは問題だ。

だがそうしなければ、手がかりは得られなかったはずだ。


謹慎を命じられた俺は、自宅で悶々としながら過ごした。

気分が塞ぎこみそうになったので、少しだけ散歩に出ることにした。


ぐるりとまわって戻ってくる途中、自宅周辺に不審な気配があることに気づいた。

曲がり角に二人、向かい側の建物に二人、いずれも俺の家を監視している。

(この監視体制は……)

警察学校で習ったものだ。


背中にゾクリと寒気が走る。

(俺が、警察の監視対象になっているってことなのか……?)

張り込んでいる人物の一人が、路上で立ち尽くしている俺に気づいた。


反射的に、俺は逃げ出した。

(何がどうなってるんだ……!?)

理由はまったく分からないが、俺は追われる立場となったらしい。


職場に理由を問いあわせてみたが、返信はなかった。

同僚からも上長からも、俺は見捨てられたのかもしれない。

(どうしてこんなことに――)


まがりなりにも警察官として、俺は犯罪には一切関わっていない。

口座や携帯番号なども、悪用されないよう気を付けている。

そんな俺が、追われることになった理由があるとすれば。

何者かにとって、都合が悪かったからだろう。


何が正義で、何が悪か。


警察官になる前も、なった後も、深く考えたことはなかった。

だが――警察官でなくなった今、

そのことについて、俺は真剣に考えている。


アートに流行り廃りがあるのと同じように、

正義にも流行り廃りがあるのかもしれない。


世の中の流れを見抜けなかった俺はどうやら、

悪と決めつけられ、社会から振り落とされたようだ。


「……納得できるかよ」

そうつぶやき、俺は反撃の計画を練り始めた。

バロックも印象派も、時代の異端児が始めたものだそうだ。


俺も異端児として、新しい人生を歩もうと思う。

新しいブームは、そこから始まるのだから。

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