EXCLAMTIONS PARADE―第3話

「お兄ちゃんと同じアイデア?」

「ええ。彼は死ぬ前に私たちにこう言ったの。CLEANER PARADEをぶっ潰す。『EXCLAMTIONS PARADE』をやろうって」

「エ、エクスクラメーションズって、ええっと、それって」

「『びっくり』を現わす感嘆符。私たちPROJECT8の作品にもマークがついてるでしょ」

「あ、そう言われれば!」


私は、管理人室の机に置かれた手のひらサイズのハチ公像を見た。

フウカさんがPROJECT8に入って初めて創った作品で、記念として管理人室に飾っているらしい。


その像の側面に、真っ赤な『!』マークが刻まれていた。

このマークこそが、PROJECT8の作品を現わすサインである。


「実は、今日の展示に合わせて、半年前から8人で共同作品を創っていたの」

「えっ、そうだったんですか? ってか、みんなで一緒に??」


フウカさんたちはPROJECT8というチームだが、ひとりひとりは独立したアーティストである。

作品は個別に創り、展示するとき以外は、その作品に誰も触らせようとしない。


「共同で作品を創るなんて、なんか信じられないです」


フウカさんをはじめ、メンバーたちは個性の塊だ。同じアパートに一緒に住み、チームとして活動していること自体、奇跡といえるだろう。


すると、フウカさんは「そりゃそうよね」と笑った。

「私たちだって、一緒に1つの作品を創るなんて思っていなかったもの。だけど、ハレくんが言ったの。――君たちが一緒に作れば、GODハチの作品を超えられるんじゃないかって」

「GODハチの作品を……、あっ!」


GODハチと同じレベルの作品を展示すれば、CLEANER PARADEの最中だとしても、作品を排除されることも、捕まることもない。


「PROJECT8のみんなが1つの作品を創れば……」


GODハチの作品に匹敵する作品を創れるかもしれない。


「ね、びっくりでしょ」

「だから、EXCLAMTIONS PARADE……」


私は戸惑いながらも、ふと、管理人室の壁にかけられた小さな鏡を見た。

そこに映る私は、なぜか笑みを浮かべていた。

こんなにワクワクしたのは、生まれて初めてだ。


「さあ、アメちゃん、今夜、EXCLAMTIONS PARADEをしようって言ってちょうだい」

「私が?」

「当然でしょ。あなたはリーダーなんだから」


その言葉を聞き、私は唾をゴクリと飲み込む。

兄のやりたかったこと。


そして、兄が死んだ後も作品を創り続けたフウカさんたちの思い。

私は、姿勢を正すと、まっすぐフウカさんを見た。


「本当に成功するかどうか分からないけど、みんなに、世界中の人たちに、PROJECT8の作品を見てほしい。――フウカさん、やろう。今夜、EXCLAMTIONS PARADEを!」


私たちはさっそく、パレードの準備を始めることにした。


 ――だけど、私はそのとき、まだ知らなかった。


フウカさんたちがなぜ、そこまでパレードをやろうと思っているのか。

兄はなぜ自殺したのか。


私はパレードの最中に、知ることになる。

兄の死が、自殺ではないことに。


兄は、殺されたのだ。

CLEANER PARADEの先頭に立つ、あの男にーー。



         ―『EXCLAMTIONS PARADE』了―

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