第10話 家族枠に入っているんだな

家族全員で合格祝いのつもりで準備してくれていたのに、期待に応えられなかった。

それでも、残念会と称して皆んな集まってくれたんだから、暗い顔をしているわけにはいかない。


父、母、兄妹全員と、由香里。

僕達にとって由香里は家族枠に入っているんだなと実感したものの、微妙な気持ちになるのは仕方ないんだろうな。


由香里は、プロポーズを断った理由を教えてはくれなかった。

話せるときが来るまで待ってほしいと言って。

それなのに、断る前より、濃密な関係になってしまっているんだから、不思議でしょうがない。

週2回、由香里の部活が休みの水曜日夕方からと土曜日は1日中、長期休みにはお互いの都合が合う限り、激しく思いをぶつけあっているんだから。


由香里が恋人が出来たと報告してきた後も、この関係は途切れなかった。

むしろ、陸上部の部活の関係で薬を使っているから避妊の必要が無いからと、求められるままに交わい続けた。

それなのに、恋人とは絶対に避妊していると嬉しそうに報告してきた時には、本気で悩んだんだ。

でも、快楽に溺れてしまって関係を断ち切ることが出来なかった。


それ以上に悩んだのは、家族全員、僕がプロポーズを断られたのに由香里と『濃密な』関係を持っているのを知りながら、何も言わないことだった。


食事会が終わり、母から、


「由香里ちゃんを送ってきなさい。責任を持って行ってらっしゃいね。」


『責任』って、何だろうか?と思いながら由香里と手を繋ぎ、帰り道を歩き続ける。


「克也、どうかな。慰めてほしければこれからでも私はいいわよ?」


「……………………ごめん、やっはり明日でお願い。」


「そっか、じゃ、明日は何時に寺本さんの所へ行けば良いのかな?」


「9時に迎えに行くから。」


「わかった、明日、寺本さんの用事が終わった後に沙友理さんにどんな風に『慰めて貰った』のか教えてね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る