第9話 お揃いなの!
ピコ〜ン!!
着信あり。
やっと、来た!
携帯電話の画面が光り、克也の名前が表示される。
折りたたみ式の、克也に買ってもらった、最新式の、eメール対応の、携帯電話。
克也と、お揃いなの!
今日、合格発表。
『一緒に見に行きたい!』
と頼んだんだけど、頑なに一人で行くと譲らなかったから、諦めたんだよね。
恐る恐る、メールを開き…………
ん〜、落ちたか〜?
沙友理さんは、『合格は固いわね!』
寺本さんも、『大丈夫じゃろう?』
みんな、合格を信じて、疑わなかったのに。
私も、克也を信じていたから、意外だ。
『早く、帰ってこい!
私が慰めてあげるから?』
途中までメールを打ち込んで、思い直して、削除して、画面を閉じた。
放おっておこう。
そうすれば、克也は、沙友理さんの所へ行くだろう。
彼女なら、克也を、『慰めて』くれるだろうから。
携帯電話の画面を再び開いて、遥香へのメールを打ち込んでいき、送信。
返信の代わりに、通話の着信が来た。
「克也からメール、来た?」
『見たわよ。不合格って、嘘でしょう?』
「暫く、克也の為を思って、彼から何か言ってくるまで放おっておこうと思うんだけど。」
『……………………由香里は、それで、良いの?』
「?何が?」
『お兄ぃを、今引き止めないと、沙友理さんの所へ行っちゃうよ?』
……………………私には、克也を、引き止める資格が、もう無いんだ。
その理由は、遥香も知っている。
遥香に、伝えようとして、やめて、通話を切って画面を閉じた。
突然切ったにも関わらず、遥香からもう一度掛かってくることは、無かった。
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