老猫の連短詩集①

「老猫、七変化」


老猫は しばしば、その姿を変える


スリッパを枕にする――スリッパニャン

みんな大好き――こたつニャン

日向でゴロゴロ――ひなたぼっこニャン

足下で、こちらを見上げ、ニャーと鳴く――かまってニャン

こちらの鼻に、掌をあてて、抗議する――やめてニャン

甘く、高い鳴き声で、子猫のように甘える――こねこニャン

幸せそうに、手をグーパーする――てもみニャン


姿、いろいろ 変化、いろいろ

今日もコロコロ 今日もゴロゴロ

老猫日和 なごやかなり


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「子猫(=老猫)」


朝、おはよう、と言うと

きゃーん、と高く鳴いたり

額を ちょこちょこ、と撫でると

片腕を うにょ~ん とプルプルしながら突き出し 

ぷごぷごと 喉を鳴らして、甘えてくる

老猫にしては 子猫である

いや、老いてますます 子猫である

人間も 老いると子どもに戻ると言うが

猫も 果たしてそうなのだろうか

うーむ

今日も今日とて

甘え上手の 老猫である


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「爪切り」


以前まで 老猫 爪切りを嫌がるので

いつからか 爪切りのあとにおやつをあげたら

いつしか 爪切りをタンスから取り出す音で トタタタ、と 駆け寄ってくるようになり

「にゃー、うぶー、にゃー(切って 早く 切って)」

と 爪切りをおねだりするまでになった

それから 膝の上に乗せて 爪切りをしても

それほど 暴れもせず 大人しく爪を切られてくれる

そして 切り終えると

「うー、うぶー、にゃおん(おやつ 早く ちょーだい)」

と焦れったそうに鳴く

それで おやつをあげると 野性が戻り

ガツガツ ムシャムシャ ベロンベロン

あっという間に食べ尽くし

ごちそうさま と こちらの足にスリスリしてから

寝床か 日向へと 去って行く

うむ 実に猫である

良きかな 良きかな

猫である


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「はらだいこ」


老猫の 寝転がって、幅広くなったお腹を

あそれ ぽんぽん あそれ ぽんぽん

優しく、鳴らすと

老猫 気持ちよさそうに喉を鳴らして、満足げ

なので続けて 鳴らします

あそれ ぽんぽん あそれ ぽんぽん

老猫 くあーっと あくびを一つ

あそれ ぽんぽん あそれ ぽんぽん

老猫 くるん、と 翻る

あそれ ぽんぽん あそれ ぽんぽん

老猫 尻尾をくねくね 体うねうね

あそれ ぽんぽん あそれ ぽんぽん

あそれ ぽんぽん あそれ ………………


ふと 手を止めてみる

…………すると こちらを見つめる、老猫 何故やめるのかと責める眼差し

ならばと私 ぽん ぽん ぽぽん はらだいこを、再開だ

老猫の お腹を優しく、ぽん ぽん ぽぽん はらだいこ

すると老猫 嬉しそう ゴロンゴロン 転がった


あそれ ぽんぽん

それ ぽんぽん

あそれぽんぽん

それ ぽんぽん






(「老猫の連短詩集①」 おわり)

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