短詩の詰め合わせ
「オヤジと車」
生前
オヤジはよく。車に乗っていた
仕事用の車と
自家用の車
仕事用の車はオヤジの生前に売られ
そしてつい昨日
自家用の車も、売り払った
庭がガランとして何もない
――本当にもう、オヤジはいない
オヤジが骨だけになった葬式の時ではなく
オヤジがよく乗っていた車が消えた今
強く。何故か。そう、感じた
人の魂があるかどうか
それは、分からないが
他人との想い出は もしかしたら
物に、宿るのかもしれない。
物を介して
在り続けるのかもしれない。
税金やら何やらかかる車は仕方がないし
すべてを残すわけにもいかないが
よく座っていた椅子や よく着ていた服くらいは
残しておいて、良いかもなと
オヤジと仲が良かったわけではないけれども
それでもそう 思った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――「手揉み」
目が合うと 手を揉む
しゃべりかけると 手を揉む
背中を撫でると 手を揉む
手揉み 手揉み
猫は甘えている気分になると手を揉む
我が家の老猫は年がら年中手を揉んでいる
手揉み 手揉み
こちらを見つめて
手揉み 手揉み
今日も幸せそうでなにより
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ホットコーヒー」
新品の インスタントコーヒーの
蓋を開けて 薫る
豆
湿気のない 乾いた 新鮮な香り
樹脂を想像する穀物の 植物の 自然な油の香り
こぽこぽ
湯気となってたちのぼるコーヒーの香り
湯気の向こうで
秋が深まっていく
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「仕事の朝」
仕事に出かけるとき
ふと 窓際に目をやると
日だまりのなかで ふにゃふにゃと 日向ぼっこする老猫を発見する
私はゾンビのように老猫に寄り
その幸せな温もりに包まれながら
代わりに仕事行ってくれない?、と頼む
だけどいつも 目を細め ふにゃふにゃして イヤだにゃー、と断られて
泣く泣く日だまりを離れて
老猫にお別れをして
仕事へと 向かうのだった……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――「排熱と老猫」
さて ゲームでもしますかな。
PS5を起動させる
と、眠っていた我が家の老猫
すとん、とベッドから降りてきて
PS5の排熱に顔をあてる
どうも排熱が好きなようで
少し 肌寒くなると
PS5でゲームをする度に
我が家の老猫 真夏に人間が扇風機に顔をあてるように
排熱で、温まろうとする
さて、どうするか
試しにどかすも
また、戻る
ふたたびどかすも
やはり、戻る
結局どうしようもないので
放っておく
カチャカチャとゲームをする私の隣で
びろーん、と腹を伸ばしながら 排熱を浴びて眠る、老猫がいる。
幸せの、ひととき。
想い出の……………………ひととき。
(「短詩の詰め合わせ」 終。)
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