秋と錆び、緑と黒

窓辺に 疲れた体を横たえ

目を 瞑って

落ち葉の 焦げたような あの、芳ばしい匂いを 吸う

ああ 湿り気のある緑の匂い

対して吐き出されるのは 体中の血管や細胞にこびりついた

疲労 いや、錆び

それが 口から赤黒い二酸化炭素となって 出て行く 

ドロドロと モワモワと

そしてまた、緑を吸う 黒を吐く

何度も、 何度も、 そうする


こういう時 いつも

昔の 『グリーンマイル』という映画を思い出して

口からどす黒いものを吐き出す

あれが どういう話だったのか

よく 覚えてはいないが

ただ あの 口から悪いものを吐き出すイメージを

私はいつも 借りている


やがて ゾクゾク。と

体が、悦びはじめる

血管 心 精神 さまざまなものにこびりついていた疲労の錆びが

緑の呼吸で 洗い流されて

心が 精神が 緑の空気で浄化されて

死んでいた神経が、ゆっくりとその目を覚ます

そして ああ、ありがとう ありがとう、と

ささやいているのが 感じる


何度も 何度も 緑を吸い 黒を吐く

自分ではなかなか 取れない錆び

助かるなあ 助かるなあ

おいしいなあ ああ、おいしいなあ




――ごちそうさまでした。

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