束縛と爆発

千夏は机に向かって、一冊のノートとにらめっこしていた。


「なぁ千紗」

「どーした千夏」

同じ部活の千紗とは気の置けない仲で、あたしはいつも、大体の相談事とか愚痴をコイツに投げている。今年はクラスも一緒になったので、春花や楓と一緒じゃない時はだいたい千紗と喋っている。

「リア充を爆発させたい」

「最近ずっと言ってんね。でも楓くんと別れた直後は『させる』って言ってたからまだ良いのか。てかお前もう彼氏いるじゃん」

千紗は、深く考えずに話を聞いてくれる。良くも悪くも。そこがコイツの特性で、あたしの性格と合ってると思う。

「なんて言うんだろうなぁ。男の考えていることが、分からない」

あたしの言葉に、千紗はなんだか楽しそうに笑い出した。失礼だな。

「男の方も同じこと思ってると思うよ。千夏はちょっと重すぎるんだよなぁ。まぁ今の彼氏が軽いのもあるんだろうけどさ。軽音だっけ?」

「そ。ボーカル」

「髪型は?」

「ウルフ」

「危ないなぁ」

「危ないってなんだよ」

あたしは今の気持ちをぶつけようと硯を用意する。こういう時は書くのが一番だ。

「ウルフのボーカルなんてろくな奴居ないよ」

「それは偏見が過ぎるって。しかもあたしの彼氏なんだからあんまディスらないでよね」

「でも、実際軽くて困ってるんでしょ?」

「いやまぁそうなんだけどさぁ」

私は今までに慎吾に当たってしまったことを思い出して、墨をグッと握る。硯の上の丸い池は、その端を青黒く染めた。

「だって、アイツ、人気者なんだもん」

「人気者なのはいい事じゃん。彼氏の長所とか個性に嫉妬しだしたらもう末期だよ?」

「うるさいなぁ。まだ付き合って三ヶ月とかなんだけど。末期とか言わないでくんね?」

そう言いながらも、あたしはそろそろ、慎吾との関係の限界を感じていた。

慎吾は、やりたいことをやる、そういうスタンスで、恋愛は二の次みたいな人だ。それに対してあたしは、恋愛体質っていうの? もう恋が全てだからさ。重いって言われちゃうのも仕方ないよね。

実際、あたしの恋愛体質が、ひとつの恋を壊しちゃったことがあるんだ。前の彼氏で、幼馴染みだった楓とも、それで別れた。面白いよね。付き合ってた頃は、二年生も同じクラスじゃないと死んじゃうなんて思ってたのに、別れてからちゃんと同じクラスになって、別の意味で死んじゃいそうだよ。

「付き合ってて楽しいの」

千紗の目線はちゃんと半紙に向いているが、その声は真っ直ぐあたしを刺した。

「どーなんだろ」

「ほら、はい、もうその時点でダメ! 別れな!」

「でも」

「でもじゃないの。いい? 恋愛っていうのは、一緒にいて楽しい、一緒なら頑張れる、そういう人としかしちゃいけないの!」

「リア充ってホントやだ」

「非リアに言わせれば贅沢な悩みだよ」

新しくおろしてきた筆を硯に落とすと、毛先が黒く染まった。あたしは形を整えた筆を半紙の上に移動させて、力強く突いた。太い直線の、かすれている所が、潤いを無くしたあたしの恋愛を表してるみたいだった。

「えー千夏何書いてんの」

筆を置いてこっちに来た千紗は、「普通に上手いんだけど。でも内容がなぁ」とこぼして、また自分の半紙の前に戻っていった。

あたしの目の前にある「リア充爆発しろ」の文字が、あたしの心の中の、後悔とか、自分を責める気持ちとか、そういうものを全部掘り返して、感情が爆発してしまった。なんでだろう。ほんとに。なんでこうなの?

「千夏、どうしたの? え、泣いてる!?」

千紗に言われるまで、あたしは自分が涙を流していることに気が付かなかった。

「香典でも書くの?」

「んなわけねぇだろ」

香典の文字に薄墨を使うのは、涙で墨が薄まってしまったことを表現するためだという説がある。

あたしがつっこむと、千紗は思い出したというように言った。

「感情の爆発は作品にぶつけるのもいいけど、紙に書き出してみるっていうのもいいらしいよ。冷静になれるし、整理できるからね。私はそれで元彼の浮気が分かった時に、感情じゃなくて理論で詰めることに成功した」

「怖ぇよ」

そう言いつつ、あたしは家に帰るなり使っていないノートを引っ張り出し、机の上に広げた。

「うーわ、いきなりなんか書くっつったってな。困るな」

千紗が、「例えば元彼とのこととか。辛いかもだけど、書いたらなんか見つかるかもよ」と言っていたのを思い出した。



「北川千夏さん、私と付き合って欲しい」

あたしが楓に告白されたのは、中学二年生の時だった。こいつが、あたしの一人目の彼氏。

「なんで急にフルネームなんだよ。堅苦しいなバカ」

あたしが面白くて笑ってしまったからムードはぶち壊しだったけど、普通に嬉しかったから私は楓と恋人同士になることにしたの。

思えば、あの時がいちばん楽しかったかもな。

赤子の頃からずっと、いや、赤子の頃の記憶は無いんだけど、とにかくずっと前から友達としてやってきたから、関係が壊れてしまうかもしれない告白というものは勇気のいることだったと思う。でも、その分、すっごく嬉しかったんだ。一歩進もうと思ってくれた楓。あたしには分かる。長い付き合いだから。楓は「絶対にいける」と確信してた。あたしも楓のこと好きだったの、分かりやすくてほんとにバレバレだったもんな。

あたしたちはそんな感じで、なんだろう、必然的に付き合ったんだよね。だからなのか分からないけど、あんまり恋愛って感じがしなかった。特に楓の方は、あたしと付き合ってるのが当たり前みたいな感じでさ。イチャイチャもあんまりしてくれないし。やっぱり、幼馴染の延長線上にある恋愛なんてそんなもんなの? って、あたし、ちょっと寂しかった。

あたしは、それなりに恋愛っぽいことしたいなぁと思ってたんだ。女の子って、だいたいそういう幻想を通ってきてるでしょ? だって初めてできた彼氏だよ? ドキドキしたいじゃん。それなのに楓は全然構ってくれなかった。それに楓は良い奴だからさ、人気なんだよね。他の女の子との関わり方がほんとに酷かった。当時のあたしにとっては。

「楓! クラスの女の子と喋る時は名前で呼ぶなって言ったよね!?」

「別に呼び方は自由だろ。友達なんだから」

「自由じゃない! 次同じことしたら別れるんだからね!」

こんなことはしょっちゅうだった。

幼少期の楓にとってあたしは「守るべき存在」だった。楓、一回もスポーツ習ったことないくせにあたしのこと守ろうとしてさ。調子乗んなって話だよね。なんとなく恋人になることもその、守ってあげたいっていう気持ちに毛が生えたぐらいにしか思っていなかった楓と、恋愛というものに対して今までたくさんの期待を抱いてきて、それが裏切られていくあたし。どっちも合っていると思うしどっちも間違っていると思うから、お互いに責めるのは違うって分かってたんだよね。でもイライラはたまる一方で。どうしたら良かったんだろ。

あたしは日に日に壊れていった。愛されたいっていう欲望があたしの心を蝕んで、それが満たされないことに苦しんで。楓は私のもの。彼氏なんだから。ずっとそばにいて欲しい。付き合うって、そういうことでしょ? 楓のスマホに位置情報アプリを入れたいと言って楓が拒否したのがきっかけで喧嘩になったこともあった。

「見られて困ることがあるんでしょ! 何をしてるの! どこに行ってるの!! ねぇ!!」

あたしが厳しく問いつめると、楓はいつもなら出さない大きな声で反論した。

「違う! やましいことは何もしてない! 私は、こんなに恋人に信用して貰えないのかっていうのが嫌なんだ!!」

「その信用を手に入れるためにアプリを入れるの!」

「アプリが無いと成り立たない信用なら要らない!!」

結局、楓が折れて位置情報のアプリを入れることになったんだけど、それでもやっぱり心配で。馬鹿だよね。位置情報まで共有させといて、「自分の目で見ないと信用出来ない!」みたいなこと、普通に言ってたもんあたし。

友達だった頃に戻れたらなぁ。あたしはたくさん後悔したけど、でも、ずっと一緒にやってきたんだから、きっと釣り合いが取れる? 折り合いがつく? って言うのかな。とにかく、ちょうど良くなる日が来る。それまでだと思って、頑張ったけど、結局あたしが、全部壊しちゃったんだ。

楓は、当時ツイッターと呼ばれていたSNSで、自分が撮った写真を投稿する活動をしていた。楓はカメラが好きで、写真部に所属している。休日に足を運んだ場所とか、デートで行った場所の風景なんかを撮ってた。

でね、その写真アカウント? みたいなやつに、女の人からの絡みがあったの。それが結構多くて、心配になっちゃったの。だって、クラスとか学校なら私がいるからそういう気は起こさないだろうけど、ネットとなると怖いじゃん。あたしは自分の気持ちを優先して、酷いことしちゃったんだ。

「カサブランカっていう子、ちょっと絡み多かったからDM送っといた」

「は? どういうこと? え?」

楓が慌てて自分のツイッターにログインする。

『あたしの彼氏に絡まないで』

『彼女持ちって分かってなかったとは言わせないよ? あたしの写真も上がってたと思うけど?』

『名前で呼ばないで』

『クズ』

『二度と顔を見せるな』

 楓は画面を開いてあたしが送ったメッセージを、見るなり、顔を凍りつかせた。そして、肩を震わせた。その時は、あたし、大したことじゃないと思ってたからさ。今考えるとほんとに酷かったと思うんだけど。楓が叫び出した時はほんとにビックリしちゃったんだ。

「何してくれてんだよお前!! マジでふざけんなほんとだるいまじで」

「だるいって何!? 楓があたしの知らないところで変なことしてるのがいけないんでしょ!? 心配させるようなことしないでよ!」

「変なことじゃない!! 写真は私の人生なんだ!! そもそもユーザー名に苗字もクソもない。私にとってSNSは現実と離れられる唯一の空間なの! 無断で侵入して、その中の人間関係まで壊すなんて! お前がやってるのは心配じゃない! 心の監禁だよ!」

「楓の人生の全てはあたしじゃないの? その人の味方をするの!? ねぇ? 違うなら今すぐ私以外の全てを捨ててよ!!!」

あたしは大粒の涙を流し、膝から崩れ落ちた。

「重い」

「え? そんなの分かってたことでしょ? 捨てられないの? ねぇ!!!」

気づけば楓は泣きながら「別れてくれ」と、悲鳴に近い声で叫んでいた。

恋人でさえなければ、楓は普通に面白いし良い奴だった。恋人っていう段階に進んじゃったから、それを失っちゃうのかもしれない。いや、もう遅いのかな。別れてから数日、あたしはずっと家で泣き叫んでた。

この世に恋愛っていう考えが無ければ、あたしたちは今も仲良しだった。どうしてなの? 誰が恋愛なんてものを生み出したの? 好きになる人ってどうして自分じゃ選べないの? 恋なんてしなければよかった。好きになんてなるんじゃなかった。あたしはずっと後悔してた。

新学期が始まってからはなんとか気持ちを落ち着かせて、楓とも少しは話せるようになってきた。

ただ、二人でいるのはやっぱり気まずい。クラスが一緒で、更に席替えで近くの席になってしまったあたしと楓は、同じことを考えていた。あたしの前の席に座っている、いつも一人でいる塚田さん、つまり春花に目をつけたの。あたしたちは春花を仲介者にして、三人で行動するようになった。春花はちょっとぶっ飛んでいるところはあるけど優しくて面白いから、三人で一緒にいる時は楽しかったし、楓とも前みたいに話すことができるようになった。あたしにも楓にも新しい恋人ができていたっていうのもあって、特にこれといったトラブルも無く夏休み前までの時間を過ごした。ほんとに春花には感謝だよ。

これがね、一度目のリア充、北川千夏の話。

いや、余計暗くなっただけじゃんかよ。何書かせんだバカ。

あたしはもういっその事、薄墨で悲しい恋歌でも書いてやろうかっていうぐらい泣いていた。いつもは「いろいろあったんだよね」で片付けること。思い出してみると、あたしってなんて酷いんだろう。楓には悪いことしちゃったな。今は新しい子と上手くやってるみたいだし、幸せになってるといいな。悔しいけど。あたしは静かにノートを閉じてベッドに入った。気がつけばもう鳥が目覚めだしていた。過去の恋を漁ってたら昼夜逆転なんて笑えねぇな。


同じ夏休みでも、八月の十日ぐらいまでは気が軽い。まだ宿題が終わっていなくても咎められないからね。あたしはニコニコで学校に向かう。今日は文化祭準備の後、その足で慎吾のライブに向かう。

四谷慎吾はあたしの彼氏。好きな食べ物はエビチリ。嫌いな食べ物は漬物。

慎吾は軽音部に所属していて、今日はそのバンドが校外でライブをやるというので、私はわざわざ塾を休んで観に行くことにした。本当は塾はライブが終わってからでも急げば間に合う時間なんだけど、あわよくば慎吾と夕ご飯とか、って思ってる。慎吾のライブを観に行くのは初めてなので、いつもより気合を入れて化粧もしたし、普段は後ろで結ぶだけの髪を少し巻いてみたりなんて。内巻き外巻きどっちがいいかな、すごく悩んで内巻きにした。我ながら可愛く出来た。

「おはよー。今日から少年の相棒のドラゴンベコ、作ってくからよろしくねー」

大道具の皆で朝礼みたいなことをして、それぞれが作業に取り掛かる。あたしはなんかキャラ的に皆をまとめる感じの役割になったので、どの日に何を作るか、誰が何をやるか、とかいう細かいスケジュールを立てながら、自分も色塗りとか、ちょっとした作業には参加する。細かいのはあんまり得意じゃないから、ほんとに色塗りぐらいしかできないけど。

ダンボールに乗せた赤い絵の具がクチャと音を立てる。少し薄めた方がいいかもしれない。あたしは水を取りに流し台に向かった。一番右の蛇口で楓が手を洗っているのを見つけたので、あたしは後ろから声をかける。

「おはよ」

「おぅ、おはよ。元気?」

「なんでよそよそしいんだよ。今日は彼氏のライブなんだ。元気だよ。クソ楽しみ」

「知ってる。あ、春花は、今日は来るの」

「いや今日は来ない」

「そっか」

あたしは水を汲み終えると、教室へ戻った。宙さんと付き合い始めてからちょっとは明るくなったし、春花が居れば今まで通り、他愛も無い話で盛り上がれるようになったけど、そうだよね。二人きりでは話したくないよね。しかも楓はリア充なんだから。

あたしはリア充なのかな。この前春花に「リア充ってなんなんだろう」って聞いたら、「陽キャとか彼氏持ちと同義かな。でも一番大事なのは、文字通りリアルが充実してること」と言われた。私って、充実してるんだろうか。カップに入れた水が映したあたしは、見た目ばかり綺麗にしようと頑張って、沢山努力して、でも逆に中身のスカスカなのが目立ってしまっているように感じる。

もー、考えるのやめよ。絵筆を投げ込んだカップは赤い波紋を作って、既に崩れかけている私の内巻きが虚しく揺れていた。

「今、幸せ?」

突然楓が尋ねてきたから、びっくりした。

「俺は、幸せだよ。お前にしちゃったことを、ちゃんと忘れないで、宙にはしないようにしてるから。あ、あの、ごめん千夏」

なんだよ。コイツばっかり幸せそうでさ。ずるいんだよ。泣きそうになったけど、元彼の前で涙なんて見せられない。あたしはグッとこらえて、「幸せだよ。大丈夫」と言った。女の子の大丈夫は、大丈夫じゃない、だってことも、楓にぶつけたことがあったけど、それはもう忘れられてしまってたみたいで、楓は「なら良かった」と笑顔で教室に戻っていった。

あー、どうして幸せって不平等なんだろうなぁ。

あたしがドラゴンベコの模様を塗っていると、宙さんがあたしの横に腰を下ろした。

「あ、宙さん。小道具はもう終わった?」

宙さんはスーパー天使って感じで、あたしとは全然タイプが違う。馬鹿みたいに優しい。笑顔もわかめスープみたいにやさしい。

「終わりました。あの」

「あ、うん。もう抜けていいよ。そのために楓と同じ担当にしたんだから」

もともと大道具の担当だった楓を、小道具担当の子に言って移籍させてもらったのはあたしだ。終わる時間は担当によって結構違うから、二人一緒に帰れた方がいいかなっていう計らい。あたし良い奴でしょ?

「ありがとう!」

宙さんがパッと顔に花を咲かせた。楓が好きなタイプの人って感じだ。

あたしは、自分の顔とか性格が楓のタイプじゃないことを知ってる。楓は多分、幼馴染みの延長で恋愛っていうものに手を出しちゃったのをずっと後悔してたんだと思う。楓、今のお前はちゃんと恋愛してるから大丈夫だよ。多分。

「楓くんの準備が終わるまで、ちょっと話していいですか?」

宙さんはあたしの顔を優しい目で覗き込んだ。

「いいよ。何の話する?」

「楓くんとは付き合ってたんだよね?」

楓の話か。ていうか、知られてたのか。

「うん、そーだよ。普通に幼馴染だし」

「そーだよね。楓くんから聞いた。あの、さ」

宙さんが珍しく声を曇らせた。空気が沈んでいく。何について聞かれるのか。

「未練とかないんですか」

まさか彼女本人から聞かれるとは思わなかった。

「全然無いよ」

私が言うと、宙さんは、今にも泣き出しそうな声で言った。

「楓くん、いつも気にしてるんです。私の機嫌を。それで、時々ビクビクしてるんです。最近はマシになってきたんですけど。恋人っていう関係って、そうじゃないと思うんです」

ああ、今もそうなのか。あたしは、つい「ごめん」と言ってしまった。宙さんが不思議そうにするので、あたしは慌てて次の言葉を考えた。

「いや、あのね、うん。楓は、なんとかしたいって頑張ってるから。それはほんとだから」

宙さんはしばらく黙って俯いていたが、決心したというようにあたしに顔を向けた。

「うん。私もそう思います。変なこと聞いてごめんね」

楓を変えてしまったのは間違いなく、あたしなんだ。宙さん、ごめんなさい。

「あ、あと」

宙さんが思い出したようにつけ加えた。

「お昼ご飯、さ。私も、混ぜて貰えない、かな。楓くんは友達と居た方が楽なんだろうなって分かってるんだけど、あの、ちょっとだけ、寂しくて。あ、いや、あの、迷惑とかだったら全然」

そういえば、楓はあたしたちとご飯を食べている。アイツが移動してくれれば、あたしが神経すり減らすこともなかったのに。ていうかあたしが移動する選択肢もあったんだけど、なんかそれは楓から逃げてるみたいで嫌だった。

「もちろん。こっちが気づいてあげればよかったね。なんならこれからあたしと春花が二人で食べるよ! それなら宙さんと楓、二人で」

「それは違うの」

宙さんが今までに聞いた事のないぐらい強い言葉で遮った。

「楓くんは、私といるより千夏ちゃんたちと居た方が楽しいんだと思うんです。だから、混ぜてもらえれば十分です」

そんなことないよ、と言おうとしたけど、楓なら、そんなことあるのかもしれないと思った。その時ちょうど楓が帰ってきたので、宙さんとの話はおしまいになった。楓はなんか嫌そうな顔をしてたけど。そりゃ今カノと元カノが喋ってたら嫌か。楓と宙さんは、この後二人でご飯を食べると言って教室を後にした。リア充爆発しろよ。マジで。

さて、あたしもそろそろ終わりにしますかねぇ。乾き切ったドラゴンベコの胴体は、その吸い込まれるような赤が存在感を放っていた。


何気なくインスタを開く。バンドのメンバーでマックフルーリーを食べさせあっているストーリーズが上がっていた。電源ボタンを押して、楽しそうに笑う慎吾の顔が映っていた画面を真っ暗に戻す。画面には、気合を入れて作った内巻きがもうかなり取れてきているあたしの、くすんだ目が映っているだけだった。


慎吾とは付き合う二週間ぐらい前に初めて話した。新年度なのに期待とも不安とも違う表情をしているあたしが心配だったらしい。楓と別れたのがちょうど二年生に上がる前だったから、

「ちなっちゃん、何かあったの? 顔暗いよ?」

あたしもどちらかと言えば陽キャの類だと思うんだけど、種族が違う陽キャだなぁと思った。まぁまぁ苦手なタイプだった。

「千夏って呼んでくれ。ちなっちゃんは呼ばれたことないし流石に痛い!」

「なんだ、思ったより元気そうじゃん。俺は慎吾。よろしく」

こんな会話から始まったあたしたちの関係は、新しいクラスのことや勉強の話から、数学の先生が十時半に昼ごはんを食べるらしいなんていうどうでもいい話まで、色々と喋りながら一緒に駅まで歩くぐらいのものだったが、二週間ほどそれが続いた時、急展開を迎えた。

「え、書道部って大会あるの!?」

「大会っていうか、別に戦うわけじゃないんだけどね。交流会? みたいなやつ。色んな高校の人のやつ見られて楽しいんだよ!」

「そーなんだ。てかすっごい失礼なこと言っていい? 書道部って陰キャの集まりなのかと思ってたわ。千夏みたいなのもいるんだな」

「失礼だなぁ。怒るよ? 意外と陽キャ部活なんだから」

「ごめんごめん」

「軽音部は? 大会とかあるの?」

「うちのバンドは出ないけど、出てるバンドもあるよ。大会に出ないバンドも、ライブとかは普通にやってる」

「え! ライブやってるの! 観に行きたい!」

「夏休みとかに一回あると思うから、もし機会があれば見な。後悔はさせない」

「すげぇ、自信満々だ。なんていうバンドなの?」

「『発展途上国』」

「分かった。覚えとく。慎吾の歌、楽しみにしてる」

「あのさ」

急に目の前が真っ暗になったので、連日の暑さで気を失ったのかと思ってびっくりしてしまった。

慎吾に抱きつかれているのだと気がつくまでには少し時間がかかった。

「千夏。好きだ」

なんでだろう。この人は、見た目も軽そう、中身も軽そうなのに。あたしとは正反対のはずなのに。何故だか、彼の厚い胸板に頭を乗せていると、すごく落ち着いた。いい匂いまでしてくるようだった。

あたしは静かに丁寧に、彼の背中に手を回した。

「いいよ」

「ほんと!? うわマジかめっちゃ嬉しい! やった!やった!!」

「慎吾さぁ、ムードって知ってる?」

あたしは思わず吹き出して、それからは二人でずっと笑っていた。

あたしたちは新松戸駅の改札前で、カップルになってから初めてのお別れをした。

「また明日」

「なんか寂しいな」

「今までは寂しくなかったの?」

「いやいやいや、今までもそりゃあ寂しかったけど!!」

「慎吾はわざとらしいなぁ。じゃ、またね」

「おぅ」

常磐線のホームに向かって歩いていった慎吾に思いっきり手を振って、姿が見えなくなるとあたしは来た道を引き返した。せっかく家から近い高校選んだのに。これじゃ意味ないじゃん。でもなんか、この人とならうまくいきそうだと思った。


慎吾は陽キャだった。それに恋愛経験も豊富だった。

「そんなに知りたいなら別にいいけど。千夏で五人目だよ」

あたしは二人目だから、三人差。何人目かなんて関係ないと、頭では分かっていても、つい聞いてしまって、一人で勝手に傷ついている。その年で五人は多い。

「大丈夫だって。全員ちゃんとキッパリ別れてるし。今は千夏にしか興味無い。だいたい、千夏も別に俺が初めてじゃないんだから大差ないだろ?」

「あれは恋愛と呼べるか微妙だったからなぁ」

「なんだよそれ。遊び?」

「違ぇよ」

私は否定する。全部あたしが悪いんだ。とにかく恋が下手なんだ。楓との関係を恋愛にしきれなかったのも、慎吾を疑っちゃうのも全部あたしのせい。分かってる。分かってるんだよ。慎吾がちゃんと全部話してくれているにもかかわらずどこか疑ってしまっているあたしの方が圧倒的に悪い。でも、やっぱり気にせずには居られないじゃん。

慎吾には女友達が多かった。クラスの女の子ともすごく仲良くするし、部活の人とも。特に同じバンドの子との関係は深かった。

何がつらいって、慎吾は陽キャなのだ。もともと備わっていた属性は変えることが出来ない。例えば慎吾が他の女の子にスキンシップを取っていても、間接キスをしていても、あたしが、やめて欲しいなって思っても、それを伝えたら、重いと思われちゃうんじゃないかって考えたら何も言えなかった。バンドの子と二人で楽しそうにご飯を食べてるストーリーを見た時には、電車の中だったけど涙を流してしまった。バンドのギターの子が慎吾の元カノだと知った時は、バンドをやめて、と言いそうになってしまった。また繰り返すんだ。あたしのせいで、繰り返すんだ。あたしが苦しんでるのはぜんぶ自分のせい。分かってるのに、どうして相手に原因を求めて、縛っちゃうんだろう。楓に言われた「監禁」という言葉が蘇った。違う。違うんだよ。そんなつもりは無かったんだよ。


七月に入ってライブが近くなると、今まではあたしにくれていた時間をバンドに使うようになった。

あたしが行きたいこととかやりたいことを言っても、「お金ない」「バイトある」「練習が」って、全然構ってくれない。それどころか、普通に「バンドの子とライブ行ってくる」なんて言い出す始末。あたしが「女の子?」と聞くと、慎吾はダルそうに「どっちでもいいだろ」とあしらう。どっちでもいいわけないのに。あたしのためには使ってくれない時間を、お金を、慎吾がどこに使ってるのか、それを想像するのも辛かったけど、考えないようにすることなんて出来なかった。辛いことには変わりなくても、教えてくれた方がまだ気が楽だったのに。

慎吾は大きなため息をついて、私を見下ろした。

「千夏は俺の好きなことを、させてくれないの?」

慎吾の好きなことが、全部あたしだったら良かったのに。慎吾の好きな人が、あたし以外いなければ良かったのに。


普段あまり電車に乗らない上に遠出することもない、地図も読めないあたしは、ライブの会場へ向かう途中、新京成線に乗り換えるために降りた新八柱駅で控えめに言って迷子になっていた。

「どこだここ、ええ、ええ」

すると突然あたしを呼ぶ声がした。

「千夏?」

そこには楓と宙が居た。

「千夏もライブ?」

「あ、うん。二人も?」

「うん! 一緒にお昼ご飯食べて、その後はすぐ帰るつもりでいたんだけど、楓くんが『発展途上国』の写真撮りたいからって。ほら、ボーカルの四谷くん、楓くんの友達だから。私は付き添いです!」

宙さんが嬉しそうに言う。

なんだ。楓、ちゃんと幸せじゃん。

「千夏も行くんなら一緒に行く?」

楓があたしに提案する。宙さんが、二人きりが良かった、の目をしてこっちを見ている。

「あ、ううん、大丈夫。あたし買ってくものあるからさ!」

あたし、気を遣えるから。気を遣えるように育っちゃったって言った方がいいかな。

「そっか。じゃあまたライブで」

「うん」

宙さんがあたしに「ありがとう」と口パクしている。あたしは目を細めて、控えめに手を振った。宙さん、可愛いな。

買うものがあると言ってしまった手前、あたしはコンビニに入って慎吾の好物のえびせんの小袋を買った。

なんとかライブ会場にたどり着くと、そこはあたしの知らない世界だった。薄暗い会場内で、たくさんの人が楽しそうに話している。全員が陽キャなんじゃないかっていうレベルだ。あたしはまず、慎吾の姿を探した。たくさんのバンドマンたちに囲まれて楽しそうに話している慎吾の手には、たくさんのえびせんが抱えられていた。あたしはコンビニの袋をそっとカバンにしまうと、奥に居た楓と宙さんの方に足を向けたが、そうだよな。あの二人、カップルなんだもんな。リア充なんだもんな。あたしは会場の端に腰を下ろして、始まるのを待った。

このライブは合同ライブという形式らしい。あたしを見つけてわざわざ話に来てくれた宙さんが教えてくれた。『発展途上国』の出番は三番目だということも。会場にアナウンスが響き渡り、幕が上がった。会場が歓声に包まれる。最初のバンドはボカロ曲を中心に三曲、次のバンドは最近有名になった歌手の曲などを二曲演奏していた。

友達にはよく「ライブとか普通にめっちゃ行ってそうなのに」と言われるけど、ライブのノリ方なんて分からないあたしは、とりあえず周りに合わせて手を挙げたり手拍子をしたり、とにかく心細くて慣れなかった。帰りにデート出来るかもしれないと思ったとはいえ、友達を誰も連れてこないのはさすがに良くなかった。

二番目のバンドの演奏が終わり、遂に慎吾のバンド、『発展途上国』の演奏が始まった。

スポットライトが慎吾を含めた五人のメンバーを照らしている。マイクを握って、見たことの無い服で熱唱している慎吾は、悲しいほどかっこよかった。

二曲目が終わり、次がラストの曲というところで慎吾のMCが入った。

「みんな!盛り上がってますか!」

黄色い歓声とはまさにこの事だ、というように会場が湧く。

「ここに来てくれた全員を、愛してます」

どうして、あたしだけを愛してくれないの? あたしは慎吾に問いたかった。そもそもあたしって慎吾に愛されてるのかな。あたしはまた、涙を流しそうになってしまった。あたし、別に涙腺弱い方じゃないんだけどな。

「それでは聴いてください。俺たち初のオリ曲、『ディべロップ』」

慎吾とギターの女の子が目配せをして、慎吾が「せーの」と言ったのを合図に、最後の曲が始まった。なんだそれ。あたしはもう何も聴きたくなかった。慎吾とギターの女の子が、カップルみたいに見えたから? 慎吾がたくさんの人に愛されてるのを見ちゃったから? 違う、あたし自身が、醜かったからだ。


その後のことは、あまり覚えていない。曲の内容も。慎吾の姿も。


演奏が終わってたくさんの人に囲まれている慎吾を、もう見ていられなくなって、あたしは会場を後にした。

あたし、ほんと最低だ。慎吾が賞賛される度に、拍手される度に、あたしだけのものでいてよと叫びたくなる。慎吾の活躍を見れば見るほど、やめて、と言いたくなる。こんな奴、彼女失格だ。


スマホの電源を入れると、あたしが送った『ライブの後、ご飯とか、』に慎吾から返信が来ていた。

『打ち上げあるから。それより曲どーだった?』たった一行の文字列が、あたしの瞳の中で少しずつ滲んで、消えて無くなった。



一人で食べるご飯は、味がしなかった。強いて言うなら涙の味なのかな。周りの人たちは「え、あの子大丈夫そ?」「ふられたんでねぇの」とかいろいろ言っていたけれど、あたしは何も、気にする余裕は無かった。

夜の新松戸は、たくさんの光が輝いていた。普段は気にならない店の看板、ネオンの光。そんな騒がしい街を抜けると、急に訪れた静けさがあたしを蝕んだ。

あたしにとって大切なことも、とびきり嬉しいことも、悲しいことも、慎吾にとってはきっと、当たり前のことなんだろうな。私にとって初めてのことも、慎吾にとっては今までの経験の複製でしかなくて、慣性で動いてるだけ。複製の愛情を、既製品の愛情を、中古品の愛情を、必死になって追いかけているあたしってなんなんだろう。絶対に手離したくないと必死にビー玉を握る子供みたいだ。 慎吾が流れ作業で与えてくれる少しの愛に必死にしがみつくあたしが虚しかった。きっと前の人たちは、もっと尽くしてくれたんだろうね。もっとノリも良かったんだろうね。寛容だったんだろうね。あたしだけじゃ満足出来なくても仕方ないよね。

慎吾の過去を超えられないのが、どんなに頑張っても一番になれないのが、悔しくて、気づけばあたしは大粒の涙を零していた。

街が滲んでいく。なんだろう、もう、疲れちゃったな。あたしは、あたしは、もうどうしたらいいのか分からなくなった。慎吾、知ってる? 自分にとって一番大切な、その人がいないと生きていけないっていう人が、自分なしでも生きていけるってわかった時、人って死ねるんだよ。あたしは小さな川にかかった橋の上で、揺れる水面を見つめていた。もう、死んじゃおっか。

そんなことを思った時、携帯が震えて、着信音がなっていることに気がついた。誰だろうと思って見てみると、宙さんからだった。インスタの電話。そっか。インスタは交換してたのか。

私が電話に出ると、宙さんの可愛い声がした。


「もしもし、生きてますか」

「別に死なないよ。急にどうしたの」

「ライブ会場、辛そうな顔で出ていったの、見えちゃったんで」

「そっか。見られちゃってたか」

「元彼の今カノなんて関わりたくないかもしれないですけど、話して貰えませんか」

「どうして、心配してくれるの」

「楓くんが、自分のせいで壊しちゃったからあいつには傷ついて欲しくないし、幸せでいて欲しいって言ってました。だから、私に出来ることないかなって。それにしても、なんか、ずるいじゃないですか。楓くんに愛されてて。あー、でも私、今日初めてちゃんと言葉で伝えてもらったんです。好きって」

「マウント取ってくるなよ。でも、楓は、ちゃんとあたしを乗り越えたんだね。本当にごめんなさい。宙さんに辛い思いさせちゃって。ていうか、いい子なんだね。ほんとに。楓が羨ましいわ」

「そんな事ないです。あ、あの、千夏さんにお願いが」

「お願い?」

「友達に、なってくれませんか」

「えーっと、それは何だ、後々毒殺してやろうみたいな?」

「違います。色んな人と仲良くなりたいので」

「うーわ、お前もかよ。楓も慎吾もそういうこと言うんだよな。色んな人と仲良くって。あたしは自分のことだけ見てて欲しいって思うけどなぁ」

「まぁそれも分かります。浮気に発展するかもしれないとか、考え出したらキリがないですもんね。でも、なんだろうな、なんかあった時に助けてくれるとか、楽しく愚痴を言い合えるとか。そういう人が沢山いたら、楽しいじゃないですか」

「そうだね。わかった。そういうことなら。あたしの愚痴大会、参加してくれる?」

「もちろんです」


あたしたちはそこから二時間、通話で愚痴大会をした。いやぁ盛り上がった。最高だった。宙ちゃん、ほんとに可愛すぎ。あと感性がバグ。

「この前楓くんのカメラロール見せてもらったんですけど、もう、ほんとに女だらけなんです。多分写真部の子。被写体に使ってるんでしょうね。だから私も写真部入ってやろうと思って入部届貰ってきたんですよ」って。ぶっ飛んでるにも程がある。でもなんか不思議と、気が合うなって思った。あたしが慎吾のバンドの話をすると、「元カノさんが!? もう、え、千夏ちゃんもバンド入っちゃったらどーですか? なんかできる楽器とかあります? えーと、私、カウベルとハーモニカなら教えられます! あ、あとビブラスラップも!」なんて。軽音部とは。

宙ちゃんは、「恋愛に飲まれるのってほんとに良くないですよ」なんていう話もしてくれた。

「恋愛が全てだと、それがダメになった時に、あの、もう全部終わっちゃうんです。恋愛って、実るのも散るのも割とあっけないですから。特に散るのは。どっちかの気持ちがちょっと離れるとか、もっと魅力的な人が現れるとか、たったそれだけのことで、あ、もうこの人の事好きじゃないんだ。別れようっていう発想に至っちゃうって。まぁ、これは友達に聞いたんですけどね。でも、こんな事言うのもあれですけど、一年生の時、楓くんに彼女がいるって知った時はそりゃあもう。やばかったです。でもね、侵されちゃいけない、それが全てじゃないんだって思ったら、ちょっと楽になりました」

「あたしの前でいちばん話しちゃいけないやつだよそれ」

「あ、ごめんなさい! 不快でしたか?」

「いや別に。もうなんか、今更だけどね」

「それならよかったです。とにかく、世の中のリア充っていうのは、なんか、結構上手くやってると思うんです。ちょうど良く。私に関しては、初めての彼氏なので何が正しいとかよく分かりませんけどね。囚われすぎずに捕らえすぎずにって感じです!」

不思議なことに、宙ちゃんと話してたら、めっちゃ気が楽になったんだよね。これって、楓と別れたから生まれた出会いなんだよな。なんか複雑。

「ありがと。スッキリしたわ」

「よかったです。またクラスでも話しましょう!」

電話を切って空を見上げると、すっかり月が高い位置に上がっていた。あたしは、さっきまでの気分がうそだったみたいに、ニコニコを取り戻して歩き出した。

友達と話してる楽しい時間も、あたしにとっては「リア充」なんだよなぁ。恋愛体質、抜け出せる日が来るのかな。そもそも、抜け出した方がいいものなのかな。とりあえず慎吾には、今度笑って文句を言ってやろう。あたしはバッグから出したえびせんを豪快にかじった。

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