第15話 オーガ(4)
前方から突っ込んできたオーガに対して、リリーは盾を叩きつけた。これは俗に言うシールドバッシュというヤツだろうか? 但し、少し角度をつけて流し気味に行っている。それを待っていたかのようにエレノアも盾を叩きつけた。いいタイミングだ。
「⦅ニードル⦆」
「グガァッ」
今回はまともに決まったな。いつもがこんなに綺麗に攻撃を止められることはないが、足を貫くことに成功するとスローを使わなくても対処できるようになった。まあ失敗したときはスローを使わないとダメなんだけどな。
リリーからの強い要望で、最初に機動力を奪ってからの近接勝負という形を取りながら、鍛錬を続けている。
そのリリーはというと、オーガの拳を避けたり盾で受け流したりしながら、急所を狙って剣で攻撃している。さすがのオーガもその機動力を失ってからは、素早い動きで回避することも出来ないので、真正面からリリーと戦っている。だがリリーに集中していると、横からエレノアのメイスが膝裏に叩きつけられたり、フォノンの魔法が飛んできたりと散々な状況となっていた。
現在の状況は、まだ22階層に降りる階段近くで鍛錬目的でオーガと戦っているところだ。
問題なく20階層への階段目指して行けるぐらいにはなっているとは思うが、フォノンの魔力強化が★2になるのを待っている。念には念をだ。
ついにエレノアの膝裏への攻撃でオーガが膝を突いたところを、リリーが下から突きあげるように剣を喉に突き刺してトドメを刺した。やはり部位によっては攻撃が通りやすいというのもありそうだ。拳なんか破壊できる気がしないからな。
それにしても機動力を奪った後でもこんなに粘られるからな。油断できない強さだ。
「あ、魔力強化上がりました」
ドロップアイテムを拾っていると、フォノンが急に話し掛けてきた。
思ったより早かったな。
ステータス
================
名前 フォノン
種族 獣人 (狐系)
年齢 16
スキル
戦闘
身体 体力強化★1 ( 0.07 ) △0.01
頑健強化★1 ( 0.45 ) △0.01
器用強化☆0 ( 0.45 ) △0.01
魔力強化★2 ( 0.00 ) △0.05
魔抗強化★1 ( 0.10 )
特殊 気配希薄☆0 ( 0.41 ) △0.01
解体☆0 ( 0.37 )
並列思考★1 ( 0.25 ) △0.04
魔法威力★1 ( 0.56 ) △0.04
命中精度★1 ( 0.61 ) △0.03
魔力回復速度向上★1 ( 0.66 ) △0.03
魔力視★1 ( 0.10 )
魔法 生活魔法☆0 ( 0.61 )
火魔法★2 ( 0.24 ) △0.03
風魔法★1 ( 0.36 ) △0.02
氷魔法★1 ( 0.11 ) △0.01
加護 生体掌握網 (スレーブ動作中)
成長促進 (スレーブ動作中)
火神の祝福
================
★2に上がってるな。これで元の魔力からすると2倍ぐらいになるのか。
フォノンのステータスを見ていると全員が集まってきた。
「これで先に進めますね」
「やっとダンジョンから出られそうだ」
「ちゃんとした所で寝られますね」
食料はまだまだ平気だとしても、階段での寝起きはきつかったのもあって、少し疲れ気味なのかもしれない。10階層で携帯ルームで寝起きしてた時はまだ余裕あったからな。
「それじゃあ少し休憩してから20階層に向かうとするか」
「「「はい(ああ)」」」
やはり未知の階層じゃなく地図があるというのは良かった。無駄な道を通らずに真っ直ぐ進める。
順調に進みながら遭遇するオーガを倒していく。
「すぐにオーガが来るぞ」
「了解だ」
危なげなくリリーが攻撃を止めたところを、エレノアとリリーの2人で抑え込む。そしてスローを掛けた後は、全員で集中攻撃して倒す。
何度も対戦したおかげか危なげなく倒せるようになってきた。今は鍛錬よりも先に進むことが優先なので、スローを駆使して短時間に勝負を決めている。
「あれってもしかして……」
先に進んでいるとフォノンが前方を指差した。たぶん皆気付いただろう。あれは宝箱だよな?
近づいて見ると、結構立派な宝箱だ。
「これって14階層の時と同じで、転移させられるんでしょうか?」
転移罠の後なのでフォノンも触る気はないようだ。
「どうだろうな」
あの時の罠ってこんな立派な宝箱じゃなかったし、一応罠探査で調べたところでは何も感じない。まだ☆0だから信用できるのか怪しいが。
「罠探査で調べた感じだと特に問題無さそうだが、リリーはどうだ?」
罠探査はリリーも持っているので確認した。
「私の方でも特に問題があるようには見えない。たぶんだが」
リリーも自信は無いようだ。
「あの……」
エレノアが何か遠慮がちに聞いてきた。
「どうした、エレノア?」
「そもそもですが、宝箱の鍵開けは出来るんでしょうか?」
「あっ」
そうだ。鍵開けの知識も無ければ、スキルも無い。
一応罠は無さそうということで宝箱を触ってみたが、罠が発動することは無かったが鍵がしっかり掛かっており、今の時点ではどうしようもなかった。
「宝箱も持ち運べそうもないし、諦めるか」
「そうですね」
「残念です」
「また見つかるさ」
鍵開けを教えてもらえればスキルが取得できそうな気もするが、今のとこ心当たりが無い。
それからはオーガに遭遇する以外は特に問題もなく20階層への階段が目前に見えてきた。
「もうすぐそこが階段なんだが」
「何か問題があるのか?」
「手前の十字路の左右の近い位置にオーガが2体いる。たぶん通路を通ると両方ともに気付かれると思う」
2体というのは初めてだからな。
「スローを2体同時に掛けることは出来ないのか?」
リリーが一番問題無さそうな提案をしてくるが、そこが問題だ。
「属性魔法の複数同時起動とかは問題ないんだが、時空魔法に関して言えば複数同時ってのは出来ない。何かしらの制限があるのか、それとも属性魔法に比べて時空魔法が難易度が高いのか分からないけどな」
「なるほど」
「そうなんですね」
リリーとフォノンが興味深げに頷いている。
「とすると私とエレノアで1体ずつ受け持つしかないか。私が1体引き付けて時間を稼ぐから、その間に別の1体を倒してくれ」
「それしかないか」
「分かりました」
「頑張って早く倒しますから」
大事なところをリリーに任せることが多い気もするが、そこは深く考えないで自分の役目を果たさないとな。
「右がエレノア。左がリリーだ。じゃあ行くぞ」
「「「はい(了解)」」」
近すぎるとそれぞれの邪魔になりそうなので、左右に別れてオーガに走り寄った。
オーガは当然、こちらが近づく前には気付いていたようで、すぐに姿が霞むような速度で突進してきた。
「くっ」
エレノアはオーガの拳を盾で受けたが、止めることはできずに後ろへと飛ばされた。すぐに俺とフォノンで魔法を連射して牽制する。
オーガは後ろに回避することで魔法を避けた。そして魔法を撃ってきた2人から狩ることに決めたのか、真っ直ぐに突っ込んで来た。
そのタイミングに合わせて大剣を叩き込んでやったが、それを横に避けて蹴りを繰り出してきた。蹴りによる攻撃は回避が間に合いそうに無かったので、後ろに下がりながら受けた。
蹴り飛ばされてすぐに起き上がったが、オーガはエレノアとフォノンで対応していた。俺はオーガの動きを追いながら、いつでも魔法が使えるように準備することにした。
エレノアがオーガの攻撃を受けていると、後ろからフォノンが速度重視の魔法を続けて撃ち放った。オーガは回避が間に合わないと思ったのか、両手をクロスさせて防御態勢で受けた。
「スロー」
動きの止まったチャンスに、オーガに向けてスローを掛けた。この吸い込まれるような感触は魔法が掛かった感じがした。
「攻撃だ」
2人に声を掛けると、続けざまに魔法を撃っていった。
「ファイアランス」
「⦅ウィンドランス⦆」
俺とフォノンの魔法が顔、腕、胴に次々命中していく。エレノアはメイスを思い切り膝裏狙いで叩きつけた。
3人の攻撃は、スローが切れた後も動きが鈍ったオーガに容赦なく浴びせられた。
オーガが倒れた後、急いでリリーの方へ駆け付けた。
さすがに慣れた相手と言っても、それはパーティでの戦闘であってソロでの戦闘ではない。リリーは完全に攻撃は捨てて、とにかく回避することに集中していた。表情にも余裕がないのが見えた。
「⦅ウィンドアロー⦆」
「ファイアアロー」
俺とフォノンで牽制の魔法を撃って引き離した。
「お疲れさま。リリー」
「ああ。これで楽ができる」
リリーがほっとした表情で応えた。
オーガが当然とばかりに俺とフォノンを狙ってくるが、エレノアとリリーが前に出て道を塞ぐ。
4人揃ってからは、これまで幾度と繰り返してきた戦闘なのもあって、特に苦労することもなかった。
20階層への階段を上りながら3人を振り返る。
「無事に戻ってこれたな」
「はい」
「私達なら当然です!」
「これでゆっくり休めるな」
リリーの言う通り少しゆっくり休んだり、外で鍛錬してもう少しスキル鍛えるかな。その後は別のダンジョンに気分転換で入るのもいいだろう。
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