第13話 オーガ(2)


 残念ながら階段では携帯ルームを出せるはずもなく、毛皮の敷物を下に敷いて休むことしか出来なかった。幸いダンジョン内は寒くないのが救いだったか。


 疲れがしっかり取れてない状況だが、食事を取りながらオーガとの一戦について話し合っていた。


「何度か斬りつけたんだが、私の攻撃はほとんど効果がなかった」


 リリーがオーガとの戦闘を思い出して話した。


「それは俺も一緒だな。オーガが殴ってきたのに合わせて、大剣で迎撃したんだが平気な顔をしていたな」


「そうですね。私の攻撃もあまり効いていないようでした」


 前衛3人の攻撃は牽制の役目しか果たしてなかった感じがする。


「私の魔法は少しは効果あったみたいですが、油断したら思いっきり蹴とばされてしまいました」


 他の上位種もそうだったが、魔法に対しては警戒してるんだよな。実際フォノンの魔法も威力が低めな割にはダメージが通ってたみたいだし。


「最初のリリーへの攻撃は驚くほどの速度だったし、フォノンへ迫った時もいきなり壁を蹴って抜けていったんだよな」


「あの大きな体で動きが俊敏ですね」


 とにかく速いんだよな。


「もしかしなくても魔物にもスキルが存在しているのかもしれないな。もしそうならオーガは頑健、筋力、敏捷系のスキルは必ず持っているだろうな。そして頑健関係のスキルがかなり高くて、俺達前衛の攻撃が効かないということか」


「ありえる話だな」


 リリーが考え込みながら頷いた。


「リリーが最初の頃に言ってたな。頑健強化と魔抗強化のスキルを上げると、魔法のダメージが軽減できると」


「ああ、言ったな」


「とすると、オーガだけじゃなくてこれまで戦った上位種もそうだが、頑健系は持っていても魔抗系は持っていないから、魔法攻撃は効きやすいのかもしれない」


「じゃあ魔法で攻撃すればいいってことですか?」


 フォノンが身を乗り出して話してきた。


「基本的にはそうなるんだが、問題はどうやって足を止めるかだな」


 普通に魔法を撃つのだと回避されそうな速さがある。前衛と連携を考えないとダメだろうな。


「シオン様。時空魔法のスローで動きを阻害することはできないでしょうか?」


 エレノアがちゃんと自分の持っている魔法を把握していて、提案してきた。


「そうだな。可能性はある。ただ心配していることもある。スローはこれまで格下には使ったことがあるんだが、格上にはないんだ。抵抗されるかもしれないし、中途半端に掛かることもあるかもしれない。そして何時効果が切れるのかが分からないから、いきなり元の速さになると不意打ちを喰らう可能性もあるんだ」


「なるほど。そういうこともあるんですね」


「デメリットばかりではないけどな。スローが効いて、その間に魔法で倒しきれれば、ほとんど危険はない。どちらにしろ試してみないと分からない」


「それなら試す価値があるんじゃないか? 危険性も考えて注意しておけばいい」


 リリーの言うことは正しい。色々試すしかない。


「それと魔法で足を潰すことはできないか? 完全ではなくても怪我をさせれば動きも鈍りそうだ。そうすれば、いくら近接攻撃が効きにくくても急所を攻撃すれば剣でも倒せそうな気はする」


「問題は魔法を回避されないかどうかだな。前衛が敵の動きを止めて、俺かフォノンが魔法で牽制しておいてから、本命の魔法攻撃を撃てば大丈夫な気もする」


 そこまでお膳立てすれば、足狙いじゃなくて倒しにいっても良さそうだが、一部破壊の方が重圧は少ないか。


「思ったんですけど、主さまの魔法スキルが★2になるのを待って、主さまと私で魔法の飽和攻撃すれば倒せたりしませんか?」


 実はそれを考えていた。1人だと回避されたりするだろうけど、2人で撃ちまくれば避けることができないんじゃないかと。それには俺の魔法攻撃の速度アップが必須だ。


「俺もそれを考えていた。幸いもうすぐ風魔法が★2になる。試して見たいところだ」


「それではシオン様のスキルが上がるのを待ちますか?」


 どうするか。色々試して最適解を見つけることになると思うが、それでも風魔法が★2になっていた方が安全だな。


「そうだな。まずスキルを上げてからにしよう」


「分かりました。私も自分にできる鍛錬をいたします」


「私も魔法の鍛錬しますね」


「私はここではあまり体を動かすことができないな」


  

 皆を待たせることになったが、全員何か鍛錬するみたいだ。別に体力温存で休養しててくれてもいんだがな。


 あんまり変化のない俺のステータスだが、風魔法が★2に近いことは覚えていた。



ステータス

================


名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )

    剣術★2 ( 0.29 ) △0.01

    大剣術★1 ( 0.87 ) △0.02

    盾術☆0 ( 0.35 )


 身体 体力強化★2 ( 0.08 )

    頑健強化★1 ( 0.20 ) △0.04

    筋力強化★2 ( 0.75 ) △0.01

    器用強化★1 ( 0.86 )

    敏捷強化★2 ( 0.13 ) △0.01

    魔力強化☆0 ( 0.37 ) △0.01

    魔抗強化☆0 ( 0.13 )


 特殊 気配感知★3 ( 0.05 ) △0.01

    気配希薄★1 ( 0.17 ) △0.01

    解体★2 ( 0.15 )

    並列思考★2 ( 0.42 ) △0.02

    魔法威力★1 ( 0.06 ) △0.02

    魔力回復速度向上☆0 ( 0.69 ) △0.01

    魔力視☆0 ( 0.09 )

    命中精度★1 ( 0.36 ) △0.01

    遠見☆0 ( 0.25 )



魔法  生活魔法★2 ( 0.80 )

    土魔法★1 ( 0.86 ) △0.01

    水魔法★1 ( 0.66 )

    火魔法★1 ( 0.72 ) △0.01

    風魔法★1 ( 0.98 ) △0.02

    氷魔法☆0 ( 0.72 )

    雷魔法☆0 ( 0.66 )

    回復魔法★1 ( 0.70 ) △0.06

    時空魔法★2 ( 0.64 ) △0.02


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


================



 欲を言えば土魔法も★2になるのを待ちたいところだが、あんまりゆっくりも出来ないだろう。実を言えば時空魔法でも倒せそうではあるんだが、まだまだ密着して時間を掛けないと効果が期待できない魔法だから、今は役に立たないか。



 さて、一番の問題の俺がのんびりしているわけにはいかない。今日中には熟練度を上げて、明日オーガとの戦いに臨みたいところだ。

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