第4話 ネオンダンジョン(3)


 翌日は携帯ルームの中で目が覚めた。

 こんな場所では狭い範囲でしか聖域を設置出来なかったが、何事もなく目覚めることが出来たということは、夜の間は何も無かったということだ。普通のまともな冒険者はこうだよな。


 携帯ルーム内にライトをつけると、皆起き上がったので目が覚めていたようだ。


「皆、おはよう」


「「「おはようございます(おはよう)」」」



 エレノアとフォノンが食事を取り出しているのを横目に、ステータスを表示する。自分のはあんまり変化が無いのが分かったので3人のを確認するか。



ステータス

================


名前  エレノア

種族  人間

年齢  20


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.01 )

    槌術★1 ( 0.02 ) △0.03

    盾術☆0 ( 0.66 ) △0.04


 身体 体力強化★1 ( 0.27 ) △0.02

    頑健強化★1 ( 0.34 )

    筋力強化★1 ( 0.04 ) △0.02

    器用強化☆0 ( 0.98 ) △0.03

    敏捷強化★1 ( 0.12 ) △0.02

    魔力強化★1 ( 0.15 ) △0.02

    魔抗強化☆0 ( 0.90 )


 特殊 料理★2 ( 0.23 )

    調合☆0 ( 0.00 )

    良否判定☆0 ( 0.87 ) △0.02

    真偽判定☆0 ( 0.87 ) △0.02

    気配希薄☆0 ( 0.61 ) △0.01

    解体☆0 ( 0.81 )

    魔法威力☆0 ( 0.00 )

    魔力回復速度向上★1 ( 0.31 ) △0.01

    魔力視☆0 ( 0.72 )


魔法  生活魔法★1 ( 0.47 ) △0.04

    時空魔法☆0 ( 0.99 ) △0.02


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)


================



 やはり槌術が★1に上がっていた。ちょうどドタバタしていた時だったから確認もしなかったが、明らかに動きが変わったからな。あと、今日中にも器用強化と時空魔法が★1に上がりそうだ。これでもっと武器を扱い易くなるんじゃないか。最近はリリーと一緒に前に出るのが普通になってきていたから、俺も攻撃に参加しやすくなった。



ステータス

================


名前  フォノン

種族  獣人 (狐系)

年齢  16


スキル

 戦闘 


 身体 体力強化★1 ( 0.02 ) △0.01

    頑健強化★1 ( 0.37 )

    器用強化☆0 ( 0.40 ) △0.01

    魔力強化★1 ( 0.61 ) △0.03

    魔抗強化★1 ( 0.10 )   


 特殊 気配希薄☆0 ( 0.35 ) △0.01

    解体☆0 ( 0.37 )

    並列思考★1 ( 0.00 ) △0.03

    魔法威力★1 ( 0.31 ) △0.02

    命中精度★1 ( 0.39 ) △0.03

    魔力回復速度向上★1 ( 0.42 ) △0.03

    魔力視★1 ( 0.10 )


魔法  生活魔法☆0 ( 0.59 ) △0.01

    火魔法★2 ( 0.07 ) △0.02

    風魔法★1 ( 0.12 ) △0.03

    氷魔法★1 ( 0.05 ) △0.03


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)

    火神の祝福


================



 フォノンはとにかく魔法関係のスキルがほぼ★1以上になった。昨日は途中で並列思考が★1になったおかげで、複数の魔法を同時に扱うのが楽になったみたいだ。これで俺もフォノンに追いつければ、いざという時も対処が楽になるんだが。



ステータス

================


名前  ミナサリアリリー・ルイーゼ・ファラダム

種族  人間

年齢  17


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.00 )

    剣術★2 ( 0.21 ) △0.02

    大剣術☆0 ( 0.00 )

    槌術☆0 ( 0.00 )

    盾術★1 ( 0.89 ) △0.02


 身体 体力強化★1 ( 0.84 ) △0.01

    頑健強化★1 ( 0.10 )

    筋力強化★1 ( 0.59 ) △0.01

    器用強化★1 ( 0.06 ) △0.03

    敏捷強化★1 ( 0.12 ) △0.03

    魔抗強化☆0 ( 0.91 )


 特殊 気配感知☆0 ( 0.60 ) △0.02

    気配希薄☆0 ( 0.41 ) △0.01

    解体☆0 ( 0.14 )

    魔力視☆0 ( 0.89 )

    遠見☆0 ( 0.01 )


魔法  生活魔法☆0 ( 0.74 ) △0.02


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)


================



 リリーはスキルが揃ってきた関係で、俺が前に出るより安定している。いや、俺はそれを理由に前に出ないわけではないんだが、エレノアとリリーが率先して前衛で維持してくれているから、最近は魔法アタッカーに終始することが多い。



「今日からは11~15階層を探索するんだが、この前まで相手にしていたオークがメインだから、そこまで違和感はないかもしれない」


 食事を取りながら今日の話をしている。


「問題は上位種に対応できるかか?」


 リリーが頷きながら応えてくれた。


「そうだな。ここのオークは集団の数に関係なく上位種が混ざってくるから、普通に遭遇するだろうな」


「樹海で遭った上位種、強かったですよね」


 フォノンが獣耳を伏せながら言った。


「でも私達も強くなってますから、対応できないことはないと思います」


 そうだな。エレノアも自分が少しずつ強くなってるのは実感出来ているのだろう。俺は最近停滞気味でイマイチ勢いに乗り切れてないが。


「エレノアの言う通りだな。それに私は今から上位種に遭遇できるのが楽しみだな」


 まあうちのパーティは前衛がヤル気十分だから、前に進むんだけどな。




 11階層に降りると、これまでより通路はかなり広くなった。ここに配置されてるのはオークだから、その体の大きさに合わせてるのかもしれないな。これなら俺も大剣でいけるだろう。


 

 11階層は冒険者が主戦場としているから魔物がいない。気配感知で魔物の気配は出てきているが、ほとんど冒険者パーティが討伐中みたいだ。


「11階層で狩りするのは無理っぽいな」


「そうですね。先程から戦闘中の冒険者が多いですね」


 慎重に進んでいるエレノアだが無駄に終わっている。


 それから何回かの戦闘中の場所を通り過ぎると、前方に5人パーティらしき冒険者が、オークの集団と戦っている場面に遭遇した。オークは冒険者の人数を上回っており、今にも均衡が崩されそうな様相を見せていた。

 大丈夫か?と思い始めていたその時、2体のオークが前衛の壁を抜けて、後衛の位置にいる小柄な冒険者に殺到した。そして振り下ろされた棍棒で、その冒険者は吹き飛ばされた。


「⦅クイック⦆」


 吹き飛ばされる光景を見るや否や、クイックを掛けて追撃をしようとしていたオークの眼前に飛び込むと、そのままの勢いで頭に大剣を叩き込んで倒した。続けてまだ何が起きたのか理解できていない隣のオークの首を斬り捨てた。


「何も言わずに手を出してすまない。助けはいるか?」


 緊急時だったので何も言えなかったが、今更だが確認するために声を掛けた。


「ありがたいわ。でもその前にサラの怪我の確認をお願い」


 長い黒髪をポニーテールにしている女冒険者が応えてくれた。たぶん吹き飛ばされて蹲っている冒険者がサラというのだろう。


 「今から回復するから少し待ってくれ」


 肩から腕を抱え込むように痛みに耐えている姿を見て、急いでヒールを掛ける。


 「まだ痛いか?」


 「ありがとう。痛みは取れた」


 顔を上げた冒険者が言った。コートのフードから見えたのは、青いおさげ髪の少女だった。小柄だったのは少女だったのか。

 そんなことは別にいいか。戦闘中だったことを思い出して戦況を確認したが、エレノアとリリーとフォノンが参戦した戦闘は、既に終わろうとしているところだった。



「助かったわ。おかげで全員無事に済んだ」


 さっき声掛けに応えてくれた女性が礼を言ってきた。


「いや、手助けがいるか迷ったが、危なそうだったんで思わず動いてしまった」


「私はこのパーティのリーダーでソフィアよ」


「俺はシオンだ」


「何かお礼が出来ればいいんだけど……」


「そんなの気にしないでいい。たまたま通り掛かって助けただけだ」


「あ、じゃあ今のドロップアイテムでも」


「気にするな。それはあんた達の獲物だ。俺達は先に行くから、じゃあな」 


 別に恩着せがましくするつもりもないので、さっさと移動した。




 12階層に降りてやっと魔物と遭遇できたみたいだ。


「気配感知でオークの気配を捉えたぞ。8体の集団だ。その中の1体がオークリーダーだな」


「この前は主殿がオークリーダーを受け持ったから、今度は私の番だな」


 オーク発見を報告すると、間髪おかずにリリーが言ってきた。このリリーの言動は予測できたな。


「まずは俺とフォノンでオークを4体倒すから、その後リリーがオークリーダー、残りを俺とエレノアで受け持つか」


「分かりました」


「頑張ります」


「了解だ」



 エレノアとリリーを先頭に進みながら、魔法の準備を始める。

 オークの姿が見えると前衛2人はそのまま前に進み、俺とフォノンはその場で魔法を撃った。


「⦅バレット⦆」


「ファイアランス」


 4体のオークは顔と体に魔法で穿たれてそのまま倒れた。残りの3体は近づいてきた2人に突進してきたが、リリーは3体のオークをすり抜けてオークリーダーへと向かった。リリーは好物から食べる派みたいだな。


「⦅クイック⦆」


 エレノア1人では大変なので、急いで前線に合流するべくクイックを掛けた。


 3体でエレノアに襲い掛かろうとするところを、一番近いオークの足に大剣を叩きつけた。その一撃で足を砕かれたオークは、倒れ込んで暴れている。巻き込まれないように近づき首を斬り裂いた。

 エレノアは無理をせずに2体から繰り出される棍棒の一撃を躱していった。そんなエレノアに向いている1体に背後から近寄り、大剣を頭に叩き込んで潰す。

 残り1体になったのを確認したエレノアは、すぐさま攻撃に転じて膝を連続で攻めると、堪らず屈みこんだオークの頭に渾身のメイスの一撃を見舞った。


 さすがに慌てることも無くなったか、この数だと。エレノアを見ても特に怪我をしてなさそうなので、リリーとオークリーダーの戦闘をゆっくり鑑賞することにした。


 リリーと相対しているオークリーダーは基本は樹海で見た個体と似たようなものだが、武器が少し違う。樹海で見たのは丸みを帯びた金棒だったが、こっちが持っているのは鉄の角材のようだ。

 さすがにまともに剣を合わせると傷めてしまうからか、避けるか盾で受け流すかしている。攻めあぐねているというよりは、慎重に確認している感じだな。盾で受け流すときも、まともに受けると力負けすることを考えて上手く力を逸らしているし。俺の場合どうだろうな。今でも力負けするんだろうか? 次に対戦した時試してみたいな。


 通常だったら足狙いで体勢を崩して倒すところだが、今回のリリーは全身斬り刻むことにしたようだ。敵の攻撃の隙を突いて、手を斬り、胴に突き刺し、とにかく細かく攻撃を加えていく。そんな攻撃を嫌がっているのか、オークリーダーはだんだん雑に振り回すだけになってきた。そんな状態でもリリーは慎重に攻撃を読んでは、隙を突いて斬り刻んでいく。


暫くするとオークリーダーは倒れ込んで霞のように消えていった。


「何だか随分楽しんでいたようだな」


 俺は笑いながらリリーに話し掛けた。


「久しぶりに充実した時間だったな」


 リリーもいい笑顔で言ってくる。


魔物の消えた後に残ったドロップアイテムを拾って更に先に進むことにした。オークリーダーからは今回の探索で2個目となる宝石を手に入れることが出来た。

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