第35話 厄介者の後始末


厄介事を片付けて今は4人で峠道を走り続けている。

いや正確にはまだ厄介事は残っているのだが、とりあえずはということだ。


ニードルによって怪我は負ったものの、命を長らえた者達は少し奥に入って道から見えない位置に縛って置いている。全員を運ぶのは面倒だったので、わざわざ怪我は回復して自分達で歩いて移動してもらった。まあ本当はあの場で死んでいた方が良かったのかもしれない。今後に楽しい未来は待っていないだろう。


山を落りると何もない乾いた台地が広がっている。反対側とは違った景色だ。その中を道が真っ直ぐ伸びているのだが、その先に見える沢山の建造物が立ち並んでいるのがダンジョン都市ルクルスだな。


「なんか想像とは違うところにある町なんだな」


町を作るというと周りが緑豊かだと思ってしまっていた。


「この町は3つのダンジョンから産出される素材やアイテム、また食材など色々な物の恩恵で栄えた町ですから、周りの環境は考えられていませんでした。見ての通り、雨はあまり降らない所ですが大きな川が近くを流れていることもあって、生活するのはそれほど不便ではありません。交易品に溢れていますし」


俺の疑問にエレノアが答えてくれた。

そういえばダンジョンが固まってる所ってのも珍しいって話だったな。


「あと少しだし早くルクルスに行って、さっさと面倒事は終わらせるか」


「そうですね。急ぎましょう」




それから30分ほど走って着いた町は、確かに規模だけで言えば王都に負けない規模だろう。但し、王都が綺麗に整った街並になっているのに対して、こちらは雑然とした町で、明らかに拡張を繰り返した感じだ。しかし人は多い。ひょっとしたら王都より多いんじゃないか?

驚いたのが町に入るときのチェックだ。サルビナとリアではしっかりとチェックされたのだが、ここでは目的を聞かれて、冒険者であることを告げてキューブを見せただけで、そのまま通された。


俺が驚いているとまたエレノアが説明してくれた。


「ここでは出入りの人数が多いことも理由の一つですが、交易による利益の優先、何よりダンジョンの門戸を広げることで産出される資源を増やすことを第一に考えられています。なので自然と町への出入りは緩くしてあるのだと思います」


なるほど。利益優先ということだな。治安が心配な町だな。


「おっと。このまま町に入ったらダメだな。報告に行こう」



面倒だが峠道で起こったことの説明に兵士のところに戻った。


「すみません」


「ん? なんだ」


「ルクルスに来る途中で盗賊と遭遇しまして」


「何、どこでだ!?」


簡単に峠道で起こったことを説明すると、兵士は少し考えてから建物の奥に案内した。何かへんな言い掛かりでもつけられるのではないかと危惧したが、別の兵士が居るところで説明させられただけだった。


「盗賊に襲われたというのは本当か?」


「はい、そうです」


質問した兵士は横にいる兵士に顔を向けると、その兵士は頷いた。


「場所はどこだ?」


「王都方面から向かってきて、ルクルスの少し先にある峠のところです」


また横の兵士に確認するように見ると、その兵士は頷いた。


その後数回質問されたが、全て似たような状況が続き説明した内容の確認作業は終わった。何だったんだ?



「申し訳ないが、この後現場まで案内してもらうことは出来るか?」


断ることなんかできないだろうが、エレノアの方を見ると頷いているので断るなということだろうな。


「はい。大丈夫です」


「そうか。では馬車を用意するから案内のほうを頼む」



兵士達が慌ただしく準備を始めだしたが、俺達は何もすることがないので門の外で待つことにした。


「さっきの質問なんだったんだ」


「シオン様。私のスキルに真偽判定がありますよね」


「ああ」


「たぶん、先程の兵士は同じスキルか似たようなスキルを持っているのではないでしょうか」


「ああ、そういう事か」


真偽判定ってそういう使い道もあるのか。俺は物の本物偽物の判定ぐらいしか思いつかなかった。エレノアのスキルもまだ☆0だから、本当の効果はまだ出てないんだよな。

俺の取得可能リストには出てこなかったし。俺はこの世界に来たときに、すぐ素性を誤魔化すような事を考えてたし、そういう意味では適正な人間じゃなかったってのも理解できるな。



暫く待つと十数名の兵士と、馬車が3台用意された。


「待たせたな。乗ってくれ。案内を頼むな」


「はい。分かりました」


4人で先頭の馬車に乗り込み、さっきまで走ってきた道を戻り出した。


馬車の中で軽く話をしたのだが、どうやら数台の馬車が行方不明になっている連絡は届いていたらしい。兵士も峠道が一番怪しいことは分かっていたので、見回る予定にしていたという。ただ、盗賊も兵士の姿を見て出てくる可能性は低いので、対策を考えていたところに俺の報告が来たということだ。



現場に着いて縛っておいた盗賊のところに案内すると、特に何かに襲われることもなく盗賊達は縛られたままだった。これから盗賊達は拷問にあって、色々喋らされるのだろう。数台の馬車を襲っていたという話だし、アジトがあるのかもしれないし、仲間もまだいるのかもしれない。


異世界物の定番だと、転生者が自らアジトに乗り込むのだろうが、俺にそんなつもりはまったくない。後は兵士の皆さん頑張ってください。


盗賊も全員捕縛され馬車に押し込められた。ようやく面倒事も終わったというところだな。


帰り道は、来る時に色々話してくれた兵士がまた色々教えてくれた。この人も問題解決に協力した感謝も込めて、話してくれているのかもしれないな。丁度いいのでルクルスの事で知りたかった情報をいくつか聞き出しておいた。実はこれとは別に謝礼金も貰えるとのことだ。




ダンジョン都市に着くなり面倒事が襲い掛かってきたが、何にしろやっと目的の町に着いた。これからは楽しみにしていたダンジョンにも入れる。明日からの生活が楽しみだ。






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これで第2章終了となります。

続けて第3章に入る予定ですが、途中からストックもまるっきり無い状態で書き続けてきた結果、3章の構成をまったく考える時間がありませんでした。。。

なので12/1から第3章再開とさせて頂きます。

頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。(レオナルドの小さな従者は書かないといけないのですが)

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