第33話 旅の最後の追い込み


王都から出てすぐに4人で走り出した。

最初は王都から北方に向かう馬車も多く、しかも速度も残念なレベルなので次々と追い抜いていき、すれ違う馬車も疎らになってきたので、いつもの通り魔法を発動して走ることにした。

普通にこなしているので特に思うことも無かったのだが、動きながら魔法を発動するのって大変だったりするのだろうか。フォノンも真似し始めたのは最近だが、苦労していたのは覚えている。できれば標準的な魔法使いを拝んでみたいと思っていたのだが、これまでのところ遭遇したことが無い。


僅かな旅の機会も鍛錬をするという、他の人から見たら信じられない冒険者パーティかもしれない俺達だが、長閑な風景を楽しみながら道を進んでいる。王都からダンジョン都市までは、5つの町を経由することになる。前にロマナからサルビナまで走った時間のことを考えると、ルクルスまで走っての移動で10日で着けるはずだ。この予定は順調に進んでなので若干前後する可能性もある。



最初の1日目は、王都を出発するのが中途半端な時間だったこともあって、次の町の少し手前で野営することにした。


「主殿、まだ日が暮れるまで時間があるし、立ち合い稽古をしないか?」


「俺はそれでもいいが・・・」


これから食事作りをするだろうエレノアとフォノンを見て確認する。まあ俺とリリーが居たって何も手伝えることは無いんだけどな。


「シオン様。私達で準備するので、リリーの相手をしていても問題ありませんよ」


「そうか。それじゃあ頼むな」


「はい」


エレノアには樹海での野営の時も、一度食事を作る時に何日分かをまとめて作って、マジックバッグに入れておいて構わないとは伝えている。エレノアとフォノンだって一緒に探索しているのに、毎回終わってから食事作りもしないといけないのは大変だからな。俺としては、町で購入してマジックバッグに入れておいてもいいんだが、折角エレノアから自分で作るという話を無下にすることもできないのでお願いした。エレノアとフォノンの負担が大きくなければいいのだが。



リリーとの立ち合いは難しさを増している。

剣術★2に上がってからは果敢に攻めてくることも多くなった。元々の技量に加えてスキルが上乗せされたことによって、凌ぐだけでも大変だ。

今も素早い連撃によって攻められているが、こちらも受け流したり、躱したりで何とか均衡を保っている。しかしこれはあくまで鍛錬だ。実戦ではないので負けることを怖がって消極的な戦いはできない。と毎回思って、凌ぎつつ攻勢に打って出るのだが、何度も体を打たれている。

受けに回ってはダメだと同じく攻めていくことになるので、リリーとの立ち合い稽古は苛烈になっていく傾向にある。


「良い鍛錬だったな。主殿」


「そうだな。毎回俺の方が痛い目に遭っているのは別にして」


「そんなことないぞ。私もしっかり攻撃を喰らっているからな」


事実だろうが、俺に比べると回数は少ないと思うんだがな。


たぶん食事の準備が出来たのだろう、エレノアとフォノンまで観戦状態になっているので、さっさと後始末をして食べることにしよう。




2日目からは朝起きてから走り続け、夕方前に野営場所に着いてからは鍛錬を行った。食事を作り置いてからはエレノアとフォノンも鍛錬に参加した。途中町にも寄ったが、基本はそのまま走り抜けるだけになった。



そして9日目。ルクルスの手前、最後の町ということもあったので、今日はここで宿屋に泊まることにした。


「久しぶりに風呂に入れる宿屋がいいな」


クリーンがあるので汚れは気にしないでいいのだが、たまには風呂に入りたい。これだけ聞くと駄目な人間がたまに風呂に入るような感じだな。そのうち毎日入れるようになりたいな。


「お風呂いいですね。シオン様と私が初めて逢った時以来になります。またお体洗わせて頂きます」


エレノアも嬉しそうに言った。


「いいですね。私洗いっこしたいです」


「クリーンに慣れると意識しなくなったが、お風呂はいいな」


フォノンとリリーも好きみたいだな。


「じゃあ、今日の宿屋は風呂のあるところだな」



まだまだ普通の宿屋は風呂が無いところが多いので、店構えが高級そうなところを当たってみた。この探し方をすると、金銭的には少し緊張してしまうが仕方ない。



「いらっしゃいませ。お客様。お泊りでしょうか?」


大通りの中でも大きな店舗を選んで入ってきたが、中の様子も思った以上に高級そうだ。少し後悔の念にかられたが、諦めて覚悟を決めた。


「4人ですが一泊お願いします。ちなみに風呂はあるでしょうか?」


「はい。各部屋に十分な広さのお風呂を準備させて頂いております」


おっ。風呂あるのか。良かった。


「シオン様、よろしいですか?」


「えっ。ああ構わないが」


以前もエレノアに似たように許可を求められたような気がしたが。


「すみません。ベッドは出来るだけ大きい部屋をお願いしたいのですが」


「それでは一番大きいベッドが設置されている部屋へご案内させて頂きますね」


対応してくれていた女性店員は全員を見回した後に、俺の顔を見てニッコリと笑って答えた。何だか「頑張りなさいよ、お兄さん」と言われているような気がした。今更だから別にいいんだが。


この宿屋は全員で大銀貨6枚もした。ロマナでの金額の10倍近い金額だ。あそこも十分高かったんだが、もしかして選んでくれた部屋って特別な部屋じゃないよな?


そして案内された部屋は驚くほど豪華で広かった。風呂場も、寝室も。そしてベッドがこれまで見た中で一番デカイ。これは特別な部屋なんだろうな。高いはずだ。



「とりあえず、夕食でも食べに降りるか」


「「「はい(了解)」」」


皆で部屋を一通り見て回っていたが、夕食にはいい時間なので下に降りて食べることにした。



「これはなかなかに豪華な宿屋を選んだな」


リリーが食べながら話してきた。

そう、夕食も負けず劣らず豪華なのだ。そして、そんな豪華な夕食を食べる周りも冒険者なんかいるはずもなく、裕福な服装の人ばかりだ。


「そうだな。いつもは無理だがたまにはいいんじゃないか」


もう金も払ったし気にしても仕方ない。折角だから楽しもうと思っている。


「主さま、この料理すごく美味しいですよ」


「そうですね。これは食材も良い物が使われていますね」


フォノンもエレノアも美味しく食べられているみたいでなによりだ。



そうして皆で楽しく食べていると、隣から少し大きな声が聞こえた。


「何?? 何故、まだ馬車が着いていない。もうルクルスは出発して着いている時間のはずだろう?」


「はい。私達の後、1時間後に出たはずですので、もう到着するはずなのですが」


「早く王都に向かいたいのに、明日の朝出発は無理そうか」


「そうですね。明日には着くと思うのですが、もしかしたら・・・」



何だか心配になる会話をしているが、その後は声を潜めてしまったのでよく聞こえなかった。まあ、確証ないことを気にしても仕方ないか。




「シオン様、どうですか?」


「ああ、ありがとう。気持ちいいぞ」


今は風呂でエレノアに背中を洗って貰っている。エレノアに優しく洗われるのは本当に気持ちいいな。

そんな俺達の横ではフォノンとリリーも体を洗っている。4人で洗っていても平気な広さだ。フォノンは洗いっこと言っていたが、ただリリーを洗っている。リリーは恥ずかしがっているのだが、問答無用で洗われているようだ。リリーは戦う時などは凛々しいのだが、こういう時は途端に押し負けてしまって、言いなりになってしまっている。不思議なものだ。




これまたデカイベッドに横になりながら、全員のステータスを確認する。



ステータス

================


名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )

    剣術★2 ( 0.22 ) △0.01

    大剣術★1 ( 0.74 )

    盾術☆0 ( 0.30 )


 身体 体力強化★2 ( 0.03 ) △0.01

    頑健強化★1 ( 0.04 ) △0.01

    筋力強化★2 ( 0.69 ) △0.02

    器用強化★1 ( 0.79 ) △0.02

    敏捷強化★2 ( 0.06 ) △0.01

    魔力強化☆0 ( 0.31 ) △0.01

    魔抗強化☆0 ( 0.00 )


 特殊 気配感知★2 ( 0.93 ) △0.01

    気配希薄★1 ( 0.10 ) △0.01

    解体★2 ( 0.15 )

    並列思考★2 ( 0.28 ) △0.01

    魔法威力☆0 ( 0.93 ) △0.02

    魔力回復速度向上☆0 ( 0.62 ) △0.02

    魔力視☆0 ( 0.01 )

    命中精度★1 ( 0.20 ) △0.03

    遠見☆0 ( 0.24 )



魔法  生活魔法★2 ( 0.77 )

    土魔法★1 ( 0.77 ) △0.02

    水魔法★1 ( 0.66 ) △0.02

    火魔法★1 ( 0.66 ) △0.02

    風魔法★1 ( 0.86 ) △0.02

    氷魔法☆0 ( 0.70 ) △0.02

    雷魔法☆0 ( 0.64 ) △0.02

    回復魔法★1 ( 0.46 ) △0.01

    時空魔法★2 ( 0.34 ) △0.03


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


================



ステータス

================


名前  エレノア

種族  人間

年齢  20


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.01 )

    槌術☆0 ( 0.97 ) △0.03

    盾術☆0 ( 0.62 )


 身体 体力強化★1 ( 0.24 ) △0.03

    頑健強化★1 ( 0.34 ) △0.03

    筋力強化★1 ( 0.01 ) △0.02

    器用強化☆0 ( 0.94 ) △0.02

    敏捷強化★1 ( 0.09 ) △0.02

    魔力強化★1 ( 0.12 ) △0.02

    魔抗強化☆0 ( 0.90 ) △0.04


 特殊 料理★2 ( 0.23 )

    調合☆0 ( 0.00 )

    良否判定☆0 ( 0.83 ) △0.02

    真偽判定☆0 ( 0.83 ) △0.02

    気配希薄☆0 ( 0.59 ) △0.01

    解体☆0 ( 0.81 )

    魔法威力☆0 ( 0.00 )

    魔力回復速度向上★1 ( 0.28 ) △0.02

    魔力視☆0 ( 0.72 ) △0.04


魔法  生活魔法★1 ( 0.39 ) △0.04

    時空魔法☆0 ( 0.95 ) △0.02


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)


================



ステータス

================


名前  フォノン

種族  獣人 (狐系)

年齢  16


スキル

 戦闘 


 身体 体力強化★1 ( 0.01 ) △0.04

    頑健強化★1 ( 0.37 ) △0.03

    器用強化☆0 ( 0.39 ) △0.01

    魔力強化★1 ( 0.56 ) △0.04

    魔抗強化★1 ( 0.10 ) △0.04  


 特殊 気配希薄☆0 ( 0.33 ) △0.01

    解体☆0 ( 0.37 )

    並列思考☆0 ( 0.95 ) △0.03

    魔法威力★1 ( 0.28 ) △0.03

    命中精度★1 ( 0.34 ) △0.03

    魔力回復速度向上★1 ( 0.37 ) △0.02

    魔力視★1 ( 0.10 ) △0.04


魔法  生活魔法☆0 ( 0.58 ) △0.01

    火魔法★2 ( 0.03 ) △0.02

    風魔法★1 ( 0.08 ) △0.04

    氷魔法★1 ( 0.01 ) △0.04


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)

    火神の祝福


================



ステータス

================


名前  ミナサリアリリー・ルイーゼ・ファラダム

種族  人間

年齢  17


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.00 )

    剣術★2 ( 0.17 ) △0.02

    大剣術☆0 ( 0.00 )

    槌術☆0 ( 0.00 )

    盾術★1 ( 0.86 )


 身体 体力強化★1 ( 0.82 ) △0.03

    頑健強化★1 ( 0.10 ) △0.04

    筋力強化★1 ( 0.57 ) △0.02

    器用強化★1 ( 0.01 ) △0.04

    敏捷強化★1 ( 0.07 ) △0.04

    魔抗強化☆0 ( 0.91 ) △0.04


 特殊 気配感知☆0 ( 0.56 ) △0.02

    気配希薄☆0 ( 0.39 ) △0.01

    解体☆0 ( 0.14 )

    魔力視☆0 ( 0.89 ) △0.04

    遠見☆0 ( 0.01 )


魔法  生活魔法☆0 ( 0.72 ) △0.02


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)


================



この9日間の移動と鍛錬で皆、熟練度が上がり★レベルが上がっている。これで少しは安心してダンジョンに入っていけるかもしれない。まあ、それは実際ダンジョンを確認して、戦っていけるかを判断してからか。



「シオン様、お待たせいたしました」


色々と準備を終えた3人が凄く色っぽい恰好で入ってきた。エレノアには俺のためだからと何度も言った影響か、こういう下着なども買ってくれているようだ。


「うん、皆綺麗だな」


「ありがとうございます」


「嬉しいです」


「あ、ありがとう」


皆それぞれに綺麗だが、エレノアとフォノンはそう褒めると嬉しそうに返してくれたが、リリーは相変わらずに顔が真っ赤になっている。

皆をそれぞれ抱きしめた後に、ライトを少し暗くしてから4人でベッドに入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る