第29話 樹海探索(5)


昨日とは打って変わって晴天になっている。

今日からまた樹海探索を再開する。朝はいつもの鍛錬を行ってだが。


朝の鍛錬を始める前に、フォノンのスキルで★1に上がっているものがあることに気付いた。



ステータス

================


名前  フォノン

種族  獣人 (狐系)

年齢  16


スキル

 戦闘 


 身体 体力強化☆0 ( 0.56 )

    頑健強化☆0 ( 0.78 ) △0.05

    器用強化☆0 ( 0.23 )

    魔力強化☆0 ( 0.86 ) △0.05

    魔抗強化☆0 ( 0.38 ) △0.05  


 特殊 気配希薄☆0 ( 0.17 )

    解体☆0 ( 0.29 )

    並列思考☆0 ( 0.31 ) △0.05

    魔法威力☆0 ( 0.80 ) △0.03

    命中精度☆0 ( 0.81 ) △0.03

    魔力回復速度向上★1 ( 0.03 ) △0.04

    魔力視☆0 ( 0.38 ) △0.05


魔法  生活魔法☆0 ( 0.36 ) △0.02

    火魔法★1 ( 0.65 ) △0.01

    風魔法☆0 ( 0.44 ) △0.04

    氷魔法☆0 ( 0.37 ) △0.04


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)

    火神の祝福


================



いつの間にか魔力回復速度向上が★1になっていたのでフォノンに聞いてみたが、何時上がったのか分かってないらしい。たぶん昨日の鍛錬中に上がってたと思うんだが気付かなかったのか。正直上がったからってはっきり分かるスキルではないが。



◇ ◇ ◇



「オーク7体の反応だ。漏れたのを頼む」


「はい」


「分かった」


いつも通りに俺とフォノンが先に立ちながらゆっくり進む。7体の姿を確認したところでフォノンと一緒に魔法の準備に取り掛かる。


「⦅バレット⦆」


「ファイアランス」


バレットは4体を狙って4発撃ったうち2体を仕留めたが、1体は頭に傷を負わせたが生存、もう1体は無傷という内容だった。フォノンのファイアランスは1体の顔を撃ち抜き仕留めている。

負傷した1体は後回しにして、3体を俺とエレノアとリリーが受け持つ。


まだまだ技術不足の俺だが何度もオークの相手をしてきた経験は活きてきている。今はこちらから攻勢をかけて削り切って早めに倒すことにしている。その後、2人の戦闘を見守る。

リリーは危なげなく立ち回っているが、俺にはあんな綺麗な立ち回りは無理だな。

エレノアは俺みたいな手抜き気味な戦闘をせずに、着実に避けては攻撃を加える。それを愚直に進めている。


2人とも特に問題は無さそうなので、すっかり忘れていた負傷したオークを見てみると、いつの間にかフォノンが魔法でトドメを刺していた。



当初懸念していたオークの集団だが、今のところは規模に合わせて魔法で先制できているおかげで、順調に狩りを続けている。




奥に進むことにチャレンジし始めてから3日目。

やはり少し奥に入ってきた影響か、オークも10体近い集団が多くなってきた。


「今度は11体のオークの集団だ。俺がなるべく広範囲に魔法を撃って行動不能にするから、フォローを頼む」


「お任せください」


「分かりました」


「了解だ」



さすがに数が多くなると慎重に歩を進める。この数になると先制できないと大変になりそうだ。

前方を確認しながら歩くとオークが見えた。

こちらが見つからないうちに魔力を込め始めた。失敗が無いように準備しながら射程範囲内まで進む。ここまでくれば威力は十分だろう。


「⦅カッター⦆」


痛みに騒ぎ出すオークに向かってエレノアとリリーが進みそうになるのを一旦止めて、念のため、もう一度魔力を込めてから魔法を発射した。


「⦅カッター⦆」


これで多分平気だろう。2人に頷いて合図を送ると傷ついて倒れている集団に走っていった。あんまり鍛錬としてはよく無いのだが、数が多いと危険も増えるので心配になってしまう。



オークの始末をした後に次へと歩き出そうとした時、気配感知に新たな敵の姿を捉えた。今度は10体か、と一瞬弛みそうになった思考を引き締めた。数は10体だがそのうちの3体の気配が大きい。特に先頭を走ってくる1体は一際大きい。


「敵が10体急接近中だ。そのうちの3体は確実に上位種だ。急いで準備して注意してくれ」


「「「分かりました(分かった)」」」



3人に注意を促すと、急いで魔力を込めて魔法の準備を開始した。上位種というだけでも厄介なのに数が多い。最初の魔法攻撃で数を減らせないと正直危ない。


これまで以上に威力と数を出せるように魔力を込めながら待っていると、金棒と革の防具を装備したオークを先頭に次々とオークが飛び出してきた。気が逸るのを抑えて、威力が最大になるようにタイミングを計る。


「当たれ、カッター」


魔力を十分に込めた透明な刃は何本にもなってオークの集団に襲い掛かった。先頭を走っていたオークは無意識に両手をクロスして急所を守ったようだ。後ろのオークの集団では5体のオークがばたばた倒れ身動きできない状態になっている。それでも上位種3体、普通のオーク2体は傷を負いながらも立っている。先頭の上位種、仮にリーダーとして、オークリーダーはかすり傷みたいなものだ。


どうやらオークリーダーは俺のことを危険視したみたいで、真っ直ぐに俺に突っ込んできた。この1体に集中したいところだがそうもいかない。少し大きく離れてから他の状況を確認する。

リリーは上位種2体、仮にオークチーフとするか。この2体を受け持っている。さすがに避けるのに集中しているようだ。エレノアとフォノンで固まってオーク2体を相手にしている。ここもエレノアがフォノンを守りながらなので防戦一方となっている。


どうにか突破口を開かないとヤバイな。そう考えていると、オークリーダーが金棒を叩きつけてきた。さすが上位種。力も速さも普通のと桁が違うな。ゴブリンリーダーとは対戦したことがあるが、あれは正直個体の能力は大したことはなかった。


オークリーダーの攻撃を用心深く避けながら、こっちも攻勢をかけるチャンスを狙っているが、とにかく攻撃の切り返しが早い。足を狙って攻撃するが、すぐに金棒による攻撃が返ってくる。

俺がこの1体に時間を掛けるのはまずい気がする。まず現状を維持して他を潰そう。しかし何が出来るんだ? ・・・魔力を込める隙があるか分からないが、牽制ぐらいにはなるかもしれない。


覚悟を決めて、オークリーダーの金棒を避けた後、大きく後ろに下がる。急げ。魔力を込めてから、エレノアとフォノンが相対しているオーク2体のうちの1体に狙いを定めて魔法を発動した。


「⦅バレット⦆」


魔法が当たったオークは肩を吹き飛ばされて屈みこむ。このチャンスにフォノンがそのオークに火魔法を叩き込んで始末した。これで何とかなるか?


そちらの状況を気に掛け過ぎた結果、オークリーダーが至近まで近寄り金棒を叩き込んでくるのに気付くのが遅れた。避けようと思ったが瞬間に間に合わないことを理解して、咄嗟に左手をで受けるようにして後ろに飛んだ。金棒と左手の防具が凄い音を立てると同時に体が吹き飛ばされた。


「シオン様!」


「主さま!」


「主殿!」


3人から驚きの声で呼ばれたが、自分から飛んだおかげで思ったよりダメージは少ない。左手は完全に折れたようだが。


「俺は平気だ。自分の戦闘に集中してくれ」


俺は急いで叫んで目の前のことに集中するように促した。せっかく突破口を開くために無茶したのに、その行為のせいで崩壊したら、悔やんでも悔やみきれないからな。

とは言ったものの、左手が折れているのでもう大剣は振れない。こちらに向かってきたオークリーダーを見ながら大剣はアイテムボックスに仕舞う。動くと左手が痛いがそうも言ってられない。畳みかけるように振り回してくる金棒を慎重に避けながら、また一瞬離れるタイミングを伺う。大振りで地面を叩いたのを見て、素早く離れて魔力を込めていく。こんな短時間では威力は出ないだろうが、牽制にはなるだろう。


「⦅ファイアアロー⦆」


オークリーダーは魔法を嫌がって両手をクロスさせて耐えた。まあ、当たるのは当たるんだが大した威力は出てない。かすり傷程度だ。

そうして嫌がらせな作業をしていると、エレノアとフォノンの戦闘が終わったようだ。


「シオン様、戦闘に加わります」


「いや、こっちは時間稼ぎ程度はできる。エレノアとフォノンはリリーの助けに行ってくれ」


「ですが」


「俺よりリリーの方が大変だ。頼む」


「分かりました」


何とかこの戦闘が均衡を保っていたのも、リリーがオークチーフを2体受け持ってくれて、耐えてくれていたからだ。良かった。リリーが潰れなくて。


さて、状況は動いたから、もう少しオークリーダーと遊んでおくか。



それからオークリーダーに嫌がらせの魔法を撃ちながら待っていると、3人が駆け付けて全員でオークリーダーを囲んで叩きのめした。



「みんな怪我は無いか?」


「いや、それを主殿が言うのか。まずはその明らかに折れている左手を治してくれ」


リリーが真剣な表情で言ってきた。


「そうですよ~。主さま」


「シオン様が飛ばされた時は、本当に心配いたしました」


3人とも心配そうなので黙ってヒールを掛け回復させた。




「さすがにオークの上位種は強かったな」


「そうだな。さすがに2体相手では攻勢に出ることができなくて、どうこの状況を打破すべきか悩みながら戦っていた」


「良かったよ。リリーが2体抑えてくれていて」


「ですよね。私は魔法を準備するタイミングもなくて、エレノアさんに守られながら逃げていましたし」


「私ももう少し上手くできれば、シオン様にご無理をさせることもなく済んだのですが」


「まあいいじゃないか。全員無事だったんだしな。こんな危険なとこで話し合うのは止めて戻ろうか」


「「「はい(ああ)」」」


このまま話が続くと、益々エレノアの反省会みたいになってしまうので終ろう。

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