第20話 リリーとの鍛錬(2)
「主殿。お願いがある」
立ち合い稽古で受けた怪我をヒールで治した後に、少し休憩を取っている時にリリーが言った。
「なんだ?」
「魔法で私を攻撃してもらえないだろうか? もちろん大きな怪我を負うような魔法は遠慮してもらいたいが」
普通ならこの発言に引くところだが、言ってるのはリリーだからな。
「何か理由があるのか」
「さっきステータスを見たときに思っていたのだが、頑健強化が取れるなら魔抗強化が取れる可能性があるのではないかと。魔法は頑健強化と魔抗強化があるとダメージが軽減できると聞く。私の周りにはこれまで魔法を扱える者が少なかったので試すことができなかったのだ」
なるほど。魔抗強化というスキルもあるのか。そういえば魔法を使うことは考えていたが、魔法で攻撃されることを考えていなかったな。それにしても・・・
「魔法は意外に使える者は少ないのか?」
「そうですね。生活魔法を使える人はそれなりにいますが、属性魔法を使える人は貴重だと思います」
「ですね。私の村でも魔法を使える人はいませんでした。だから魔法が使えて嬉しいんです」
エレノアもフォノンも肯定した。やっぱりそうなのか。
スキルが取れるかもしれないし、軽い怪我なら回復魔法があるから大丈夫か。
「分かった、リリー。なるべく怪我をしにくい魔法を使う」
「ありがとう」
さて、問題はどの魔法を使うかだが。慣れているとはいえ土魔法は却下だ。危険すぎる。やはり風魔法がいいだろう。ボール系のなるべくダメージが集中しないように。
「風魔法を軽くぶつけるぞ。ちょっと見えないかもしれないが用心してくれ」
「分かった」
リリーが身構えたのを見て、風魔法を発動する。
”ウィンドボール”
かなり魔力を抜いた空気の塊は、リリーの体に当たり少しだけ後ろに押しただけで消滅した。
早速ステータスを確認する。
◎取得可能スキルリスト
魔抗強化
魔力視
なんか魔力視ってスキルも出てきたぞ。
「リリー、今魔法受けるときに何かしたか?」
「特に何もしていない。ただ、飛んでくる魔法が見えないか目に力を込めていたのだが、何も見えなかった」
それを【生体掌握網】が拾ったのか。そういえば俺はそんな風に意識したことが無かったな。
折角取得できるのだから取ってしまおう。3人のステータスを確認すると全員取得できるようなので取得する。
「リリー。魔抗強化と魔力視というスキルが取れたぞ。エレノアとフォノンも同じスキルが取れたから確認してみてくれ」
「ああ、確認した。それで主殿。さっきの魔法もっと吹き飛ばされるぐらいの威力に出来ないか?」
「それは出来るが、それぐらいの威力がいいのか?」
「それを耐えられるように鍛錬したい」
「シオン様、私も同じ魔法をぶつけてもらってもよろしいですか?」
「あ、私も!」
全員か? なんかリリーの気合が2人にも移ったみたいだな。
「いいのか? 吹き飛ばされるぐらいって少し痛いと思うぞ」
「「「大丈夫だ(です)」」」
俺は言われるままに、3つのウィンドボールを何回も3人に向けて撃つ作業を行った。
これ、俺も鍛えようと思ったらフォノンの熟練度が上がるのを待たないといけないのか。何だか3人に取り残される気分だな。
◇ ◇ ◇
「食材は余裕を見て30日分を買ったのか?」
宿屋に戻って夕食を食べながら、エレノアに今日の野営準備の内容を聞いた。
「はい。シオン様から移動を含めて20日を越えることはないとお聞きしていたので、念のため30日分にいたしました。後は大猪の肉ですね」
どれくらいまでここで鍛錬するかは決めてないが、終るにしろ、続けるにしろ、一度は王都に戻ってきて依頼の報告はするからな。
「それぐらい余裕があればいいな。残ってもマジックバッグに入れておけばいいしな」
「そうですね。ルクルスへの移動時にも使えるので無駄になりません」
そういえばダンジョン都市の移動について聞いてなかったな。
「ルクルスへの移動も、走ったりで鍛錬しながら行きたいと考えてるんだが、問題ないだろうか?」
主にイヤですって言える奴隷がいるのか?ってツッコミが入りそうだな。
「シオン様にお任せいたします」
「主さま、平気ですよ」
「特に問題は無い」
「分かった。まあまだ先の話ではあるが、ルクルスへは馬車なしで行くことにする」
実際、庶民や商人が持ってる馬車よりは走ったほうが早いんだよな。のんびり馬車に揺られてというのも旅としては悪くないのだが、それが何日にも渡るとなると話は別だ。
話しながらリリーが食べるのを見て思った。
「今更だが、リリーがこんな庶民の食べ物は食べられないとか言わなくて助かった」
「主殿。私はそんな傲慢なことは言わない。騎士学校時代も質素な生活をしていたし、そもそも私の家は下級貴族だったので贅沢な食事などとは無縁だった」
「そうなんだな」
下級貴族と言うけど、リリーって容姿はちょっと見ないほど綺麗なんだが、貴族って皆こんなに綺麗なんだろうか。
「リリーぐらい綺麗だと、同年代の男から人気だったんじゃないか?」
「そんなことはない。私は普通の貴族令嬢のようなドレスを着ることはほとんど無かったから、周りの男性から話し掛けられることもなく、遠巻きに見られていた。たぶん殺伐とした雰囲気でも出ていて忌避したのかもしれない」
遠巻きに見られていた? それって十分注目は集めていたんじゃないか? どんな意味での注目かはもう分からないが。
「男からしたら、リリーの容姿は魅力的だと思うから注目を集めていたと思うけどな」
「そうなのか」
本当に無頓着だな。この分だと周りのことをほとんど見てなかったんじゃないか?
部屋に戻った後は全員にクリーンを掛けて汚れを落とした。一応鍛錬の後にも毎回クリーンは掛けているので、そこまで汚れていることは無いが。
このパーティでは全員が生活魔法を覚えているから、そのうち、自分が思うときに使えるようになるはずだ。遠慮するなとは言うものの、やはり主にクリーンを掛けてとは言いにくいだろう。
ステータス
================
名前 ミナサリアリリー・ルイーゼ・ファラダム
種族 人間
年齢 17
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.00 )
剣術★1 ( 0.38 ) △0.05
大剣術☆0 ( 0.00 )
槌術☆0 ( 0.00 )
盾術★1 ( 0.50 )
身体 体力強化★1 ( 0.19 ) △0.04
頑健強化☆0 ( 0.08 ) △0.08
筋力強化★1 ( 0.07 ) △0.03
器用強化☆0 ( 0.04 ) △0.04
敏捷強化☆0 ( 0.06 ) △0.06
魔抗強化☆0 ( 0.07 ) △0.07
特殊 気配感知☆0 ( 0.00 )
気配希薄☆0 ( 0.00 )
解体☆0 ( 0.00 )
魔力視☆0 ( 0.05 ) △0.05
遠見☆0 ( 0.00 )
魔法 生活魔法☆0 ( 0.05 ) △0.05
加護 生体掌握網 (スレーブ動作中)
成長促進 (スレーブ動作中)
================
横になりながらリリーのステータスを見ている。
鍛錬で関係するスキルについては軒並み上がっていっている。まあ、ここら辺はエレノアとフォノンも同じだったから特に思うこともないが、頑健強化と魔抗強化、魔力視がいい感じに上がっているな。やっぱりウィンドボールを当てたのは効果が大きいんだな。3人とも吹っ飛んでいたしな。
ステータス
================
名前 エレノア
種族 人間
年齢 20
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.01 )
槌術☆0 ( 0.30 )
盾術☆0 ( 0.29 )
身体 体力強化☆0 ( 0.58 ) △0.05
頑健強化☆0 ( 0.43 ) △0.07
筋力強化☆0 ( 0.52 )
器用強化☆0 ( 0.40 )
敏捷強化☆0 ( 0.51 ) △0.05
魔力強化☆0 ( 0.68 ) △0.03
魔抗強化☆0 ( 0.06 ) △0.06
特殊 料理★2 ( 0.17 )
調合☆0 ( 0.00 )
良否判定☆0 ( 0.41 ) △0.02
真偽判定☆0 ( 0.41 ) △0.02
気配希薄☆0 ( 0.23 )
解体☆0 ( 0.57 )
魔法威力☆0 ( 0.00 )
魔力回復速度向上☆0 ( 0.76 ) △0.05
魔力視☆0 ( 0.06 ) △0.06
魔法 生活魔法☆0 ( 0.65 ) △0.03
時空魔法☆0 ( 0.49 ) △0.03
加護 生体掌握網 (スレーブ動作中)
成長促進 (スレーブ動作中)
================
ステータス
================
名前 フォノン
種族 獣人 (狐系)
年齢 16
スキル
戦闘
身体 体力強化☆0 ( 0.42 ) △0.05
頑健強化☆0 ( 0.48 ) △0.07
器用強化☆0 ( 0.16 )
魔力強化☆0 ( 0.51 ) △0.05
魔抗強化☆0 ( 0.08 ) △0.08
特殊 気配希薄☆0 ( 0.08 )
解体☆0 ( 0.25 )
並列思考☆0 ( 0.00 )
魔法威力☆0 ( 0.56 ) △0.05
命中精度☆0 ( 0.56 ) △0.06
魔力回復速度向上☆0 ( 0.69 ) △0.06
魔力視☆0 ( 0.08 ) △0.08
魔法 生活魔法☆0 ( 0.29 ) △0.02
火魔法★1 ( 0.50 ) △0.05
風魔法☆0 ( 0.19 ) △0.02
氷魔法☆0 ( 0.19 ) △0.02
加護 生体掌握網 (スレーブ動作中)
成長促進 (スレーブ動作中)
火神の祝福
================
今日は急に考えた鍛錬だから戦闘スキルはほとんど上がっていない。魔法の鍛錬ばかりだったし。そしてエレノアとフォノンも頑健強化と魔抗強化、魔力視が素晴らしい伸びだ。まさか2人がリリーと一緒に魔法を受けたいというとは思わなかったが、鍛錬内容に間違いは無かったようだ。これは本当にフォノンに風魔法の熟練度を上げてもらって、俺も鍛錬に加わりたいが。
「主殿、このステータスというのは良いな。これまでも鍛錬自体は嫌いでは無かったが、ここまで結果が分かるというのは興奮してくる」
「リリーもそう思うか。やっぱりステータスを見るのは楽しいよな」
リリーと2人でステータスの数字を見ながら鍛錬内容の検証をしていると、エレノアが近づいてきて言った。
「お二人とも、そろそろよろしいでしょうか」
「あ、ああ」
俺が頷くと、フォノンが近づいてきて服を脱がせ始めた。エレノアはリリーに近づいて服を脱がせ始める。
「エレノア、私は服ぐらい自分で脱げる」
「リリーに任せていたら時間が掛かります。私が補助してあげます」
「あ、そんなにいきなり。少し待ってくれ」
リリーは顔を真っ赤にしながらエレノアを止めようとしているが、問答無用で脱がされていった。
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