第17話 大猪狩り


森の中に入り2人には熟練度を上げる意味もあり、なるべく気配を消す心持ちで歩いてもらっている。平原とは違い周りを木に囲まれた森は、一種の圧迫感を感じてしまう。2人も無意識に重圧を感じているのか慎重に歩を進めていた。


グラスウルフを倒した翌日は大猪を倒す目的で王都の南の先にある森に来ている。念のために双間方位魔器の片方を森の入口に埋めて探索に入った。戦闘などすると簡単に方角など分からなくなりそうだ。

遠くから見て思っていたがこの森は十分に深い。ロマナの東に広がっていた深き森ほどではないとしても。



「やっぱりコイツはいるか」


気配感知しながら探索していたがこれまでに感じたことのある気配を捉えた。ここは魔力溜まりではないはずだが、色々な所から移動してきそうではあるな。

この気配はたぶんゴブリンだ。


「エレノア、フォノン。この先にゴブリンらしき気配が5体いる。良い鍛錬になるから2人で倒してみてくれ」


「分かりました」


「任せてください」


「なるべく見つからないように近づく。フォノンは魔法の射程に入ったら火魔法で倒してもいいぞ。但し、森が火事になるような魔法はダメだ」


「はい。ファイアアローを使います!」


フォノンのしっぽが元気だ。



慎重に進んだおかげか、敵に気付かれる前に近寄れた。フォノンがメイジスタッフを構えて準備を始めた。


「ファイアアロー」


奇襲の時は声に出さないほうがいいとは思うんだが、本人が慣れることが重要だからまだいいか。

フォノンが放った魔法は1体のゴブリンの体に突き刺さり、力を無くした体はそのまま真後ろに倒れた。


「ギャギャ」


いきなり攻撃を受けて慌てているのか何か叫んでいる。


”クイック”


俺は今回見学なので、エレノアにクイックを掛けて援護する。

エレノアは動きが速くなったことが分かったので、一番近い敵に走り寄って先制でメイスを叩きつけた。頭を割られたそのゴブリンはそのまま倒れた。すぐ隣にいた敵が棍棒を振り上げて殴ってきたが、盾で上手く受け流して素早くメイスを叩きつけると、そのゴブリンも頭を割られた。

そして残り2体になった敵に向き合うと、2体ともエレノアに突っ込んで来た。


「ファイアアロー」


エレノアに向かっていた敵の1体はフォノンの魔法で仕留められていた。

残り1体となった敵の棍棒をエレノアは慎重に見極めて躱すと、その頭にメイスを叩きつけた。


エレノアには守り重点で攻撃をさせるつもりも無かったが、普通に戦えてるな。本人が嫌がってなければ俺は助かるからいいんだが。



「ゴブリンは問題ないな」


「はい。平原ウサギよりも戦い易い感じがしました。見失うことがない状況というのもありますが」


「魔法も当てやすかったです」


「この森にもゴブリンが多そうだし、鍛錬のつもりで少数のゴブリンは2人に任せるな」


「お任せください」


「もちろんです」


魔物討伐依頼の制限が掛かる魔物なのに、平原ウサギより狩りやすいという事実。まあ上位種とか数が絡んでくるとそうとも言えないが、後は地形的な理由も絡んでるからな。



それからも少数単位のゴブリンを倒しながら探索範囲を広げていると、大きな気配を感知が捉えた。

これは間違いなく大猪だろう。もしかしたら似た気配の大物がいるのかもしれないが、俺が知る中では大猪だ。


「この先に大猪と思われる気配がある。慎重に近づいて姿を確認する」


「「はい」」


さて、どう倒すかだが。あんまり賢い方法とは言えないがモウモウの時みたいに正面から頭を潰すか。たぶん出来そうな気はするんだがな。


ゆっくり近づいていくと、少し遠くに大猪の姿が見えた。ここからなら遠距離魔法で倒せないこともないとは思うが、なるべく肉が傷つかない方がいいんだよな。やっぱり頭を潰すか。


「俺が大猪の正面に立って頭を潰して倒してみる。たぶん問題はないと思うが、一応離れて警戒していてくれ」


「分かりました。お気をつけて」


「頑張ってください!」


2人が少し離れてついてきているのを確認して前に進む。

更に近づいて行った後に、土魔法で石を軽くぶつける感じで大猪に撃った。


「ブギィィィィ」


怒った感じの大猪が辺りを見回して俺を発見すると、ドスドス音が響いてきそうな感じでだんだん加速しながら突っ込んできた。目の前で見るこの迫力。まさにダンプカーが目の前に突っ込んでくるぐらいの恐怖がある。


大剣を振りかぶって目の前に近づきつつある迫力と戦う。これ失敗したら痛そうだなという雑念が浮かんできたが、打ち消して集中した。


もうすぐぶつかるという一瞬に、全ての力で大剣を大猪の頭に振り下ろした。「バギャ」という潰れる音が間近でしたが、反動で吹き飛ばされそうになるのに抗い、力を失った大きな体が流れてくるのを押し留める作業に必死になっていた。モウモウより強烈だな。あっちも突進力は凄いんだが、大猪の大きさが大きさだ。


「うわ~。大きいですね」


「シオン様。お疲れ様でした」


すぐにフォノンの呑気な声と、エレノアの労わる声が聞こえてきて、力を抜いて大猪を見た。

なんとか仕留めることが出来たようだ。狩りとしては簡単な部類になるのかもしれないが、一歩間違えば吹き飛ばされるのは俺の方だから、ぶつかりそうになる一瞬は本当に緊張する。


「大猪は失敗さえしなければ短時間で狩れるな。もっと探索して狩っていくか」


大猪をマジックバッグに収納しながら2人に言った。


「大猪はシオン様にお任せするしかありません。その分、ゴブリン退治をお任せください」


「ですです。ゴブリン頑張ります」


大猪は2人に任せると俺が心配だから、その役割分担になるだろうな。



この日は大猪を5体倒したところで森を後にした。

1日の成果は大猪5体とゴブリン21体で、小金貨1枚、小銀貨6枚、大銅貨5枚となった。稼ぎで言えば大猪を探し回ったほうがいいのだが、ネックなのは戦闘が少なくて鍛錬になりにくいことか。だが貯金にはこっちが良い。

戦闘時間も短いし、朝、普通に鍛錬してから狩りに行くことにするか。



◇ ◇ ◇



残り3日間で大猪22体とゴブリン49体倒すことができた。朝の鍛錬も加えられたので、俺的には十分満足な3日間だ。

明日はメンバーが1人加わることになるから、本格的に遠征して鍛錬ができるようになる。どんなメンバーを紹介して貰えるかは分からない。リグルドが変な奴隷を紹介するとは思えないから、そこは安心していいのかもしれないが。



ベッドに横になりながら3人でステータスの確認をしている。



ステータス

================


名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )

    剣術★1 ( 0.93 ) △0.01

    大剣術★1 ( 0.45 ) △0.04

    盾術☆0 ( 0.30 )


 身体 体力強化★1 ( 0.73 ) △0.02

    頑健強化☆0 ( 0.79 )

    筋力強化★2 ( 0.29 ) △0.03

    器用強化★1 ( 0.34 ) △0.02

    敏捷強化★1 ( 0.77 ) △0.02

    魔力強化☆0 ( 0.08 ) △0.01


 特殊 気配感知★2 ( 0.59 ) △0.04

    気配希薄☆0 ( 0.84 ) △0.02

    解体★2 ( 0.02 )

    並列思考★1 ( 0.93 ) △0.02

    魔法威力☆0 ( 0.43 ) △0.03

    魔力回復速度向上☆0 ( 0.16 ) △0.01

    命中精度☆0 ( 0.41 ) △0.03

    遠見☆0 ( 0.23 ) △0.02


魔法  生活魔法★2 ( 0.63 ) △0.01

    土魔法★1 ( 0.31 ) △0.02

    水魔法★1 ( 0.23 ) △0.02

    火魔法★1 ( 0.23 ) △0.02

    風魔法★1 ( 0.24 ) △0.02

    氷魔法☆0 ( 0.26 ) △0.03

    雷魔法☆0 ( 0.18 ) △0.03

    回復魔法★1 ( 0.24 ) △0.02

    時空魔法★1 ( 0.77 ) △0.03


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


================



俺は、剣術と並列思考が★2に上がりそうだ。2つとも直接戦力に絡んでくるスキルだけに期待が持てそうだ。今はメインが大剣術なのだが無関係ではないだろう。ただ、どうしても戦闘では大剣を重視してしまう傾向があって、魔法スキルの熟練度の伸びが思ったより鈍い。



ステータス

================


名前  エレノア

種族  人間

年齢  20


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.01 )

    槌術☆0 ( 0.30 ) △0.05

    盾術☆0 ( 0.29 ) △0.04


 身体 体力強化☆0 ( 0.53 ) △0.04

    頑健強化☆0 ( 0.36 ) △0.02

    筋力強化☆0 ( 0.52 ) △0.04

    器用強化☆0 ( 0.40 ) △0.03

    敏捷強化☆0 ( 0.46 ) △0.04

    魔力強化☆0 ( 0.65 ) △0.04


 特殊 料理★2 ( 0.17 )

    調合☆0 ( 0.00 )

    良否判定☆0 ( 0.39 ) △0.02

    真偽判定☆0 ( 0.39 ) △0.02

    気配希薄☆0 ( 0.23 ) △0.02

    解体☆0 ( 0.57 ) △0.05

    魔法威力☆0 ( 0.00 )

    魔力回復速度向上☆0 ( 0.71 ) △0.05


魔法  生活魔法☆0 ( 0.62 ) △0.03

    時空魔法☆0 ( 0.46 ) △0.03


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)


================



ステータス

================


名前  フォノン

種族  獣人 (狐系)

年齢  16


スキル

 戦闘 


 身体 体力強化☆0 ( 0.37 ) △0.04

    頑健強化☆0 ( 0.41 ) △0.03

    器用強化☆0 ( 0.16 ) △0.02

    魔力強化☆0 ( 0.46 ) △0.06


 特殊 気配希薄☆0 ( 0.08 ) △0.02

    解体☆0 ( 0.25 ) △0.04

    並列思考☆0 ( 0.00 )

    魔法威力☆0 ( 0.51 ) △0.06

    命中精度☆0 ( 0.50 ) △0.07

    魔力回復速度向上☆0 ( 0.63 ) △0.06


魔法  生活魔法☆0 ( 0.27 ) △0.02

    火魔法★1 ( 0.45 ) △0.06

    風魔法☆0 ( 0.17 ) △0.02

    氷魔法☆0 ( 0.17 ) △0.02


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)

    火神の祝福


================



「2人とも熟練度が結構上がってきたから、このままいけば★1も近いな」


「そうですね。こうして数字で見ると頑張ってきた実感が湧いて参ります」


「村にいる時はこんな魔法を使えるなんて思ってもみなかったです」


フォノンは魔法が好きそうだ。それに戦闘中も基本は魔法攻撃だから魔法関連の伸びが凄いな。まあエレノアが守ってるから魔法が撃ちやすいというのもあるんだが。


このまま全員で鍛錬を行って、ダンジョン都市に行く前には熟練度をある程度は上げておきたいところだ。

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