第14話 火傷の完治
予定の鍛錬内容を終えて、少し早めに宿屋に戻ってきた。
まだ夕食までは時間があるので、昨日に引き続き火傷の治療を行う予定だ。
「フォノン、また火傷の治療をするからベッドに寝てくれるか」
「はい、主さま。お願いします」
フォノンがベッドに横になるのを見てからエレノアに言った。
「また意識を失うと思うから、後を頼むな」
「お任せください。シオン様」
昨日の2回の治療で、右手の三分の二は治っているので今回の治療で右手は全快するはずだ。一つ深呼吸してから、ヒールを順番に発動していく。いつもの事だが多重起動状態をキープしていると頭がキリキリと音を立てそうなぐらい痛む。それでも時間の感覚が分からなくなるぐらい耐えていると、雑音だらけの頭の中でピコンっと音が鳴り、ヒールの効果が一気に上がった。しばらくその状態でいると意識を失うことなく、右手の治療が完了した。
フォノンの右手を改めて見ると、綺麗に火傷痕が無くなっていた。
「右手の治療終わったようだな」
「ほんとです。右手が綺麗になりました」
フォノンの声にも喜びが溢れており、右手を掲げながら、くるくる腕を回して確認している。
「フォノン、良かったですね。・・・シオン様、体の方大丈夫なのでしょうか?」
エレノアも意識を失うことを想定していたので、不思議そうにこちらを見ている。
「ああ、たぶん途中で回復魔法が★1になって効果が上がったみたいだ」
確認するまでもないとは思うが見てみる。
回復魔法★1 ( 0.05 ) △0.19
さすが★1の効果だ。まだ魔力を使い切っていないのに右手は治った。意識を失う覚悟だったし、余った魔力で左手のほうを治療するか。
「フォノン、そのままベッドに横になってくれ。魔力がまだ大丈夫だから左手のほうの治療も進めるぞ」
「はい、分かりました」
何だかこっちまで元気になるような弾んだ声だ。
「どこまで治療が進むか分からないが、残りの魔力を使う予定だから今度こそ気を失うとは思うが」
「はい、お任せください」
後はエレノアに任せよう。
ヒールを発動していくと、これまでとは見た目から違う。効果はさっきので分かっているので焦点を絞って次々に発動していく。表皮の下まで浸透させながら少しずつ移動させていくと、左手の痕の半分ぐらいまできたところで、目の前が真っ暗になり意識を失った。
目を開けると少し暗くなってきたのか、天井付近に生活魔法のライトが浮かんでいるのが見えた。エレノアか?
「シオン様、目を覚まされましたか?」
「ああ、少し回復したみたいだな」
「主さま、手の治療ありがとうございました」
フォノンの左手を見ると、意識を失う前に見た通り、火傷の痕が半分までになっていた。
「後1回治療すれば完治しそうだな」
「はい。火傷は諦めていたので、本当に嬉しいです」
女性の傷痕だからな。気丈に振舞っていても、手の火傷痕を見るたびにショックだったろう。ましてや補助なしに食事も出来ないレベルだったしな。
「下に降りて夕食にしてもいいが、どうせなら部屋に運んでもらって3人で食べるかな」
「分かりました。運んでもらえるように頼んで参りますね」
「私も行きます」
別に1人でいいはずだが、2人で部屋から出て行った。まあ仲が良いのはいいことだな。
今回の食事からフォノンはエレノアの補助なしで自分で食べていた。火傷になる前は自分で食べていたのだし変なことではない。久しぶりに右手を使って食べることが嬉しいのか、ゆるふわな綺麗な顔に笑顔を浮かべて食べていた。
食後に少し休憩をした後に、今日2回目の治療を行うことにした。
まだ魔力は全快ではないが、今の回復魔法なら十分に治療できるはずだ。
「一応、今回の治療でフォノンの火傷は完治するはずだ」
「はい、お願いします」
フォノンはベッドに横になりながら、俺をじっと見つめた。
エレノアを見て念のために言っておく。
「たぶん大丈夫とは思うが、もし気を失うことがあったら生活魔法の鍛錬をした後に適当に寝てくれ」
「はい」
さて、火傷の治療もラストのはずだ。気合を入れよう。
フォノンの左手の残った痕を見ながら、ヒールを発動していく。部屋中がヒールの光で照らされていく中、黙々と発動させていく。そして多重起動したまま、痕に焦点を当てて少しずつ移動していく。どれくらい時間は経っただろうか。最後の痕を治療し終えて、ヒールを解除していく。
何とか魔力は持ったようだ
「終わったぞ。火傷は完治したはずだ」
「ありがとうございました。主さま」
フォノンが目に涙を溜めて、抱きついてきた。俺はそれに応えながら背中をさすってやる。
「フォノン、おめでとう。そして、シオン様、お疲れ様でした」
エレノアが微笑みながら言った。
その後は鍛錬してから寝るところだが、俺は魔力を相応に消費しているので今日は止めておいてステータスの確認をする。2人は生活魔法の鍛錬だ。
ステータス
================
名前 シオン
種族 人間
年齢 16
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )
剣術★1 ( 0.85 ) △0.01
大剣術★1 ( 0.19 ) △0.02
盾術☆0 ( 0.27 )
身体 体力強化★1 ( 0.62 ) △0.02
頑健強化☆0 ( 0.79 )
筋力強化★2 ( 0.12 ) △0.02
器用強化★1 ( 0.21 ) △0.01
敏捷強化★1 ( 0.63 ) △0.02
魔力強化☆0 ( 0.08 ) △0.04
特殊 気配感知★2 ( 0.30 ) △0.01
気配希薄☆0 ( 0.73 )
解体★2 ( 0.00 )
並列思考★1 ( 0.76 ) △0.15
魔法威力☆0 ( 0.16 ) △0.05
魔力回復速度向上☆0 ( 0.08 ) △0.03
命中精度☆0 ( 0.17 ) △0.03
遠見☆0 ( 0.07 ) △0.02
魔法 生活魔法★2 ( 0.55 ) △0.01
土魔法★1 ( 0.16 ) △0.03
水魔法★1 ( 0.11 ) △0.02
火魔法★1 ( 0.11 ) △0.02
風魔法★1 ( 0.12 ) △0.02
氷魔法☆0 ( 0.11 ) △0.02
雷魔法☆0 ( 0.03 ) △0.02
回復魔法★1 ( 0.09 ) △0.23
時空魔法★1 ( 0.57 ) △0.03
加護 転移ランダム特典 金一封
転移特典 言語理解
転生ランダム特典 生体掌握網
転生特典 成長促進
================
並列思考と回復魔法以外は、鍛錬した分妥当に上がってるな。フォノンも火傷が完治したし、依頼を絡めて鍛えていけるから、これからまた多く稼ぎたいところだ。
少し今後の予定について考えていると、2人の生活魔法の鍛錬も終わったようなので、全員にクリーンを掛けてから寝ることにした。
ベッドに入ると、両側からエレノアとフォノンが入って来た。
「シオン様、フォノンの治療も終わりましたので、今日からご奉仕させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ああ」
エレノアの色気に抗える男はいないのではないだろうか。そんなことを思っていると、フォノンも俺の手に抱きつきながら話しかけてきた。
「主さま。私は初めてで上手に出来るか分からないけど、精一杯頑張りますから」
「えーと、無理せずにな」
「はい」
どうやら、これから熱い戦いが始まるみたいだ。
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