第13話 フォノンの鍛錬(2)


外に出てから俺とエレノアで軽く走りながら周囲の状況を調べた。さすがに王都周辺。別に危険なこともなく走れそうだ。

フォノンを一人にするのは不安なので、エレノアと交代で走ることにした。まずは俺が走っている間、エレノアとフォノンには生活魔法の鍛錬をしてもらっている。その後、エレノアが走っている間、俺は雷魔法の鍛錬を行い、フォノンには引き続き生活魔法の鍛錬をしてもらった。

雷魔法は将来を思うと期待が膨らんでくるのだが、今は指先から少しだけ稲妻の可愛らしいのが放出されるだけだ。これはこれで使えるか? まあ鍛錬あるのみだ。


エレノアが戻ってきて休憩した後に、俺とエレノアで大剣とメイスを振って鍛える。フォノンはひたすら生活魔法だ。


次に魔法の鍛錬に入るのだが、今日は今後どんな魔法を使えるのかの実演をしようと思う。俺がこんな魔法を使えるというのを見せたら、魔法のイメージも持ちやすいかもしれない。


「まずはエレノアに、俺が今使える時空魔法を体験してもらって参考にしてもらおうと考えている。実際は★1にしないと使えないとは思うが」


「分かりました、シオン様」


「まず掛けるのは、俺がクイックと名付けている魔法だ。エレノアに掛けるから、その後走ったり、メイスを振ったりしてもらったら効果が分かると思う」


「はい」


言葉で説明するより実体験した方が早いな。


「⦅クイック⦆」


エレノアにクイックを掛けると、恐る恐る走り出した。なるほど。クイックを受けて走ると外から見るとこんな風に見えるのか。所々早回しになっているように見える。さすが時間短縮。


「何だか自分の体じゃないような感じがしますね」


エレノアはメイスを振りつつ、そんな風に感想を言った。


「クイックは仲間に掛けると良い補助になるので状況を考えつつ使用することを覚えてくれ。次にクイックとは逆の効果の魔法なんだが、こっちは仲間に掛ける魔法じゃない」


時空魔法はクイックと一緒に使えるようになった魔法がある。一応スローと名付けてあるが、効果としてはデバフに該当するだろう。どっちかというとクイックを掛けて斬りかかってばかりなので、実戦で使ったことがない。


「本来は敵に掛ける魔法なのだが、効果を確かめるためにエレノアに掛けるので、体験してみてくれ」


「⦅スロー⦆」


スローが掛かると先程と同じように走り出したが、はっきりと動きが遅い。これはこれで敵に対して使えばかなり有効そうだ。ただ、こういうデバフは抵抗されたりして掛からないケースもありそうだ。

エレノアが戻ってきたのでクイックを掛けて相殺して魔法を打ち消した。


「どうだった?」


「これは自分が思ったように体が動かなくて、凄くもどかしい感じがしました」


「とりあえず今の段階で俺が使える時空魔法はこの2つだ。エレノアはこれを使えるように頑張ってくれ。何かあればこれ以外に試してみるのもいいぞ」


「はい、努力いたします」


「次にフォノンは、火魔法と風魔法と氷魔法が使えるからな。俺が一通り属性魔法を見せるから、それを参考にして鍛えてみてくれ」


「はい、主さま」


土魔法のバレットから順番に魔法を撃っていく。実戦では使いやすさから土魔法のバレットとニードルばかり使っている気がする。戦闘中にどうしても使いやすい魔法に偏っているな。

これに加えて、フォノンの防御用に2つをイメージして作ってみた。風の壁ウォールと、風の盾シールドだ。受け止めるというよりは風の流れで受け流すことをイメージした。


「これを参考にして使ってみてくれ。フォノンなりに工夫して変化させて使っても問題ない」


「分かりました。少し試してみてもいいですか?」


「ああ、いいぞ」


フォノンの属性魔法は☆0だからたぶん最初はショボイだろう。俺も最初使った時は本当にショボかった。まあ☆0時点での威力は分かっていたからショックはなかったが。


「ファイアウォール」


フォノンがそう叫ぶと、高さ2mはありそうな炎の壁が出現した。


「はぁ?」


思わず驚きの声を出すぐらいに、目の前に出現した炎の壁に驚いた。なんで初めて出した火魔法なのに、こんなまともな魔法になってるんだ? 昨日取得したばかりだから☆0だよな? 急いでフォノンのステータスを確認してみる。



ステータス

================


名前  フォノン

種族  獣人 (狐系)

年齢  16


スキル

 戦闘 


 身体 体力強化☆0 ( 0.00 )

    頑健強化☆0 ( 0.00 )

    器用強化☆0 ( 0.00 )

    魔力強化☆0 ( 0.04 ) △0.03


 特殊 気配希薄☆0 ( 0.00 )

    解体☆0 ( 0.00 )

    並列思考☆0 ( 0.00 )

    魔法威力☆0 ( 0.00 )

    命中精度☆0 ( 0.00 )

    魔力回復速度向上☆0 ( 0.06 ) △0.04


魔法  生活魔法☆0 ( 0.06 ) △0.04

    火魔法★1 ( 0.00 ) △1.00

    風魔法☆0 ( 0.00 )

    氷魔法☆0 ( 0.00 )


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)

    火神の祝福


================



1回火魔法使ったら、★1になってるぞ。なんだそのチートは。


「フォノン、次は風魔法でやってもらっていいか」


「はい。ウィンドウォール」


風魔法で壁を発動すると、目の前をそよ風が吹いている。ああ、やっぱりショボイ魔法だ。ということは全般的に魔法の威力が上がってるわけじゃなく、火魔法限定か。関係しそうなのは【火神の祝福】だな。フォノンは火魔法が別格で扱えるということだ。

とはいえ、風魔法と氷魔法の熟練度も上げてもらうがな。状況によっては火魔法は使えなかったり、効果がない可能性もある。


3人でそれぞれの魔法を鍛錬して、2人には魔力が厳しくなってきたら休憩を取るように言ってある。フォノンの火魔法は普通に戦力になりそうなので、まずはファイアアローで的に向けて命中精度を上げるように何度も撃ってもらった。


自分も魔法を2つ以上同時に撃ちながら、ふと疑問に思ったことをフォノンに聞いてみた。


「フォノンの両手って火傷だよな。火が怖いとかはないのか?」


「ん~と。特に火は怖くないです。小さい頃から火は身近だったこともあって怖いって感情はないです」


それなのに火傷したのか。もしかして火遊びとかして火傷したとか? まあいいか。



横目でフォノンのファイアアローを見るが、威力は申し分ない。俺と同じで発動時間が掛かるのと、命中精度が発展途上というところだ。平原ウサギ狩りでは毛皮がダメになるので使えないが、ゴブリンやオーク相手であれば、どんどんぶち込んで構わないので、今から楽しみだ。

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