第6話 エレノアの鍛錬(2)


昨日に引き続き朝食の後に武器屋に向かっている。武器も防具も扱っているが武器屋だ。まあ呼び方はどうでもいいか。昨日の鍛錬からエレノアには刃が付いてない武器のほうが良いような気がする。別にエレノアには先頭に立って戦ってもらうつもりはないから、こだわる必要はないのだが、念のためだ。


「いらっしゃいませ」


「武器を少し見させてください」


「どうぞ、必要な物をご覧ください」


エレノアと一緒にメイスが並ぶ場所を見てみる。色々な長さ、形状の物が置いてある。


「エレノア、手に持って自分に合いそうな物を選んでくれ」


「分かりました」


エレノアは1つ持っては重さを調べているようだ。まあ、鉄の塊だから重いからな。装備できる物かどうか調べるのは大事だ。筋力強化の熟練度が上がれば平気になるような気もする。


「これでお願いします」


選んだのは、ヘッド部分が長方形のようになっている比較的軽そうな物だ。


「お買い上げありがとうございました」




昨日と同じく北門から出てまずは外壁沿いを走ることから開始した。

昨日今日でいきなり成果がでるわけではないが、昨日の鍛錬で慣れたのか、最初からそこそこスピードを出して走っているが問題なさそうだ。俺の方も筋力強化が★2に上がったのもあるだろうが、前より重さを感じずに走れている。ただ、これ以上重しになるものもないからな。


その後は魔法の鍛錬を行う。

エレノアには昨日に続き生活魔法をずっと使い続けてもらった。但し、昨日みたいに魔力を全部使い切るのではなく、休み休み魔力を回復させながら使って貰っている。

俺の方は、昨日と同じく地味に氷魔法を使った後は、的に向けて各属性魔法を撃つ鍛錬をした。昨日と変えたのは、2つの属性を同じように撃ち出せるようにする鍛錬も開始した。はっきり言ってまだ単体さえ満足に使えてないのに、欲張り過ぎている気がしないでもないが。


一通り魔法の鍛錬が終わった後は、武器の素振りを行う。

まずエレノアに少しの間メイスを振ってもらってスキルが出るかどうか確認してみた。



◎取得可能スキルリスト

 槌術

 魔力回復速度向上



ん? 槌術は予想通りなんだが、魔力回復速度向上というのも追加されている。たぶんエレノアの方が拾ったんだと思うが、鍛錬内容は昨日とほぼ一緒だよな。

とりあえず取得してから鍛錬を続けることにした。


エレノアはメイス、俺は大剣を無心に振り続ける。俺の方は慣れるためもあって、クイックも併用したりして続けた。



「エレノア。昨日と同じく平原ウサギを狩るが、メイスを振れる余裕があったら攻撃してもいいぞ。昨日も言ったが別に倒す必要はない」


「はい。出来るかはわかりませんが、やってみます」


俺もショートソードとバックラーに装備を変更して準備する。


気配感知を使いつつ歩いていると3体の平原ウサギの集団を見つけた。2体は俺が倒して1体をエレノアに任せるか。


「3体の集団を見つけた。俺が2体を倒すから残り1体を頼む」


「分かりました」



エレノアと一緒に近づくと、先に2体が飛び掛かってきたので、1体の喉を斬り裂き、1体は盾で叩き落とした。その後遅れて突っ込んできた1体は避けてスルーしてエレノアに任せることにする。叩き落とした1体の首にも剣を突き刺してトドメを刺す。倒した2体をアイテムボックスに回収してから、すぐに後方に下がって戦況を見つめた。


エレノアは正面からきたのを盾で何とか防ぎ、平原ウサギの行方を追いかけた。右側から突っ込んできたのをメイスを振って払った。

攻撃というよりはメイスで防御した感じか。昨日だったら短剣を空ぶって体に攻撃を受けてたんだが、こっちのが良さそうだな。

それからも何度も攻撃を防ぎ、何度も攻撃を喰らってから、たまたまだろうがメイスのヘッドが平原ウサギの頭に当たって、パタっと倒れた。


「メイスに変えた感じはどうだった? 見てる分には問題なさそうだったが」


「はい。短剣よりこちらのほうが扱い易い感じがします」


まだまだ大丈夫そうなのでエレノアを治療してから狩りを続行した。

エレノアも平原ウサギの動きが少し分かってきたのか防御できることが多くなってきた。平原ウサギが倒せたのは最初の1回だけだったが、合計で9体を倒したところで今日の鍛錬を終了した。



◇ ◇ ◇



少し早めに鍛錬を終えたのは明日からの王都行きの準備をするためだ。

まずは西門の停留所に乗車券の購入に来た。


「すみません。明日の王都行き馬車の乗車券を買いたいんですが」


「はい。お二人様ですか?」


「そうです」


「はい。こちら乗車券となります。お二人様で大銀貨2枚ですね」


「王都行き馬車初めて使うんですが、何か注意点ありますかね?」


金を支払いながら念のために聞いておいた。


「そうですね。5泊のうち2泊は道沿いで外での宿泊になりますので、その準備をお願いします。お客様の中にはそのまま馬車で寝る人もいますが、あまり快適ではありません。残り3泊は町での宿泊になります。また食事や宿泊についてはお客様の自己負担となっております。外での移動、宿泊に関しましては護衛の冒険者がついていますので心配はいりません」


「分かりました。ありがとうございます」


「あ、出発は8時になりますので遅れないようにお願いします」


店を出てから、まず準備するものを考える。


「外での宿泊の準備をしないといけないか。エレノア何か買うものがあるか?」


やっぱりテントとかかな。


「食事の準備は必要だと思います。後は、シオン様はアイテムボックスをお持ちなので、携帯ルームを購入するのはいかがでしょうか」


「携帯ルーム?」


「はい。小さな小屋みたいな物で、外を移動することが多くマジックバッグを持っている方には人気があります」


なるほど。マジックバッグがあれば小さい家を持ち歩くことも問題にならないか。


「問題はどこで売っているかか」


「木工職人のところか、もしくは、品物が品物なので商業ギルドにも手持ちがあるかもですね」


木工職人は分かりにくいから商業ギルドに行ってみるか。

一度乗車券を買った建物に入り商業ギルドの場所を確認した。



「ようこそ、商業ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか」


対応してくれたのはスーツっぽい制服を着た若手の男だ。


商業ギルドは、町の南側に位置する領主館に近いところに建てられており、立派な建物ですごく目立っている。基本的に超法規的権力には近づきたくない俺としては、あまり来たくないエリアだ。


「こちらで携帯ルームって取り扱っていますか?」


「ええ、何点か在庫がありますが、大きな物は取り扱っておりません」


「いえ、旅の少人数で使う予定の物なので、そこまで大きくなくて大丈夫です」


「そうですか。ではご案内致しますのでこちらへ」


後ろをついて行くと、階段を降りて地下の方へ進み始めた。建物自体がデカイのに更に地下があるんだな。

地下に降りてその中の部屋の1つに入ると、小さいコンテナハウスみたいな物が並んでいる。


「今ご紹介できるのは、これで全部になります」


「少し見させてもらっていいですか?」


「どうぞご確認ください」


1つ1つエレノアと一緒に確認していく。まあテント代わりだからな。そこまで凝ったものじゃなくていい。結局、ガッチリした作りの4、5人が寝そべることができる物に決めた。


「これ買いたいんですが、いくらになりますか?」


「こちらは大銀貨2枚になります」


「これに決めました」


面倒だが一度受付に戻ってキューブで払うことにした。キューブの数少ない支払いができる場所だ、商業ギルドは。まあキューブの支払いはオマケみたいなものだからな。



商業ギルドを出たあとは宿屋に戻った。他に必要そうなものはアイテムボックスに入ってるもので十分だしな。食事についても追加で10食分宿屋にお願いして作ってもらった。ロマナで作ってもらったのが14食あるので十分だろう。


明日への準備が落ち着いて、エレノアと食堂で夕食を食べている。ロマナでは宿泊している客は冒険者ばかりだったが、この宿屋では商人など比較的裕福な客が多そうだ。


そんな周りの様子を伺っている時に、近くで話されている内容が耳に付いた。


「とうとうロレーヌ王国が陥落したらしいな。次はどこを狙うつもりだ?」


「ガライヤ帝国の狙いは更に北方の小国群だろう。サマリア王国はマイルス王国、リーガルト王国と同盟を結んでいるから、簡単には攻められないからな」


「ロレーヌ王国も小国ながら善戦していたんだがな」


なんだか物騒な話題だな。もしかして近くで戦争でもしていたのか?

少し声を小さくしながらエレノアに聞いた。


「近くで戦争でもしていたのか?」


「私が奴隷になる前に、サマリア王国の西に位置するガライヤ帝国がその北方に位置するロレーヌ王国に攻め込んだという話はありました。今の話ですとロレーヌ王国が攻め滅ぼされたようですね」


戦争は勘弁してほしいな。俺は冒険者活動を楽しみたいんだ。できれば俺が生きている間は周りの国は仲良くしてほしい。



風呂に入りながら、この生活も今日までかと残念に思う。次は王都もしくはダンジョン都市に着いてからだな。でも、ダンジョン都市での生活は長くなるから、こんな高い宿屋は無理だな。どうするかは着いてから考えよう。


さて明日から移動だから、さっさとステータスを確認するか。



ステータス

================


名前  エレノア

種族  人間

年齢  20


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.01 )

    槌術☆0 ( 0.05 ) △0.05

    盾術☆0 ( 0.09 ) △0.04


 身体 体力強化☆0 ( 0.09 ) △0.05

    頑健強化☆0 ( 0.11 ) △0.05

    筋力強化☆0 ( 0.07 ) △0.04

    器用強化☆0 ( 0.05 ) △0.03

    敏捷強化☆0 ( 0.07 ) △0.04

    魔力強化☆0 ( 0.11 ) △0.06


 特殊 料理★2 ( 0.17 )

    調合☆0 ( 0.00 )

    良否判定☆0 ( 0.03 ) △0.02

    真偽判定☆0 ( 0.03 ) △0.02

    気配希薄☆0 ( 0.00 )

    解体☆0 ( 0.20 ) △0.10

    魔法威力☆0 ( 0.00 )

    魔力回復速度向上☆0 ( 0.05 ) △0.05


魔法  生活魔法☆0 ( 0.12 ) △0.06

    時空魔法☆0 ( 0.06 ) △0.02


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)


================



やっぱりエレノアにはメイスのほうが当たりだったかもしれない。熟練度の伸びがいい。このまま成長できれば、普通に連れ歩いても大丈夫そうだな。


「言わなかったけど、良否判定と真偽判定も鍛えてくれてたんだな」


「はい。他のスキルと違い動く必要もないので、できる時にやっておりました」


「明日からは王都への移動だけど、できる範囲で鍛錬を続けてくれ」


「シオン様に心配をお掛けしないで済むように頑張ります」


エレノアには言う必要はなかったか。手抜きなんて考えそうにないからな。



ステータス

================


名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )

    剣術★1 ( 0.79 ) △0.01

    大剣術★1 ( 0.12 ) △0.02

    盾術☆0 ( 0.27 ) △0.01


 身体 体力強化★1 ( 0.55 ) △0.03

    頑健強化☆0 ( 0.79 )

    筋力強化★2 ( 0.05 ) △0.04

    器用強化★1 ( 0.20 ) △0.01

    敏捷強化★1 ( 0.61 ) △0.02

    魔力強化☆0 ( 0.00 )


 特殊 気配感知★2 ( 0.11 ) △0.02

    気配希薄☆0 ( 0.61 ) △0.01

    解体★2 ( 0.00 )

    並列思考★1 ( 0.30 ) △0.01

    魔法威力☆0 ( 0.05 ) △0.02

    命中精度☆0 ( 0.14 ) △0.05

    遠見☆0 ( 0.05 ) △0.01


魔法  生活魔法★2 ( 0.48 ) △0.02

    土魔法★1 ( 0.11 ) △0.02

    水魔法★1 ( 0.09 ) △0.02

    火魔法★1 ( 0.09 ) △0.02

    風魔法★1 ( 0.10 ) △0.02

    氷魔法☆0 ( 0.09 ) △0.02

    回復魔法☆0 ( 0.54 ) △0.04

    時空魔法★1 ( 0.34 ) △0.02


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


================



鍛錬分は上がってるかな。そして魔力強化は上がらない。正直予想はしてたから、ショックではないが。そもそも魔力強化は鍛える意味があるのか不明だ。放置でいいだろう。


明日からは馬車での旅になるが、護衛がいるし本当に暇になりそうだ。移動中に何か鍛錬ができるといいのだが。

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