第3話 エレノア


奴隷商館から出て今日泊まる予定の宿屋に向かっている。レオナルドさんにリサーチして選んだ宿屋だ。


「エレノア、まず今日泊まる宿屋にいく。今後についてや、今日の予定なんかを話してから買い物に出るつもりだ」


「はい、分かりました」


エレノアは少し後ろからついてきている。これも奴隷として主人の後ろを歩くという考えなのか、それとも素でそんな風に慣れているのか。分からないな。



目的地は西門近くにある大きな宿屋だ。日頃はクリーンで清潔に保っているが、それでも風呂に入りたいと思うのは日本人の性なのか。レオナルドさんに相談すると、当然安い宿屋には風呂なんかないと言われた。そこで教えてもらったのが、豊穣と繁栄亭だ。高すぎることはないと言われたが店構えを見ると豪華だ。


「いらっしゃいませ。2名様ご宿泊でしょうか?」


中に入ると男の店員が用件を聞いてきた。


「はい、2人で3日間お願いします」


「ありがとうございます。お名前をお伺いしてもいいでしょうか」


「シオンとエレノアです」


「3日間で大銀貨6枚となります。」


まあ許容範囲内か。お金を払うと部屋まで案内してくれた。

さすがにロマナの宿屋とは値段が違うだけあるな。広いし、風呂トイレ付だ。まあ風呂は見たところ少し広いだけの普通の風呂だが。


「エレノア、そっちのベッドに座って話を聞いてくれ」


「はい」


俺はもう片方のベッドに座ってから、何から話すか考える。


「俺はこれからダンジョン都市ルクルスで生活することを考えている。その生活のサポートをエレノアにしてもらいたい。それと合わせて、今後も冒険者パーティメンバーの奴隷を増やしていく予定なので、それの取り纏め役を頼む」


「分かりました。でも私は戦闘の方ではお役に立てないので、そちらは新たに戦闘のできる奴隷を購入されて役割を任せたほうが良いのではないでしょうか?」


「まあ、別にエレノアに戦闘指揮させるとかではないから、そこは安心してくれ。ただ、俺と一緒に行動してもらうからには何か防御できる手段を考えていこうとは思っている」


「はい、私でできることは頑張ります」


「それとエレノアにはどんどん意見を言ってほしい。奴隷という立場で難しいことを頼んでいるが、俺は冒険者活動というか戦闘というか一辺倒になってしまうことが多い。なのでエレノアが思ったことがある場合は迷わず進言してくれ」


「はい、努力してみます」


エレノアは少し悩んだようだが頷いて言ってくれた。


「また何かあったらその都度話していくが、とりあえず今日の予定を決めよう。さっきも言ったがエレノアにはサポートを任せる関係上、マジックバッグを買って渡すから、当面の服と必需品を買って収納してくれ。後、金を渡すので必要と思われる物は買ってほしい」


「本当によろしいのですか?」


戸惑ったように聞いてきた。


「ああ。但し俺は冒険者だからあんまり贅沢すぎるものは無理だがな」


「はい、それは心得ておりますけど、1つよろしいでしょうか」


俺は黙って頷いた。


「あんまり奴隷に手放しで与えすぎるのは増長の要因となります。それは控えたほうがよろしいかと思います」


本当にエレノアってカッコいいな。姿勢?容姿?高潔さ?どこがとは分からないが商館で会った時から惹きつけられる。


「分かった。だが、正直何が必要か分からないのでよろしく頼む」


「分かりました」


まだまだ話す内容がありそうだが、最低限の話は終わったので買い物に出ることにした。俺が買い物先に挙げたのは魔道具屋と服屋で、エレノアは薬屋と雑貨屋だった。宿屋の店員にそれぞれの場所の地図を簡単に書いてもらってから、出かけることにした。



魔道具屋ではエレノア用のマジックバッグを購入した。大荷物を入れる必要はないので、俺が持っているマジックバッグの半分程度の容量のウェストポーチに似た、邪魔になりにくい物を選んだ。それでも狭いワンルームぐらいは収納できると思うので個人の荷物を入れるには十分だろう。


その後、服屋に入った。これに先だって、エレノアには遠慮して安い物を選ばないことを言い聞かせておいた。

ついでに俺の分も見繕ってもらうことにした。自分の分は適当にしか選んでなかったし、この際だ。

エレノアは本人の分も俺の分も、その都度確認に来ていたが何とか選び終わった。まあちょっと買いすぎたがいいだろう。エレノアが普段着5着と冒険者用3着、俺が普段着2着と冒険者用3着だ。

ここまでの買い物で小金貨5枚大銀貨5枚の消費だ。金が無くなっていくのは早い。。。


次に向かったのは薬屋だ。ここからはエレノアが必要と言った物を買っていくのだが。


「薬屋って何を買う予定なんだ」


「はい、避妊薬を買います」


ああ、まあ当然か。奴隷商館ってもちろん主人に対する奉仕についても教えるよな。別に俺は「奉仕なんて必要ない、そんな目的で買ったんじゃない」なんて青臭いことを言うような年ではないしな。表記上は16歳だが。

もちろんエレノアには多めに買ってもらった。

ふと思って、エレノアは基礎化粧品とか買わなくていいのか聞いてみたが、これも遠慮してそうだったので、俺のために綺麗な状態を維持するのは大事なことだからと理由を付けて、率先して買ってもらうようにした。


最後に寄った雑貨屋では、日用品の他、今後に備えて食器類なども購入した。本当はその他武器や防具などの冒険者で使うものも選びたかったのだが、それはちょっと考えがあって止めている。



買い物が終わって宿屋に戻ってきてからは部屋でゆっくりしている。

夕食までの間、この世界の奴隷についてエレノアから教えてもらうことにした。というのも、この世界で見た奴隷は日本で話にあがるような物以下の扱いみたいなことはないからだ。


「もちろん主人に尽くすことは当然ですが、人間性が疑われるような扱いをされるわけではありません。契約結晶は創造神様がお作りになられたと言われており、それによって刻印された契約紋は常に神様からの審判を受けていると思われています」


「主人に奉仕することは嫌なことじゃないのか?」


「奴隷になるものはその辺りは覚悟していると思います。もし覚悟できていない場合は、いつまでも売れ残り、もっと悲惨な状況になる可能性もあります」


色々あるんだと思うが、エレノアが気持ちを整理できているのならば、特に聞くことはないな。

ただ、エレノアには奴隷だからという無意味に遠慮するようなことはするな、と何度も言っておいた。じゃないと色々遠慮しそうだ。



夕食が食べられる時間になったので、2人で階下に降りて食べることにした。

食事自体はロマナで食べたものとそんなに違いはない。量はこちらが少ないか。食料は輸送費の分だけ領都のほうが高そうだ。領都の近郊でも食料生産はされているんだろうが、普通に地方から輸送されてそうだな。



部屋に戻ってからは風呂に入ることにしたので、エレノアが準備してくれている。湯はどうやら魔道具が設置されており、簡単に注ぐことができた。


「シオン様、お風呂の準備が出来ましたので、どうぞこちらへ」


服をわざわざ脱がせてくれそうだったが、不要なので断って自分で脱いだ。別に貴族プレイとかしたい訳ではないし、服ぐらいは自分で脱げる。


中ではエレノアが体を洗ってくれて気持ち良い気分を味わえた。その後湯舟に浸かりながら、エレノアが自分の体を洗っているのを見させて貰っている。最初俺の世話だけで待機してそうだったので、今後も風呂に入る時は一緒に、と約束させた。


エレノアを背中から抱きしめて湯舟に浸かりながら、1つ考えていたことがある。俺は自分のステータスを見れるが、こうして接触した相手のステータスは見れないのか?

もちろん試して見る。ステータス。



ステータス

================


名前  エレノア

種族  人間

年齢  20


スキル

 戦闘 


 身体 


 特殊 料理★2 ( 0.17 )


魔法  


加護  


================



よし。やっぱり接触で他人のステータスも見れるのか。ただ、こんな近距離で出しているのに反応がないということはエレノアには見えてないのか。もうちょっと確かめたいこともあるんだが、そろそろ俺が我慢の限界なので風呂から上がることにする。


風呂から上がってから、天井に浮かせているライトを心持ち光度を下げる。そしてベッドに入ってからゆっくり待っていると、裸のままのエレノアがベッドへと近づいてきた。まさに均整の取れたプロポーションと俺は思う。好みは人によって違うから万人がそうとは言えないだろうが。


「シオン様、失礼致します」


エレノアはベッドの中に入ってきて、俺の体を優しく触りながら唇を重ねてきた。

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