第2章 寄り道も旅の醍醐味です
第1話 移動中も鍛錬
晴天で空が高い中、少し早歩きでサルビナに向かっている。
思えばロマナにいた間も長雨というものは一度もお目にかかったことはなかったな。雨が降り出しても、ある程度時間が経てば止んでいた。一応雨の時や野外宿泊に備えてローブをアイテムボックスに入れてあるが、使う機会がまったくない状況だった。
ロマナの西門から出た当初は馬車も多く通っていたが、既に全ての馬車は遥か先を進んで見えなくなっている。初めてじっくり馬車を見たが、正直言って進むスピードは遅い。あれでサルビナまで2日ぐらいか。たぶん走れば追い抜くのは確実だな。
そろそろいいか。アイテムボックスから背負いバッグを取り出して背中に担ぐと、徐に走り出した。背負いバッグには適当に集めた大きな石を詰め込んである。なんだかやってることはマンガの中の修行内容だな。大剣と石と合わせて結構な重さになっているはずだ。
やっぱりただ走るのは勿体ないよな。後は魔法と併用して走る鍛錬にするか。とりあえずクイックを掛けて、火ボールと水ボールを浮かべながら走れるか試してみる。鍛錬時に2つ同時に発動できることは確認済みだ。これも並列思考のおかげだろう。
もし周りから見られていたら、なんだコイツは? と不審がられる様相で走っていると、道を少し外れた辺りに森が見え始めた。方向さえ合っていれば途中で大きな川に出るはずなので、ここからは一旦、火ボールと水ボールは消して、クイックと気配感知で森の中を進むことにした。気配感知は、ロマナを出る少し前に★2に上がっている。感知範囲が更に広がったのは当然として、害意というのだろうか、こちらを敵視する感情も見えるようになった。どの程度の害意までが見えるのかはまだ確認中だが、便利な機能になってきている。
森の中を3時間走り続けて少し開けたところに出たと思ったら、ロマナとサルビナの間に流れる大きな川だった。道を走るのと違って障害物の木を避けつつ、クイックの速さに慣れる必要もあったために、かなり北寄りに出たようだ。近くに橋は見えない。
それにしても森の中は平和だった。ロマナとサルビナの間ということもあってこれが普通なのかもしれない。ロマナ近郊の森は少し入っただけでもゴブリンの遭遇率が高かったから、あれを想定していると呆気なく感じる。何故ロマナ近郊がそんなに魔物の発生が多いのかというのは、明確な答えは出てないみたいだが、魔力溜まりが発生しやすい地域だからではないかと言われている。似たような地域が他にもあるようだ。
同じ魔物でもダンジョン内の魔物は違う。普通の魔物は解体して魔石を取り出さないといけないが、ダンジョン内の魔物を倒すと、魔石やドロップアイテムを残して消滅するそうだ。これを聞くとダンジョンが疑似生命である魔物を生み出している可能性が高くなる。ドロップアイテムなんかは人寄せパンダみたいなものなのか? まあ、そこは考えても答えの出ない話だ。ともかく解体が必要ないというのも冒険者に人気の理由の1つだろう。
暫く川沿いを南下していると、気配感知に2体の反応が出てきた。初めて感じる気配だ。結構でかいな。姿が見える位置まで慎重に進みながら、感知を確認する。まだ気付かれてもいないし、動きもないようだ。
50mぐらい歩いたところで姿が見えた。すごく大きいイノシシか? たぶん小さいダンプカーと言ってもいいだろう。森の中から出てきて水はガブガブ飲んでいる。あれも狩れば食肉として売れるかな?
ここから魔法の遠距離攻撃で倒せるか試してみる。肉を傷めないように土魔法でピンポイントに頭を狙うとするか。
2発の弾丸に似せた石に魔力を込めていく。イノシシ自体はデカイので命中させ易いのかもしれないが、この距離だ。イノシシの頭に狙いを定めて、貫通させるように威力が上がるイメージで撃ち出した。
シュンという音で撃ち出された石は、パン、パンっと音を立ててイノシシ2体の頭を吹き飛ばした。
思ったより威力が出たな。完全に頭を吹き飛ばしている。やり過ぎな感じがしないではないが、とりあえず吊り台を出して解体していく。大型の動物もモウモウで結構慣れたので、あまり時間は掛からなかった。モウモウに感謝だな。そして解体が終わったところでピコンっと音が鳴った。これは解体が上がったかな。
解体が終わったイノシシはアイテムボックスに入れていく。今マジックバッグのほうはモウモウで満載になっている。レオナルドさんから教えてもらったので、ロマナを出る準備としてモウモウを狩ってマジックバッグに詰め込んでいる。たぶん200体は入ってるはずだ。
それから更に南下していくこと30分ほど、特に問題なく道と橋が見えてきた。ここからは道を進まないとサルビナとは全然別の場所に着く可能性がある。
しかし、その前に昼食を食べてなかったので河原に座って食べることにした。これはロマナを離れることを決めた後に、宿屋に20食分作って貰った。食器は自分で買ってきたが。最後に我儘を聞いてもらって本当に感謝だ。
昼も食べたし、どうしようか迷ったが、目立たない風魔法を使いながら走ることにした。
さすがに走って移動してる人は皆無で、時々反対側からすれ違う馬車に警戒されたりして御者や冒険者と思われる人に、無害だとアピールするのが面倒だった。
そんな感じで鍛錬しながら走ること4時間。もう周囲は薄暗く、町の灯りが見えてきた。
当然と言えば当然なんだが門は既に閉じられており、仕方ないので邪魔にならない端っこに寄って今日は休むことにした。
アイテムボックスから食事とローブを出して、生活魔法のクリーンで今日の汚れを落としてから座ってステータスを表示する。
ん? 新しいスキルがリストに出てきている。
◎取得可能スキルリスト
魔法威力
命中精度
遠見
たぶんイノシシを倒した時だな。有難く取得させてもらう。
ステータス
================
名前 シオン
種族 人間
年齢 16
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )
剣術★1 ( 0.76 ) △0.01
大剣術★1 ( 0.08 ) △0.02
盾術☆0 ( 0.25 )
身体 体力強化★1 ( 0.49 ) △0.03
頑健強化☆0 ( 0.79 )
筋力強化★1 ( 0.96 ) △0.02
器用強化★1 ( 0.18 ) △0.02
敏捷強化★1 ( 0.57 ) △0.04
特殊 気配感知★2 ( 0.07 ) △0.04
気配希薄☆0 ( 0.59 ) △0.01
解体★2 ( 0.00 ) △0.03
並列思考★1 ( 0.28 ) △0.05
魔法威力☆0 ( 0.02 ) △0.02
命中精度☆0 ( 0.04 ) △0.04
遠見☆0 ( 0.03 ) △0.03
魔法 生活魔法★2 ( 0.44 ) △0.01
土魔法★1 ( 0.09 ) △0.02
水魔法★1 ( 0.07 ) △0.03
火魔法★1 ( 0.07 ) △0.03
風魔法★1 ( 0.08 ) △0.03
氷魔法☆0 ( 0.05 )
回復魔法☆0 ( 0.46 )
時空魔法★1 ( 0.30 ) △0.04
加護 転移ランダム特典 金一封
転移特典 言語理解
転生ランダム特典 生体掌握網
転生特典 成長促進
================
ルクルスに向かってる間は鍛錬分しか上がらないか。今日はたまたまイノシシが出たからスキルを覚えたりもしたが、その都度いい狩場があればいいんだが。
明日は色々見て回らないと行けないし、さっさと寝るとしよう。
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