第18話 上位種?
使い慣れないグレートソードでいきなり実戦って、どこが≪命大事に≫の精神だ?っと突っ込みたくなる気持ちもあるが、新しい武器を早く試したいと思ってしまうのは、俺の中でいまだにゲーム気分が抜け切れていない証拠だろう。中にはそんな武器コレクターもいるのかもしれないが。
当面は雑な戦い方になる気がする。今の熟練度ではこの大きな武器を細かく扱う能力はないだろう。
さて行くとするか。
気配感知には50m先ぐらいに5体の集団のゴブリンが捉えられている。ゆっくり気配を殺しつつ近づいていく。もう少しというところで騒ぎ出した。どうやら気付かれたようだ。
勢いよくゴブリンの群れているところに走り出す。近くにいた3体が棍棒を振り上げて襲い掛かろうとしていたが、気にしないで剣で薙ぎ払った。2体は斬られて吹っ飛んでいき、それに巻き込まれて1体も飛ばされていった。残り2体も慌てて突っ込んできたが、上段からの斬り下ろしで2体とも倒れた。目の端に、吹っ飛ばされた1体が起き上がったのを見て、駆け寄り剣で突き刺して殺した。
相手がゴブリンというのもあるが、率直に今の戦闘の感想は?と問われると力任せ・・・ いや大型武器はある意味そうなのかもしれないが、俺の場合は技術が足りていないんだろう。改めて使ってみたところ細かい動きはまだ無理だ。それに森の中だと大きな武器を振り回すのは、周囲をよく確認しないと自滅の可能性もある。
この日は、それから30体のゴブリンを倒したところで森を出ることにした。倒すことに苦労はしていない。まだまだ力任せになるのも仕方ないとは思っている。納得はしていないが。
北門から出て、次のモウモウ狩りでもこの大剣で試してみる。
モウモウを発見すると来るのを待たず、こちらから走って近づいた。そして威嚇して突進してくるのにタイミングを合わせて、剣で斬り倒した。
まさに力対力という感じだろうか。大型武器にするとモウモウもこんなに難易度が下がるのか。大型武器に振り回されない力があればだが。
◇ ◇ ◇
大剣を使い始めて4日経った頃、相変わらず力任せにゴブリンを倒しながら森の中を探索していた。
ここまで28体のゴブリンを倒しており、もう少し倒したら今日は終ることにしている。気配感知にはこの先に10体の集団を捉えていた。10体であれば倒す予定ではいたんだが・・・
その集団の中に1体気になる反応がある。明らかに他の個体より反応が大きい。これが多分上位種というヤツだろうか?
無茶や無謀はしない。≪命大事に≫を心掛ける。それはよく理解している。でも冒険者をしている限り100%の安全なんてない。今回のパターンはまだ分の悪い賭けではないはずだ。
頭の中で対策を考える。2パターン考えられる。上位種を先に倒すか。周りから先に倒すか。上位種次第ではあるが、先に周りを掃除したいところだ。まあ上位種が大したことなさそうなら上位種からでもいいが。
もう一つ懸念があるとして、周りのゴブリンは俺がこれまで相手してきたゴブリンだろうか? ようするに飛び道具がないかどうかだ。
この辺り注意しながらいってみようか。
なるべく全容の確認をしたいこともあって慎重に進んでいく。感知ではもう少しで確認できるとこまで来たが気付かれたみたいだ。
「ギャギャ!!」
ゴブリンに警戒の声を上げられた。立ち上がって全体の確認を急いだ。
奥の方に弓らしき物を持ってる個体が2体いる。まず弓持ちを始末することにした。
「ギャギャ、ギャギャ、ギャ」
何か上位種が叫んでいるが、優先は弓持ちだ。最短距離で近寄ろうとしたが、4体が前方に塞がり邪魔をしてきた。排除しようと構えたときに、弓から矢が放たれるのが見えた。思い切り左に避けて回避した後、弓からの死角になるように木の後ろへと隠れた。
落ち着け。まずは感知でそれぞれの位置の把握を忘れずに。
上位種と弓持ちは移動していない。位置を意識しながら、残り7体を排除することにした。
速攻で木から出て、固まっている4体を剣で薙ぎ払った。結果は確認せずに真っ直ぐ進んで木に隠れる。上位種がギャギャ、ギャギャ言ってるが、それに合わせて前後合わせて5体が挟み撃ちにしてくるみたいだ。ということはさっきので2体死んだか。
普通のゴブリンが襲ってくる分には特に怖くない。挟み撃ちされる気もないので、前方の3体に近寄り薙ぎ払った。弓持ちが矢を放ってきたが、意識していたので更に前方に進んで避けた。
避けた後すぐに振り返り、後ろに迫ってきていた2体のゴブリンを斬り殺した。
これで上位種と弓持ち2体だけのはず。弓持ちに近づこうとすると、上位種が前に立ち塞がった。
この上位種、普通のゴブリンに比べると一回り以上大きい。身長が160cmぐらいあるんじゃないだろうか。そして武器は剣だ。まあ錆びた剣だが。
上位種が斬りかかってきたが、弓持ちの死角になるように後ろに避けた。さすがに仲間の背中越しには矢を放つことはないだろう。今度はこちらが剣で斬り飛ばした。上位種は受けることができずに吹っ飛んでひっくり返った。
それを見てすぐに弓持ちに狙いを変えた。弓の狙いが定まらないように、大きく横から回り込むように弓持ちに近づいた。2体は狙いを付けることができないまま矢を放つが大きく外れていく。俺は落ち着いて2体を斬り殺した。
上位種が起き上がってきた時には他のゴブリンは全て死んだ後だ。それを見て怒ったのか、それとも無視されたことを怒ったのか、剣を振り上げて突っ込んできた。それを見て今度は渾身の力で剣を上位種に振り下ろした。
「シオンさん、1つだけ通常のゴブリンより魔力が多い魔石がありましたが、心当たりありますか?」
討伐と納品の報告をするとフェリスさんから魔石のことで聞かれた。まあ上位種だろうな。
「10体の集団の中に1体だけ体格が一回り以上違うゴブリンが混ざっていました。それのことでしょうか?」
「そうですね。たぶんゴブリンリーダーと呼ばれる上位種ではないでしょうか。新人冒険者にはきついと思うんですが、シオンさんには要らない心配でしたね。でもそれ以上の上位種になってくると強さが桁違いになってくるのでお気を付けください」
「わかりました」
まあ実際、ゴブリンリーダーより弓持ちのほうが厄介だったしな。
「ゴブリン討伐とモウモウの納品確認終わりました。シオンさん、お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
最近は狩りが終るのが早いので宿屋に戻ってもほとんど客がいない状態だ。ゆっくりとテーブルに座って夕食を食べることができる。
「シオンさん、今日もモウモウのお肉ありがとう。でも無理はしないでくださいね」
俺以外に客がいないこともあってリーネも少し暇そうで、俺の夕食に付き合って話してくれている。
「リーネが言った通り、俺は優秀な冒険者なんで平気だ。だから安心してくれ」
「分かってますよ、シオンさん」
自分が言った言葉を思い出したのか、少し笑いながら言った。
「私の友達にも冒険者になった子たちがいるんですけど、まだ町の外の狩りは大変らしいんですよ。実家で生活している分、無理はしてないみたいですけど」
そうか。町の子は自分の家から冒険者ギルドに通えるからな。でも、ほとんどは家業継ぐ子が多そうだけど。
「ちなみにその友達って何歳で冒険者になったんだ?」
「15歳ですよ」
友達15歳ね。15歳ルーキーだとまだ狩りができないレベルなのか。俺は16歳でバリバリ狩りしてるんだが。なんとかセーフか? 身体も中身も16歳離れしてることは理解してるが。
「俺も一応初心者だから無理をするつもりはないからな」
「はい、信用してます」
ステータスの年齢を見ながら思ったが、この16歳って設定どこから来てるんだろうか。中身が中身だけに詐欺レベルだと思える。気にしても仕方ないが。
ステータス
================
名前 シオン
種族 人間
年齢 16
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )
剣術★1 ( 0.59 ) △0.02
大剣術☆0 ( 0.26 ) △0.05
盾術☆0 ( 0.25 )
身体 体力強化★1 ( 0.30 ) △0.02
頑健強化☆0 ( 0.77 )
筋力強化★1 ( 0.50 ) △0.04
器用強化☆0 ( 0.92 ) △0.03
敏捷強化★1 ( 0.21 ) △0.03
特殊 気配感知★1 ( 0.54 ) △0.05
気配希薄☆0 ( 0.30 ) △0.03
解体★1 ( 0.49 ) △0.03
並列思考☆0 ( 0.80 ) △0.04
魔法 生活魔法★2 ( 0.14 ) △0.02
土魔法☆0 ( 0.74 ) △0.02
水魔法☆0 ( 0.74 ) △0.02
火魔法☆0 ( 0.74 ) △0.02
風魔法☆0 ( 0.74 ) △0.02
回復魔法☆0 ( 0.32 ) △0.01
時空魔法☆0 ( 0.99 ) △0.04
加護 転移ランダム特典 金一封
転移特典 言語理解
転生ランダム特典 生体掌握網
転生特典 成長促進
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★1が近いスキルがいくつかある。★1に上がると効果が大きいから期待できる。今の生活が安定しているのはスキルのおかげというのもあって、ゲーム要素として以外でもステータスを見るのは楽しくなる。
今日の依頼の報酬で、収支がプラスに転じたのだ。最初に【金一封】のおかげで大金貨10枚小金貨10枚で開始した生活だが、生活費、必需品諸々で減っていた。まあ、それで資産が逼迫していたのかというと全然そんなことはない。ただ心情としては、今後も必要なものは出てくるだろうし貯金を増やしていきたいと常々思っていた中での、収支プラスだったので予想外に嬉しかった。
もしかして俺は守銭奴だったとかではないよな?
そういうこともあって、今日はステータスを見ていて一際感慨に耽っていた。
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