第16話 昇級速度


北門から出てモウモウ狩りに来ている。

解体がもう少しで★1になるので上げるためと、筋力強化★1の効果を確かめるためだ。力を試すにはゴブリンよりもモウモウが適している。これまではモウモウの突進を避けることに重点をおいて倒していた。今回の筋力強化★1でどの程度対抗できるのか試してみたい。


モウモウを探しながら、少し思ったことがある。モウモウってルーキーのソロに勧めるような獲物じゃないよな? たぶん今まではパーティで狩ることを前提に勧めていたんだと思うが。単体での難易度で言えば、明らかにゴブリンより格上だ。ゴブリンよりやり易いのは群れていないということだけだ。



しばらく歩くと目の前に1体のモウモウが見えてきた。

近寄ってきたのが見えたのか、少し警戒して食べるのを止めて頭を上げた。更に近寄っていくと威嚇するように角をこちらに向けてきた。

剣を構えて近寄っていく。今回は小細工しない。

尚も近寄るのに業を煮やしたのか、モウモウが後ろ足を蹴って突進してきた。目の前に近づく迫力の姿に無心で集中する。まさに体当たり寸前というところで渾身の力を込めて剣を叩き付けた。ドンっという音とともに頭を叩き割られたモウモウは、そのまま勢いを殺せずに体が吹き飛んで倒れた。真正面にいた俺は、力を失った体を避け切れずに吹き飛ばされた。まさか倒した後に危険が待っているとは・・・


「いててっ」


体を起こしモウモウを確認すると、ピクリともしない感じで死んでいた。どうやら倒せているようだ。

しかし次回は倒した後のことも計算しないと怪我しそうだ。もし日本人のままで今の体当たり受けて吹っ飛んでたら、病院送りは確実だ。頑丈な体に感謝だな。



剣術★1と筋力強化★1の相乗効果は大きいみたいだ。これで他のスキルが上がったり、★2とか★3になったらどれだけ強化されるのか。


それからは倒した後にも注意を払いつつ同じようにモウモウを倒していき、気付いた時にはマジックバッグの中に35体も収められていた。



これはさすがに多すぎるか?

解体を始めるときに数を確認して、全部処理できるのか不安になった。まあ、終らなかったらマジックバッグに残しておいてもいいのだが。

最初の頃に比べると慣れてきた作業もモウモウの解体となると大変だ。1体1体血抜きをして、内臓を取り出し、綺麗に洗ってから仕舞う。そんな作業をしているとピコンと頭に聞こえた。これは解体が★1に上がったのだろうと予想がついたが、そのまま作業を続ける。

それからの作業は明らかに早くなった。考えなくても手が動くみたいな迷いが無くなった。終るかどうか分からなかった作業は、まったく心配なく終了した。



◇ ◇ ◇



翌日からはまたゴブリン狩りとモウモウ狩りの平行作業でいくことにした。鍛錬と金策というのは前からの目的だったが、今は7等級を目指すというのも加わった。別にすぐにダンジョン都市に行くという訳ではないが、いざと言う時に等級が足りませんでは意味がないので早めに入場資格は確保したいところだ。



気配感知の範囲が広がってからの探索は順調だ。前まではかなり近づかないと見つけることができなかったのが、遠い先から判明するのだから。


近くに3体のゴブリンらしき反応がある。

気配を殺すように音をたてないように慎重に移動する。3体の姿が確認できるまで近づけたので、そこから一気にゴブリンに駆け寄る。

いきなり現れた姿に慌てているのか行動できないでいるうちに2体を斬り捨てた。残り1体は遅まきながら殴り掛かってきたが、避けながら剣を胸に突き刺した。


その後も気配感知で発見する度に、なるべく先制攻撃できるように行動した。10体以上の集団というのはまだ遭遇したことがないが、一応10体以下の場合に限って討伐することにしている。



今日の狩りを終えてゴブリン討伐とモウモウ納品の報告にきたついでに昇級について聞いてみた。


「昇級についてはあまり詳しいことをお話できないのですが、シオンさんに一般的な昇級速度の話をしても違うと思います。一般的な冒険者は、これはほとんどパーティ所属になるんですけど、8等級に上がるには6か月近く掛かっています」


「そんなに掛かるものなんですね」


一般とされる冒険者の昇級の遅さに少し驚いた。


「これはシオンさんの依頼の達成度が高いということが関係しております。例えば5等級以上の冒険者でシオンさんと同等の仕事ができる人は当然いますが、冒険者になったばかりの新人にそれができる人はおりません」


「俺と同じぐらいの経験の冒険者はどんな依頼をしてるんですか?」


「町の中の依頼がメインじゃないでしょうか。それかパーティを組んでの平原ウサギの納品ですね」


そんなに稼げないのか。それは昇級に時間かかるな。


「なのでシオンさんに一般的な昇級速度を説明するのは難しいのですが、この調子ならそんなに期間が掛からずに7等級に上がれる可能性があります」


「ありがとうございます。参考になりました」


「いえ、サポートするのは私達の仕事ですので」




部屋に戻ってから先程のフェリスさんの話を考えた。

新人冒険者だと、当然狩りで稼ぐ力がないから町の中の依頼で生活費を稼ぐしかないのだろう。そして時々パーティで狩りをすると。強くなるにも金を貯めるにも時間がかかる。

その点、俺はこの特注みたいな体と、各特典のおかげで順調に生活できているのか。この点は感謝しないといけないんだろうな。この世界に送り込んでくれたのが神様だとしたら。まあ別に神様に会ったこともないから実感ないけど。


さて、そんなことより今日の成果だ。ステータスと表示してみるとスキルが追加されていた。



◎取得可能スキルリスト

 気配希薄



これはゴブリン討伐の時、なるべく気配を消そうと行動していたのが幸いしたのか。もちろん有効にする。



ステータス

================


名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.55 ) △0.01

    剣術★1 ( 0.26 ) △0.03


 身体 体力強化★1 ( 0.13 ) △0.02

    頑健強化☆0 ( 0.66 ) △0.01

    筋力強化★1 ( 0.07 ) △0.03

    器用強化☆0 ( 0.71 ) △0.03

    敏捷強化☆0 ( 0.84 ) △0.03


 特殊 気配感知★1 ( 0.07 ) △0.04

    気配希薄☆0 ( 0.03 ) △0.03

    解体★1 ( 0.06 ) △0.04

    並列思考☆0 ( 0.44 ) △0.03


魔法  生活魔法★1 ( 0.85 ) △0.04

    土魔法☆0 ( 0.48 ) △0.02

    水魔法☆0 ( 0.48 ) △0.02

    火魔法☆0 ( 0.48 ) △0.02

    風魔法☆0 ( 0.48 ) △0.02

    回復魔法☆0 ( 0.23 ) △0.01

    時空魔法☆0 ( 0.47 ) △0.04


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


================

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