第15話 ゴブリン三昧


今日も東門から出て森に向けて歩いている。

少し前には2組のパーティが歩いていたが、片方は道を逸れて平原の中を進んでいった。こちらのパーティはまだ10代前半のメンバーみたいなので、狙いは平原ウサギかもしれない。

もう一方のパーティは真っ直ぐ森に進んでいる。当然森の探索が目的だろう。

レオナルドさんも勧めていたが、パーティを組んでの探索が安全なのは良く分かる。普通は子供の時に一緒に過ごした仲間でパーティを組むパターンが多そうだ。

俺にはそれは無理だからな。


前を進むパーティを見ながら色々考えて歩いていたが、俺は進路を北に変えてから森の中に入ることにした。




棍棒で殴り掛かってくる2体のゴブリンの攻撃を躱してから、1体ずつ斬って倒した後、奥に残っていた1体に走り寄り斬り捨てた。


これで13体目。

ゴブリンを探すのには少し時間が掛かるが、だいたい複数で行動していることが多く、討伐にはそれほど苦労することはなかった。ただ、遭遇する数は多い。この深き森には色々な魔物の巣が多いだろうとは言われていた。それ故に補助金を出すぐらい魔物討伐が奨励されているし、領兵による討伐隊も定期的に組まれているらしい。それでもこの遭遇頻度なのか・・・




「そこは領主様も分かっていて、補助金をしっかり出してくれているからな」


モウモウの納品に解体場に来たときにルイスさんに魔物の遭遇の多さについて聞いた。


「大規模な討伐とかは計画されないんですか?」


「表層とかの巣の討伐はやってるぞ。ただ、中層とか深層になると、下手に大規模な討伐をして魔物の分布が変わったりして、もっと厄介な魔物が出てくると困るからな」


なるほど。そういう考えもあるのか。確かに下手に突いて強い魔物が出てきても藪蛇だな。


「悪いことばかりじゃないぞ? シオン達冒険者は、そのおかげで稼げてるからな。この町は冒険者の拠点には最適な町の1つだ。まあ、ダンジョン都市ルクルスには負けるがな」


ダンジョン都市?? 


「ルイスさん、ダンジョン都市って何ですか?」


「なんだ、知らないのか。北のほうにルクルスという町があってだな。その町の周辺に3つのダンジョンが固まっているんだ。普通ダンジョンがこんなに固まってることが珍しいんだがな。ダンジョンから産出されるアイテムによって栄えた町だ。それでダンジョン都市と呼ばれてる」


これは良い情報が聞けた。ダンジョン都市か。いずれ訪れてみたいな。


「凄い興味を引かれる町ですね」


少し興奮して気持ちを言うと、ルイスさんは笑いながら言った。


「はっはっは。そりゃそうだろうな。冒険者なら一度は行ってみたい町の1つだからな。でも残念だな。シオンでもすぐには無理だろうな、ダンジョンは」


「えっ。何か条件があるんですか?」


「冒険者ギルドが管理しているダンジョンは、入場が7等級以上に決められてるからな。ある程度経験がある冒険者しか入れないぞ」


そんな制限があるのか。正直等級なんて恩恵ないし興味が薄かったけど、こんな落とし穴があるとは。


「そうですか。もう少し依頼頑張らないとですね」


「そんなガッカリするな。依頼を受け続ければ等級なんて上がるものだからな。それとこれには例外があってな。パーティで入る場合、メンバーに7等級が居れば入れるぞ」


ここでもパーティか。でもダンジョンに入るためにパーティを暫定で組むのも違うしな。


ルイスさんから有益な情報を貰った後、今日の報告を終えて宿屋に戻った。

ゴブリンとモウモウの連戦にも慣れてきて、ゴブリン25体、モウモウ11体のまずまずの報酬だった。



宿の食堂で夕食を食べながら周りを見てみると、やはり何人かのパーティらしき集まりばっかりだな。


「ソロで冒険者してるのってやっぱり少ないのか?」


宿で多くの冒険者を見てきたリーネに聞いてみた。


「そうですね。うちは若い冒険者の人が多いのもあるけど、ほとんどパーティを組んでるみたいですね。やっぱりパーティで戦うのが安全ですから」


すぐにパーティに入りたいとかではないんだが、周りの状況がパーティ組め~と追い込んでくる気がしている。ゲームでもあったよな。パーティ組まないと狩りできませんみたいな感じが。


「でも、シオンさんはすごいですよね。ソロで依頼しているのに、パーティを上回る成果出してますから」


「他の冒険者はあんまり稼げてないのか?」


「少なくとも冒険者になって1年経っていないような人は、パーティでもシオンさんみたいに何体もモウモウ狩れないですよ」


「そうなのか。知らなかった」


ルーキーの冒険者はそんなに稼げないのか。それでルイスさんは俺が金を持ってるって思ったわけか。俺の場合、最初戦闘スキルが無くても狩れていたのは、何気に高い身体能力のおかげだろう。



◇ ◇ ◇



近づいてきた1体のゴブリンを斬り捨てた後、囲まれないように右回りに大きく避けた。

最初は4体の集団のゴブリンだった。元々8体の集団だったのか、それとも近くに4体がいたのがリンクしたのか。戦闘が始まったら、8体に囲まれそうになっていた。


背後に回り込まれないように、右回りに近いゴブリンに近づく。


ガツッ


その時、遠くにいた4体の方から石が投げられ額に当たった。倒れるような衝撃はなかったが痛い。額からツ~と血が流れてきた。急いで一旦離れながら、手の甲で血を拭った。手前の4体に意識が集中しすぎて、離れているからと奥の4体に全然注意を向けていなかった。


石はそんなに持ってなかったのか、その後投げられることはなかった。一応用心しながら、手前の3体に相対する。3体は同時に殴り掛かってきたので右側に避けつつ、1体を斬りつけ、その返しで隣のゴブリンも斬り捨てる。その勢いのまま、残りの1体の胸に剣を突き刺してから、足で体を蹴って剣を抜いた。

奥の4体もこっちに飛び掛かってきていたが、もちろん待ったりはしない。駆け寄り外側のゴブリンから斬り殺していった。



「ふ~~」


あんな攻撃もしてくるんだな。まあ武器が棍棒だけなんて決まってないし、弓とか魔法じゃなくて石で助かったのかもな。

回復魔法で額の傷を治しながら今の戦闘を思い返していた。額の傷は4回ほど掛けると綺麗に消えた。

今のところ、普通のゴブリンとしか遭遇してないから、思考が単調になっていたかもしれない。もしかしたら弓を持っていたり、魔法を使ってきたりする可能性もある。もう少しよく観察しないとダメだな。



続けてゴブリンを探そうと気配感知に意識を集中したときに、頭にピコンと音がした。すると、気配感知の範囲が一気に広がった。これまでが10m前後しかなかった範囲が50m以上に広がっている。100mはないと思うが、70mぐらいはありそうだ。

ステータスを確認したいところだがまだ森の中だ。宿屋に帰ってから確認することにした。



「シオンさんには本当に驚かされます。魔物討伐を始められた初日こそ1体でしたが、その後の5日間は全て20体以上で、今日などは35体もありました」


フェリスさんには珍しく少し興奮気味に話しかけられた。


「それと今回の納品で8等級への昇格となります。おめでとうございます」


「ありがとうございます」


ダンジョンの入場条件を聞いた後だけに昇格は嬉しい。


「本日の報酬はキューブへ記録致しました。併せて情報の更新も行っております」


「分かりました。それではまた明日お願いします」


「お疲れ様でした」




部屋に戻り早速ステータスを表示する。



ステータス

================


名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.53 ) △0.01

    剣術★1 ( 0.21 ) △0.03


 身体 体力強化★1 ( 0.09 ) △0.02

    頑健強化☆0 ( 0.63 ) △0.03

    筋力強化★1 ( 0.01 ) △0.02

    器用強化☆0 ( 0.65 ) △0.03

    敏捷強化☆0 ( 0.78 ) △0.03


 特殊 気配感知★1 ( 0.01 ) △0.06

    解体☆0 ( 0.98 ) △0.03

    並列思考☆0 ( 0.40 ) △0.03


魔法  生活魔法★1 ( 0.77 ) △0.04

    土魔法☆0 ( 0.44 ) △0.02

    水魔法☆0 ( 0.44 ) △0.02

    火魔法☆0 ( 0.44 ) △0.02

    風魔法☆0 ( 0.44 ) △0.02

    回復魔法☆0 ( 0.21 ) △0.04

    時空魔法☆0 ( 0.39 ) △0.04


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


================



気配感知は範囲が広がっていたので★1になったのは分かっていたが、筋力強化まで★1になっていた。感知範囲が広がって、楽しくなってゴブリンを狩っていたが、気分だけの問題じゃなく筋力も上がっていたからスムーズに狩れたんだな。


気配感知が★1になってからの探索はかなり効率よくなった。これまでは近づかないとゴブリンに気付けなかったのが、広い範囲を把握できるようになって、ゴブリンの発見が容易になった。

明日はどれくらい狩れるようになるんだろうか。今後に期待しながら眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る