第14話 森の中へ向けて


たった1体の討伐ではあるが、初のゴブリン退治を終えて冒険者ギルドへ報告するために戻ってきた。一応倒したのがゴブリンだったのかの確認の意味もある。


「フェリスさん、ゴブリン討伐の報告にきました。たった1体ですけどね」


「いえ、問題ありません。それに今回初めての魔物討伐の報告ですよね。シオンさんが優秀な新人であるのは、これまでの実績で十分分かっております」


そう手放しで褒められると少し気恥ずかしく感じる。さっさと先に進めよう。


「すみません、確認をお願いします」


魔石を渡しながらお願いした。

フェリスさんは魔石を、手に持った装置で測定しているようだ。


「はい、間違いありません。ゴブリン討伐を確認致しました。報酬はキューブの方へ記録しておきます」


「その装置で魔石の鑑定をしているんですか?」


「はい。これで討伐した魔物の名前が分かるわけではないのですが、内包した魔力を調べて凡その見当をつけているんです」


なるほど。そうやって判断してるんだな。


報告は終わったが、今回の依頼で問題になった点を相談してみよう。


「少し聞きたいことがあるんですが大丈夫ですか?」


「はい。相談事ですか?」


今回ゴブリン討伐依頼で森に行ったときに難題だと感じた森内部の探索について尋ねた。


「森の中での探索については、ほとんどの方が苦労されております。中には能力で全然苦にされない方もおりますが、それは例外ですね。冒険者の方が森の探索で使用されているのは2つの魔道具になります。方位魔器と双間方位魔器と呼ばれる物になります。方位魔器は世界の魔力分布から大まかな方角を示すことができます。双間方位魔器は2つの魔道具により、双方で位置を発信することでお互いの方角を示すことができます。方位魔器が比較的安価なのに対して、双間方位魔器は時空属性の魔法陣を使っている関係で高価になります」


やっぱり便利道具があるんだな。これも例の男爵が考案したものだろうか。



◇ ◇ ◇



昨日訪れた辺りから森の探索を始めた。

対策として双間方位魔器を購入した。双間方位魔器は小金貨2枚もしたが、正確な方角が把握できるのが決め手となった。



迷う心配が無くなったので、気配感知に集中している。しかし現状の気配感知の熟練度では範囲が狭い。もう少し熟練度を上げて感知範囲が広がらないと効果が少ない。


たぶん気付いたのは同時だろうか。前方からゴブリン2体が近づいてきた。

2体とも棍棒を振り上げながら、こちらに突っ込んでくる。昨日の訓練とは違う。待つ必要もないので前を走ってきたゴブリンの棍棒を避けてから、剣で斬り捨てた。もう1体も棍棒で殴り掛かってきたが後ろに下がって躱した後、前に踏み込んで斬り捨てた。やはり剣術の熟練度が上がって戦いやすい。


一旦ゴブリン2体はマジックバッグに収納してから、探索を再開した。

先程の状況から分かる通り、気配感知では先にゴブリンを発見するのは難しい。とはいえ、鍛錬の意味もあるので全力で感知を使うことに変わりはない。


森の奥の方には進まず、北方面に進みだして30分ほど。前方に3体のゴブリンを見つけた。向こうも、こちらの音で気付いただろうか、2体が近づいてきた。


「ギャギャ~~!!」


残りの1体は動かずに何か叫んでいる。なんだ?と思ったが、もう目の前には2体が接近しているので、こちらに意識を集中する。

落ち着いて見ればゴブリンの動きは決して速くない。攻撃を横に避けながら斬り捨てることが可能だ。1体、2体と無難に倒したところで、残りの1体が何を叫んでいたのか理由が分かった。増援の4体が姿を現した。


全部で5体か。どうする? 木を背にして戦うか? だめだ。背後を取られないというメリットがあるが、動きが制限されてしまう。ここは囲まれないように意識しながら1体ずつ確実に倒そう。


頭の中で方針を確認しながら、先手必勝。もっとも近いゴブリンに向かって駆け剣で斬りつけた。斬りつけられたゴブリンは棍棒で防ごうとしたが、勢いを止めることはできず吹き飛んでいった。その間に近づいてきた2体の攻撃を、後ろに下がって避けてから左側の1体を捉えて斬り捨てた。


残り4体。2体は俺の前方で警戒しながら伺っている。残り2体は右方面へと回り込もうと動いていた。回り込まれるのを待つことはない。即座に前方の左側に斬り込んでいった。剣は躱されることもなく斬り裂いた。右側にいたゴブリンが少し遅れて棍棒で殴ってきたが、左側に大きく回避した。


回り込もうとしていた2体は無駄だと分かったのか、真っ直ぐに突っ込んできた。それを見て木の背後へと回って、一瞬の死角を利用して素早く側面から攻撃した。2体ともこちらの連続の攻撃には対処できず斬り捨てることができた。


最後の1体は、自分以外が全滅したことに慌てて逃げ出そうとしたのか、俺の目の前で後ろを向いて走りだそうとしたので、背後から迫り斬り捨てた。


増援を呼ばれたときには一瞬焦ったが、複数の敵相手にも落ち着いて対処できたから乗り切れた。


その後2回ほどゴブリンに遭遇して、無事倒し終わったところで開けた場所に移動して魔石の回収作業に移った。一度魔石の回収をしたので、迷わず短時間で回収できる。今日は合計で15個が成果だ。



◇ ◇ ◇



「フェリスさん。ゴブリン討伐とモウモウの納品の報告お願いします」


「シオンさん、ゴブリン討伐と平行してモウモウの納品も続けられるんですね。ギルドとしては大変助かりますが」


魔物討伐の制限が解除されて、当面そっちに絞ろうかとも思ったのだが、宿屋に1体納品する約束をしたばかりで、すぐに止めますというのも言いづらい。それに解体の熟練度を上げるにはやはりモウモウが効率的だと思った。


「はい。当面は両方の依頼をしていくつもりです」


「分かりました。ゴブリン討伐とモウモウの納品の確認が取れました。お支払いはキューブへ記録しておきます」




ベッドに横になりながら今日の成果の確認をする。



ステータス

================


名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.49 ) △0.01

    剣術★1 ( 0.09 ) △0.03


 身体 体力強化★1 ( 0.01 ) △0.02

    頑健強化☆0 ( 0.57 ) △0.02

    筋力強化☆0 ( 0.93 ) △0.03

    器用強化☆0 ( 0.52 ) △0.02

    敏捷強化☆0 ( 0.66 ) △0.03


 特殊 気配感知☆0 ( 0.79 ) △0.05

    解体☆0 ( 0.86 ) △0.03

    並列思考☆0 ( 0.28 ) △0.03


魔法  生活魔法★1 ( 0.61 ) △0.03

    土魔法☆0 ( 0.36 ) △0.02

    水魔法☆0 ( 0.36 ) △0.02

    火魔法☆0 ( 0.36 ) △0.02

    風魔法☆0 ( 0.36 ) △0.02

    回復魔法☆0 ( 0.17 ) △0.01

    時空魔法☆0 ( 0.23 ) △0.04


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


================



朝の鍛錬のときに体力強化が★1になった。ただ元々この体、身体機能面では優れており、あんまり恩恵が感じられない。素の体力がかなりあるからな。たぶんギリギリの戦闘などで真価を発揮するのだろう。

気配感知の伸びもいいから、今後の探索で役立てるようになるのもすぐかもしれない。

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