第13話 次のステップへ


朝の鍛錬を終え、モウモウ狩りのために北門を出て平原を進んでいる。


今日から始めた時空魔法の鍛錬については、進捗があったと言えばあった。だが当然の如く、低い熟練度ではほとんど効果がなかった。

その中でも俗に言うアイテムボックスが一番熟練度上げには良さそうだ。というのもアイテムボックスを使って収納していると熟練度が上がっていく。これは☆0だからかもしれない。

このアイテムボックス、実際のところでは使い道が少ない。なんせ巾着袋ぐらいしか入らなかった。そのため財布代わりに使って熟練度上げしている。

使い方についてはほとんどマジックバッグと一緒だった。これは俺がマジックバッグを連想して魔法を使ってるからか、もしくはマジックバッグを考えた人が、アイテムボックスをイメージして作り出したからだろう。



モウモウ狩りは基本これまでと同じように狩っている。

避けたり、体当たりをいなしたりと少し慣れてきた感じはする。と言っても、動きが遅れたりすると角が掠って何度か怪我をした。怪我については回復魔法のいい熟練度上げになっている。


回復魔法は、まだ☆0ということもあるんだろうが、効きが悪い。1回で少しずつ傷が薄くなっていくが、完治までには数回掛けないといけない。教会で骨折を治した時のように、1回で完治とはいかない。

前から思っていたが、何回も魔法を使っても魔力切れみたいなことが起こりそうにないのは、俺の魔力量はかなり多いのか。最初は生活魔法だから消費量が少ないかと思っていたが、属性魔法も回復魔法も多く使っても魔力切れを起こす気配がない。ある意味これも一種の特典みたいだ。


「ブモ~!」


両前足を斬られたモウモウはほとんど動けなくなり、後ろ足で蹴っているが前足が動かないので徒労に終わっている。そんなモウモウの首に容赦なく剣を振り下ろした。

このトドメを刺すのはいつまでも慣れない。いずれ何も感じなくなるのだろうか。何を甘っちょろいことをと思わなくもないが理屈じゃないからな、こればっかりは。


今ので7体目となるモウモウを、一旦マジックバッグに収納する。

解体にどれくらい時間を取られるか分からないので、今日の狩りはこれで終了し解体作業に移る。


少し開けた場所まで移動した後、少し大き目に穴を掘って、そこに吊り台を設置した。1体1体解体していく。

前回の難しさはなんだったのか、と思ってしまうぐらいにやり易い。吊っているのでヘンな姿勢で作業しなくていいし、重さを感じなくていいのが楽だ。ほんとにルイスさんには感謝だ。

これなら明日からはもう少し多く狩っても大丈夫そうだ。


全ての解体が終わってから宿屋に移動した。早い分にはいつでもいいと言われているので、冒険者ギルドの前に納品することにした。


中にはイスに座って休憩しているリーネがいたので声を掛けた。


「モウモウ持ってきたぞ」


「シオンさん、ありがとう。お父さん呼んできますね」


リーネが奥へと行き、30代ぐらいの男を連れてきた。たぶん父親だろう。


「娘が無理を言ってすみません」


「いえ、何体も狩っているので問題ないです」


「そうだよ。シオンさん、優秀な冒険者だから余裕なんだよ」


優秀と言われるほど優秀ではないと思うが。ルーキーみたいなものだし。ただリーネの気持ちは嬉しい。


「ははっ、分かってるよ。リーネ。シオンさん、ありがとうございます。肉はまとまって仕入れできると助かります」


「どこに持っていきましょうか?」


「では、こちらへお願いします」


奥のテーブルに1体下ろしてからお暇した。冒険者ギルドに納品するより少し高く、小銀貨3枚と大銅貨5枚で買ってもらえた。



「ルイスさん。気になったんですが、マジックバッグで多く納品できるようになったのはいいですが、どんどん狩ってくると値崩れ起こしたりしないですか?」


残りの6体を冒険者ギルドに納品していて、ふと思ったことを聞いてみた。


「シオン、この町全体で何人いると思ってるんだ。お前が30や40狩ってきたところで問題にならねーよ。それにこの町だけで消費されるわけじゃないからな。ヘンな心配しなくていいから、どんどん狩ってこい」


まあ、そうだよな。輸送手段もあるし困ることないからな。


「無理をしない程度で頑張ります」


「ああ、それは大事だ」


納品の査定をしてもらったので、受付に報告をして帰ろう。

通路を通って受付に向かってる途中で、レオナルドさんの姿を見かけた。

専属冒険者は、俺の時みたいな指導だったり、依頼の消化だったり、結構色々やることが多いらしくて忙しいとは聞いていた。


「レオナルドさん、こんにちは」


「お、シオンか。冒険者生活は順調か?」


「ほどほどに頑張ってますよ」


「順調そうだな」


レオナルドさんは笑ってそう言った。


「今は主に何をやってるんだ?」


特に隠す必要もないので、現状について話した。


「ルーキーのくせにモウモウをソロで狩ってるのか」


少し驚いたように言った。

少し考えてから聞いてきた。


「パーティを組むことは考えてないのか? 仲間がいると狩りもより安全になるし、ソロでは受けられない依頼とかも挑戦できるしな」


「パーティについては考えないこともないですが、今のとこはソロでやれてますし。将来はパーティ組むかもしれないですね」


ソロでは限界も見えている。いずれパーティを組む必要がでてくるだろうことは薄っすらと考えていた。今は必要ないが。


「そうだな。色々考えるといいだろう」


ギルド専属ということは、冒険者を無駄に消耗しないような活動とかもしてるのかもしれない。指導だってその一環だろうしな。

レオナルドさんに挨拶してから、受付へと向かった。



◇ ◇ ◇



ルイスさんから値崩れの心配がないことを聞いてからは、解体する時間は除いてだが、時間いっぱいにモウモウを狩りまくった。初めてモウモウを狩ったときの苦労は何だったのかと思うぐらいに順調に狩っていき、1日で20体を狩って納品した。


そんな狩りを4日続けていると、頭にピコンと鳴った気がした。この音には聞き覚えがあるのでステータスを確認する。



ステータス

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名前  シオン

種族  人間

年齢  16


スキル

 戦闘 短剣術☆0 ( 0.47 ) △0.01

    剣術★1 ( 0.02 ) △0.03


 身体 体力強化☆0 ( 0.97 ) △0.02

    頑健強化☆0 ( 0.52 ) △0.03

    筋力強化☆0 ( 0.87 ) △0.05

    器用強化☆0 ( 0.47 ) △0.03

    敏捷強化☆0 ( 0.59 ) △0.04


 特殊 気配感知☆0 ( 0.70 ) △0.03

    解体☆0 ( 0.79 ) △0.06

    並列思考☆0 ( 0.24 ) △0.01


魔法  生活魔法★1 ( 0.55 ) △0.03

    土魔法☆0 ( 0.32 ) △0.02

    水魔法☆0 ( 0.32 ) △0.02

    火魔法☆0 ( 0.32 ) △0.02

    風魔法☆0 ( 0.32 ) △0.02

    回復魔法☆0 ( 0.13 ) △0.03

    時空魔法☆0 ( 0.16 ) △0.03


加護  転移ランダム特典 金一封

    転移特典     言語理解

    転生ランダム特典 生体掌握網

    転生特典     成長促進  


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予想通り、剣術が★1になっていた。

試しに剣を振ってみる。

ビシュっと風を切るように振られた剣が、ピタっと構えたところに静止した。少し自分の振りに感動しながら余韻に浸った。

これまでとは明らかに違う。これまでは本当に初心者が剣に振られている感が節々に感じられた。それでも地道に頑張って鍛錬してきた。



それからの狩りは、剣を確かめる意味もあって、張り切りすぎたかもしれない。

☆0の段階では、斬ると言っても剣の重さで何とかなってる感じで、鈍器でもいいんじゃないか?みたいな残念さがあった。しかし、今はスパっと斬っているという感じになった。

と言っても★1なので、まだスタートに立ったレベルなのだろう。



本日分25体の納品報告を行いながら、フェリスさんに戦闘スキルの確認をお願いした。


「狩りをしてるときに剣がスムーズに振れた感じがしたので、もしかしたら剣術を覚えたかもしれません」


「えっ。シオンさん、冒険者を始められて一月経ってませんよね? もう戦闘スキルを獲得されたのですか??」


「そんな感じがしたので確認したいと思ったんです。それに毎日鍛錬も続けてますから」


「分かりました。鑑定料で大銅貨1枚が必要となります」


お金を払い、前回も使った水晶球で鑑定してもらった。


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【戦闘スキル】  剣術★1


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「本当ですね。剣術スキルを獲得されています。おめでとうございます」


「ありがとうございます」


フェリスさんは驚きながらも祝福してくれた。

そういえばこの水晶球、戦闘スキル専用なのかな? 生活魔法は表示されてないな。


「この水晶球って戦闘スキル専用なんですか?」


「はい。この水晶球は教会から貸し出されているもので、機能が制限されております。教会にあるものは、もっと広い範囲でスキルが表示されますね」


なるほど。この水晶球、キューブとかに比べて少し異色な気がしていたけど教会からの貸し出しなのか。


「シオンさん、戦闘スキルの確認ができましたので、魔物討伐依頼の制限を解除致します。キューブの情報も更新致しますね」


「はい。もし俺が魔物討伐依頼を受けるとしたら、何かオススメはありますか?」


「そうですね。やはりゴブリン討伐からでしょうか。もちろん魔物なので危険であることは確かですが、比較的弱い部類の魔物となります」


「討伐証明は何になるんでしょうか?」


「討伐証明は魔石となります。ゴブリンは魔石以外には回収が必要なものがありません。魔石を提出して頂ければ、報酬の小銀貨1枚と大銅貨5枚をお支払い致します。ちなみに、ゴブリンは常時討伐依頼となっておりますので、届け出て頂かなくても問題ありません」


魔石の回収だけでいいのか。死体はどうすればいいんだろうか。


「魔石の回収した後の死体って放置でいいんですか?」


「森の中であれば放置でもかまいませんが、それ以外だと燃やすか埋めるかをお願い致します。なぜ森だけ?と思われるかもしれませんが、死体専門で処理するスライム類が活動しております。生命活動している存在には無害なんです」


定番のスライムがいるらしい。でもこの世界のスライムは無害なのか。


「それにしても報酬が高い気がするのは気のせいですかね」


「実は魔石の代金以外にご領主様から補助金が出ているんです。ゴブリンの他にもいるんですが、繁殖力の高い魔物に関しては、補助金を出してでも討伐を勧めないと大変なことになりますから」


「なるほど。当然討伐資格の無い者が狩っても、あんまり意味がないことになるわけですね」


「はい、その通りです」


ゴブリン狩りについて、フェリスさんに色々聞くことができた。

明日からはゴブリン討伐に挑戦していこう。

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