第11話 モウモウ狩り(1)
「シオンさん、今日で宿泊10日になりましたが、明日からはどうしますか?」
朝食後にリーネから言われて気付いた。
もうロマナに来て10日経ったんだな。色々慌ただしい日常だったな。
問題もないし、延長しよう。
「また10日延長しようと思うんだが、大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
大銀貨2枚払って延長する。
ギルドにより荷車を借りてから平原へと到着した。
ルイスさんから5日は荷車を貸してもいいと言われたので、その間にできるだけ稼ごうと思う。
3体の平原ウサギに襲われながら、周囲の状況と気配感知に思考を割いて、どう動くか最適解を探している。
これまでは、集団の獲物は狙わずに1体だけで行動しているのに絞って狩っていた。しかし1体だけとなると探すのに時間が掛かるし、何よりいつまでも複数の相手を避けていては鍛錬にならないと思って、余程多くなければ避けないことにした。
とにかく早く数を減らすことに集中する。同じ方向から攻めてくる場合は避けやすいので、仕留めることも難しくない。しかし、違う方向から攻められると避け切れないで、攻撃を喰らうことも多々あった。
今回は時間差で正面から襲ってくるようだ。1、2体目は避けることに集中する。狙いは3体目。1、2体目が突っ込んでくるのに合わせて、横に躱す。3体目がこちらに突っ込んできたのを見て短剣で喉を斬り裂く。
2体の位置を確認する。真後ろから突っ込んできたのに振り向き、カウンターを狙う。たぶん斬り裂けたと思うが、確認する間もなく、左側から襲ってきた。余裕はないので大きく前進して避ける。確認すると今斬った平原ウサギは仕留めていたようだ。残りの1体はすぐに反転してきたが、突っ込んでくるのを待ち構えて対処した。
「ルイスさん、平原ウサギ16体お願いします」
満載になった荷車を押してギルドに納品にきた。まだ時間があるので、もう少し狩る予定にしている。
「今日は持ってくるの早いな」
「これまでは1体狙いで狩ってたんですが、複数のも狙い始めたんですよ」
「なるほどな。まあ問題ないだろう。平原ウサギなんかは初心者は普通に苦戦するもんだが、それでも酷くて打撲だろうし、余程ヤバイときは逃げれるしな。縄張り意識が強いから追いかけてもこないからな」
最初のときはそれのおかげで逃げきれたしな。
「今日はこれで終わりか?」
「いえ、戻って時間まで狩りますよ」
「おう、稼げ稼げ」
結局この日は10体ほど追加することができた。
◇ ◇ ◇
その後3日間は時間の限り狩りをすることで、1日で28体まで納品することができるようになった。そんな納品の日々を過ごしていると、フェリスさんから昇級の話があった。
「シオンさん、おめでとうございます。今回の依頼達成で9等級に昇級となります」
「そうですか。早いのか遅いのかよく分からないですが」
「十分早いと思います。多くの納品をされていますので査定に反映されています」
9等級になったメリットがないから、今一歩喜びがないな。だがいい機会かもしれない。平原ウサギばかり狩っていたので、そろそろ別の獲物を狩りたいと思っていた。
「相談なんですが、平原ウサギの次に狙うとしたら何がいいですか?」
「そうですね。シオンさんはまだ魔物討伐の依頼は制限がかかっていますので、それ以外となるとやっぱりモウモウでしょうか」
「モウモウですか。どんな相手でしょうか?」
「体高が 180cmぐらいありまして大型の四足歩行の動物になります。お肉が人気がありまして、こちらは重量で買取価格は変動しますが、1体だいたい小銀貨3枚ぐらいとなります」
「ありがとうございます。試してみますね」
「シオンさん。モウモウは魔物ではありませんが大型なため危険な動物です。くれぐれもご注意ください」
今の話だと結構強そうだな。
解体のこともあるし、ルイスさんに少し話でも聞いてみることにした。
「次はモウモウを狩るのか。倒せれば結構儲かるぞ。ただな・・・」
「何か問題があるんですか?」
「大きいからな、解体は大変は大変だぞ。解体のやり方は変わらないが、枝肉にまで切り分けないと運べないな」
「解体は時間掛かりそうですね」
「それと解体はそれでいいが、倒すのは平原ウサギとは比較にならないぐらい危険だな。ヤバイと思ったら速攻逃げろよ」
「足とか速そうじゃないですか? 逃げる方法あるんですか?」
「そうだな。一番簡単な方法は大きい布切れを用意しておいて、ダメそうな時は何とか頭にかぶせて、逃げるといいぞ」
「単純そうな方法ですね・・・」
「魔物じゃないからな。こんな単純な方法で逃げられるんだ」
布切れは持ってるから、最悪はそれで逃げるか。
「じゃあ明日からはモウモウ狩るんですね。結構大怪我する冒険者さんいるので気を付けてくださいね」
明日の話を少ししたら、リーネが心配そうに言った。それだけ大怪我する冒険者がいるってことか。
「危険だと思ったらすぐ逃げるさ」
「ほんとですよ? もし怪我した時はすぐに教会に行って治療してもらってください。少し高いですけど」
「教会って治療してくれるんだな」
「はい。回復魔法を使える人がいますよ」
ポーションを買うことも検討していたが、最初は様子見で何かあったら教会に行くか。回復魔法を取得できるかもしれないし。かといってわざと怪我をする気はない。ゲームではないんだから。
部屋に戻って今日の成果を確認する。
ステータス
================
名前 シオン
種族 人間
年齢 16
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.41 ) △0.03
剣術☆0 ( 0.85 ) △0.02
身体 体力強化☆0 ( 0.85 ) △0.02
頑健強化☆0 ( 0.31 ) △0.04
筋力強化☆0 ( 0.62 ) △0.02
器用強化☆0 ( 0.31 ) △0.03
敏捷強化☆0 ( 0.37 ) △0.03
特殊 気配感知☆0 ( 0.51 ) △0.05
解体☆0 ( 0.51 ) △0.04
並列思考☆0 ( 0.18 ) △0.03
魔法 生活魔法★1 ( 0.38 ) △0.03
土魔法☆0 ( 0.20 ) △0.04
水魔法☆0 ( 0.20 ) △0.04
火魔法☆0 ( 0.20 ) △0.04
風魔法☆0 ( 0.20 ) △0.04
加護 転移ランダム特典 金一封
転移特典 言語理解
転生ランダム特典 生体掌握網
転生特典 成長促進
================
次に★1になるとしたら剣術と体力強化だな。最近は鍛錬は別としても、狩りでは短剣を使っていたから剣術の伸びが悪かった。明日からのモウモウ狩りでは剣を使っていく予定だ。剣術を★1にできれば狩りも捗るんじゃないかと期待している。
◇ ◇ ◇
今日はモウモウ狩りをするということで北門側に出てきている。
平原でモウモウを探そうと少し歩いたが、すぐに見つかった。平原ウサギと違って大きい。これでは、気配感知は意味が薄いが、感知しながらの戦闘も鍛錬になるので続けることにした。
体高が俺と同じぐらいの高さだ。体重は500kg以上ありそうだな。
確かにあれに無防備に体当たりされると大怪我しそうだ。
さて、狩り方だが。
ほぼ単独で行動してるみたいだから、そのまま攻撃しても良さそうだが、念のためにもっと引き離してから戦うことにする。
土魔法で作り出した石を2、3個準備してから、モウモウに近づいて行く。
30mぐらいまで近寄ってから石を投げつけた。
「ブ、ブモ~!?」
1回目でモウモウの尻に当たって驚いたのか、草を食べていた頭を持ち上げて叫んだ。
再度分からせるように石を投げた。
「ブモーーー!!」
モウモウは苛立ったのか、後ろ脚を地面に蹴りつけて荒ぶっている。それを見て急いで離れるように走った。気配感知を確認しながら走っていると、すぐに気配が近づいてきていた。
後ろを振り向き剣を構える。
モウモウはこちらを吹き飛ばす勢いで突っ込んできていて、これを正面から抑え込むのは無謀なので、大きく横に躱す。すぐに後を追って、モウモウが振り向こうとしてるところを、首を狙って剣を振り下ろした。
ガチンという音をたてて、角で剣を防がれた。
剣で押し込もうと力を入れるが、逆に押されて靴がズルズルと地面を滑る。抑え込むのは無理なので、剣で角を弾いて、その勢いで距離を取る。体当たりをしてきたのを横に避けて後ろの位置につく。
今がチャンスと思い、モウモウの後ろ側から首を狙いにいった。後ろからくるのに気付いたのか、いきなり後ろ足を蹴り上げてきたので、必死になって転がって避けた。
今のは危なかった。あんなので蹴られたら絶対に無事では済まない。
距離を取られると突進力で簡単にやられる予想がするので、近接から剣を叩きこむことを狙う。
近くからでも体当たりを何度も仕掛けられて、なかなか力を入れて剣を叩きこむことができない。何度目かの体当たりを避けて剣を振るが、体の表面を削って地面を叩く。
踏み込みすぎてしまい、気付いたときには目の前に蹴り上げた後ろ足が見えた。とっさに左手でカバーしながら回避しようとした。左手からミシっと音がして、蹴られた反動で後ろに体が飛ばされた。
飛ばされた先で剣をつき態勢を整えながら、左手を伺う。
力が入らない左手が異常を示す痛みを訴えている。これでは剣は持てそうにない。
モウモウは関係なしに突っ込んできた。痛みを堪えながら避けるのに専念する。
避けながら隙を見て布切れを取り出す。様子を見て撤退することを考えるが、片手だと上手く被せられるか分からない。
更に何度かの突進を避けたときに、そんなに離れてない位置で方向転換しようとしたので、素早く頭に布を被せて離れた。片手で上手くできるか不安だったが、角に布が引っかかってくれた。
モウモウは急に視界が塞がれたのに慌てたのか、後ろ足で飛び跳ねて暴れまわっている。その様子を見て一目散に町の方向に走って逃げた。
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